九人橋

兼六園下から橋場に向かう道は、裁判所前で右に折れ、少し進んだところで左に折れる。この曲がり角のあたりに九人橋があった。
九人橋は、東内惣構堀にかかる橋である。東内惣構堀、これは金沢城を守る大切な堀であったが、街中のこと、その多くが暗渠となってしまっている。九人橋近くでは、かろうじて開渠が残り、少量の水の流れが見えるものの幅は狭く、城の守りを感じさせるものは全くない。九人橋に至っては、橋を感じさせるものは全くない。東内惣構堀自体は今も流れているものの、道路の下を、橋とはいえないような水路で流れ、その先は脇道で暗渠となっている。九人橋は橋としては消えてしまった、といえる。ただ、その名前はこのあたりの名前として残り、建物の名前に使われていたりする。

さて、九人橋の由来であるが、これはこの橋を10人で渡ると水面には9人の影しか映らなかったとの言い伝えによる。1人や2人、10人以外では変わったことはないという。今の水路の幅では、とても縦に10人など歩ける長さではない。せいぜい2人だろう。それにしても、ちょっと不思議な、それでいて魅力的な名前の橋である。橋の復活は無理であるが、せめてその名は残ってほしいものである。

もっとも、橋が復活しても車の交通量が圧倒的に多い橋になる。
九人橋よりも九台橋、なんていわれそうな気がする。


裁判所前から橋場に向かう道の曲がり角。このあたりに九人橋があったとおもわれる。
交通量の多い4車線道路。橋らしいものは全く見えない。


上の写真、右端あたりにあるわき道から写す。
写真左の柵の下、ここが東内惣構堀のなごりである水路。
水量は少なく、堀らしさは残っていない。
完全に道路に埋もれてしまっている。

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