菰掛け


金沢長町の武家屋敷跡の土塀、冬には土壁を雪から守るため、菰が掛けられる。毎年12月1日から作業が行われる。菰掛け、なんだか土壁の防寒着みたいに見え、冬らしく感じる。

さて、土壁を雪から守る、という意味で菰掛けは有効だと思う。しかし、壁の保護、という意味では他に方法もある。たとえば城の土塀は白い漆喰となまこ壁を使っている。菰掛けは要らない。現在見られるほかの土塀でも、漆喰と板張りにしているところもある。これも菰掛けは必要ないし、行われていない。漆喰などにすると費用は掛かるけど毎年の菰掛けが要らなくなるのでそのほうが良いのでは? と思えてしまう。が、現在とは違う価値観などもあるのだと思う。漆喰となまこ壁、実際に使っていたところも多数あったそうだし、現在でも蔵に残っている。だけど、土塀に行うとそれは御城と同じになるので遠慮したのかもしてない。また、質素を重んじた結果かもしれない。手間にしても、土塀のある武家屋敷には使用人もいただろうから人手には不自由しなかったのかもしれない。
いずれにしても、現在の武家屋敷は土色の土塀になっている。白よりは温かみがあるように思えるし、菰も同じような色で、雪が降ったときにも風情を感じる。”美を重んじて”ということはないとは思うが、結果として風流である。

雪吊り同様、金沢の冬の風物詩である。

写真撮影: 2009年12月

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