兼六園、氷室跡

兼六園、言うまでもなく、金沢を代表する観光地である。観光シーズンの、特に休日ともなると多くの観光客が訪れる。一番の見どころ、徽軫灯籠付近は言うまでもなく、どこに行っても人がいる、という感じとなる。しかし、ここだけはいつ行っても人がいない。場所は南の端、小立野口から入るとすぐ右側になる。ここには小さな池がひっそりとある。最近ようやく”氷室跡”の札が立ったが、Webで見る案内図にはこの池のことはなにも書かれていない。ここは、以前は池ではなかった。ただ大きな穴があいているだけ、落ち葉が溜まっていたように思う。隣は山崎山。ここまでは観光客も来る。その陰に隠れていたこの穴、氷室跡である。
氷室、これは冬の間に雪を貯め、日陰にして夏まで貯めたそうだ。氷、将軍家にも献上されたそうである。現在、氷室は金沢の郊外、湯涌温泉に作られている。金沢、今は雪も少ないが、少し前までは雪が多かったので十分貯められたことと思う。雪、多量に貯めれば溶けにくくなる。この池位の量を貯め、藁などで断熱すれば夏まで残すことも可能だったと思う。
ではなぜ兼六園で? 当時夏の氷と言えば最高の贅沢品であったことだろう。そんな氷を口にできるのは、献上した将軍家のほかは領主位のものだろう。そのための氷を領主の庭である兼六園で、というのは自然な発想なのかもしれない。

兼六園に行かれたら、是非ここまで足を運んでほしい。江戸時代の最高の贅沢である。

写真撮影: 2009年10月

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