テーマパークの怪談話 スター・マウンテンの同乗者(創作)

私の創作です。キャストさんとの雑談、常連さんとの話などで思いついたもので、決して実際の出来事ではありません。フィクションとしてお読みください。ディズニーランドのスペースマウンテンをベースにしています。 

私は会社帰りによるときはいつも一人である。一部アトラクションでは知り合いの常連さんがいるけど、スター・マウンテンにはいない。というより、なじみのキャストさんさえいない。とはいえ、好きなアトラクションでもあり、たまに利用している。

4月の2週目、週が開けてそれまでの春休みの混雑がうそのように静かになった。21時過ぎに見るとスター・マウンテンは列が全くない。利用したかったけど、それまで同様に混雑していたアストロブラスターにも行きたい。こちらは撃たないと腕が落ちてしまう。速めに回復させたい。ということで、水曜になってから利用した。
この日、下から見ると2階にも待っている人の列は見えない。“5分待ちは久しぶりですね”などとキャストさんに話しかけならがらムービングスロープに乗る。乗り場まで列はなかった。後ろにいた女性も“すごーい、全然並んでない!”なんて話しているのが聞こえる。

乗り場で先頭を希望する。深い意味はなく、何となくであった。先頭にはすでに並んでいる人がいるので次回に回る。1台見送って先頭で待つとき、すぐそばに立っているキャストさんから”最前列をお楽しみください”と。最前列を希望したのを見てのことだろう。アトラクションの一人利用も板についたのか、キャストさんから話しかけられることが意外と多くなった。

到着した車両に乗りこむ。2人の横並び、いつもは手前の席に座ることが多い。でも今回はなぜか押されるような感覚があって奥へ、右側の席に座った。荷物も隣の席に置くことが多いのだが、なぜか自分の前に置いた。
チェーンの巻き上げの感覚が続き、最上段へ。そして降下が始まる。スター・マウンテンは、ジェットコースターとしては急降下などの上下の動きは少なく、比較的高速でのカーブが多い。だから左右に大きく振られる。このとき、なぜか髪みたいなものが肩や首筋などにあたるような感覚があった。前に髪の長い女性がいるとバーを握っている手に髪が当たることはときどきある。でも、この感覚は何なのだろう? 不思議に思いながらも乗り場に到着。すぐに降りる。

「ポニーテール、揺れる髪がいいよね~。前の人の髪、綺麗だったね。私も伸ばしてみようかな?」
前を歩く若い女性2人組の一人の声だった。この娘、たしか私のすぐ後ろ、2列目に乗っていた。乗るときも見ていたし、降りると時のことも覚えている。色使いの良い服装で、ちょっとかわいいショートヘアの娘だったこともある。さて、私は当たり前だけどポニーテールではない。そもそも今回乗っていてお客にポニーテールの人はいない。今下りた人の中で私が一番後ろにいるのだから間違いない。
では、ポニーテールの人は? そういえば走行中何回か私の左の肩の辺りに髪が当たったあの感覚はなに? あれは誰の髪だったのだろう?

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