武家屋敷
金沢の武家屋敷、これは長町などにまだまだ残っているのだが、それらは個人宅であり、また現在も住いとして使われているところも多い。このため非公開である。今も住んでいる個人宅なので仕方ないことだろう。
さて、長町には有名な観光地、武家屋敷跡N家があり、ここは建物と庭園が公開されている。土塀の続く町並みの一角にあることもあり、非常に人気が高い。この付近、いつも観光客でにぎわっている。建物も良く、庭もまた非常に美しい。しかし、この建物は藩政時代の武家屋敷のものではない。茶室は藩侯ゆかりのものであるが、商家から移築などしたものである。このことは入り口近くの解説に書いてあるし、パンフレットにも明記されている。そして、庭園も明治以降に整備されたものである。藩政時代から残っているのは土塀や曲水などごく一部らしい。だけど、”武家屋敷跡”に引かれてか多くの人が見学している。もちろんここにN家があったのは事実なのだから嘘ではない。茶室や庭園は見事だから見る価値は十分ある。だけど、ここを見て1200石の武士の住まいや庭がこのような立派なもの、と思われるとちょっと不都合があると思う。
では、一般に公開している藩政時代からの武家屋敷は、というと一箇所だけある。大手町にある、寺島蔵人邸である。建物は一部が残されていて、その1階部分を中心に公開されている。この建物、近年まで子孫の方が住まわれていたそうで、現在は市の管理となり一般公開されたものである。
寺島蔵人邸、N家と比べた場合、非常に質素である。庭も池がないため地味に見える。ドウダンツツジの時期は花が一斉に咲き非常に見事だそうだが、それ以外の時期は地味である。しかし、建物には武家としてのつくりが残されているのをみることができる。武家屋敷として唯一公開されている、という意味で貴重である。
しかし、残念ながら寺島蔵人邸に見学に来る人は非常に少ない。やはり、土塀の続く長町のような雰囲気のよさがないことと、茶屋街や兼六園など著名な観光地から少し離れていて、ちょっと奥まったところにあるからだろう。非常に残念である。とはいえ、近くには、大樋焼き美術館(ここも武家屋敷跡ではあるが、古い建物部分は非公開)もあるし、金沢文学館もある。茶屋街も兼六園も、金沢城も歩ける程度の距離にある。ぜひ見学をおすすめしたい。
個人的には・・・ここの座敷で庭をゆっくり眺めるのが好きである。気が向けば庭に出るのもよい。また、茶室もあるのでそこでお茶もできるようだ。無粋な私は未経験だけど・・・。
表には土塀が続いている。 | |
床の間に床柱がない。 これも武家屋敷の特徴の一つ。 |
|
庭は比較的地味な作りになっている。 だけど落ち着きがあり、ゆっくりと眺めていたくなる。 |
|
庭から建物を見る。 二階建てだけど2階は安全上の理由で非公開になっている。 |
|
こちらは茶室。 |
写真撮影: 2009年7月
金沢九十九景に戻る