マーメイドロックシアター、私が常連になったわけ(創作)


これは私の創作です。キャストさんとの雑談、常連さんとの話などで思いついたもので、決して実際の出来事ではありません。フィクションとしてお読みください。ディズニーシーのマーメイドラグーンシアターをベースにしています。 


マーメイドロックシアター、今でこそ常連になり、キャストさんや一部のアリエル役の人から覚えられている。でも、当たり前だけど初めから常連だったわけではない。最初の頃は当然、普通の観客だった。これはマーメイドロックシアターに3回目に行ったときのことである。

マーメイドロックシアター、入場時は開演までシアター前のロビーで待つのだが、この回は入ったタイミングの関係で最初に入場できる扉の前で、比較的前の方になった。最前列ではないが、2列目である。だから一番人気の中央ブロックの最前列は無理かもしれないが席は比較的自由に選べる。このとき座った席は、中央ブロックの隣のブロックの最前列である。この席、3番目4番目程度の人気であり、しばらく開いていることも多い席である。マーメイドロックシアターでの一番人気は中央ブロック。最前列はもちろん、その後ろの2~5列目から埋まることが多い。これは、最前列よりも少し後ろの方が全体が見やすいからだろう。中央ブロックの隣、最前列だからそれなりに人気はあるが一番人気ほどでもなく、比較的遅く入っても空いていたりする。
この回、もう少し奥に行こうかな、と思ったけどなんとなくここに留まった。この回、そこそこお客はいるが満席ほどではなく、私の隣は1席だけ空いているということもあって、最後まで誰も座らなかった。これはよくあること。私が避けられているわけではなく2人以上のグループが多いのからである。3人5人のグループと重なることも多いのだが・・・。
でも、今回は一人のひとが後から来たけど、なぜかこの席は見向きもしないで先に行って席を探していた。ショーが始まる前、シアターの扉が閉められたところで、膝のかばんを横の空席に・・・と思ったらなんとなく押し返されるような感覚があって躊躇われ、そのまま膝の上においたままにした。
ショーが始まる。近くに来たセバスチャンがなんとなく隣の空席を見ているような気がする。その後、アリエルが出てきてこちらを向いたときもやはり私の席の隣を見た。その次の瞬間、ふわっと腕が肩の辺りになにか押されたような感覚があり、その直後にアリエルが私の方をちらりと見て視線を戻したように感じた。
ショーが進み、アリエルが手拍子を求めてくる。最初の手拍子は等間隔ではく変則的である。慣れないととついてゆけないのだが、3回目だとなんとか、というところである。(実は上にある映像のアリエルのお姉さんたちの手を見てタイミングを合わせている・・・) 

そして、終わりが近づいたあるとき、
”上よ! 上見て!
不意に右からそんな声がした。やや低音で、それでいてかわいい感じの女性の声である。すぐ近くで囁かれたようにも思える。
だれ? そう思いはしたが上を向く。丁度アリエルが近づいてきたところで、私の上、すぐ近くで止まる。アリエルは水平であり、そのまま立つと尾びれが当たるのでは、と思えるくらい近い。アリエルは私の目を見てにっこりして手を振っている。振り返さなくては、と思ったけどとっさに手が動かない。見つめられて動かなかった、と言うのが近い。
そして、アリエルが私に向かって投げキッスをした。なぜ私に? そう思うよりも先に驚いてしまってどうしてよいのかわからない状態になってしまった。

そして、ショーが終わる。
”楽しめた? アリエルの目、素敵でしょ!”さっきの声が囁いた。
”うん・・・とっても”
返事しようとしたけどなぜか声が出なかった。
あの声は隣から・・・? だけど隣の、声のあたりには誰もいない。隣に人がいると椅子の動きを感じるものだけどそれらしいものもない。今見ても空席である。

アリエルの素敵な目と投げキッス、これほどアリエルが魅力的に見えたことはない。
ちょっと遅れて立ち、出口に向かう。
出口の、2重の扉の間で見送ってくれるキャストさん、なぜか私の隣に向かって手を振っている。はて・・・。

その次に行ったとき、なぜかキャストさん急に常連みたいに挨拶してくるようになった。
その後、隣の空席は良くあるがこのような感覚は全くない。ついでだけど、アリエルの投げキッス、これも滅多にない。それに、アリエルがあのあたりの席に投げキッスをすること・・・これもその後ほとんど見ていない。
投げキッスしてくれたアリエル(役の人)、契約が外れたのか、その後1度見ただけである。

気が付いたとき、私はマーメイドロックシアターの本当の常連になっていた。


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