まるびぃ凧、まるびぃで揚げる


私の凧、MaruBeeは、円形の白い布に円や四角形の穴を開けたものである。一見、不規則に開いているように見えるこの形。これは金沢21世紀美術館のマークであり、平面図なのである。凧の名前、MaruBeeは、この金沢21世紀美術館の愛称、”まるびぃ”からつけたものである。

MaruBee、原型は5月に出来ていたのだが、風がちょっと強くなるとバランスを崩してしまう、とても気難しい凧だった。初め考えた、周辺部の骨だけで支えるのはとても無理。中央部にも骨を増やしてやや強い風にも揚がるようになったが、安定の悪さは相変わらずだった。どうしても左に曲がってしまうのだ。そして、風のわずかな強弱で、急に上がって頭を下げ、ひっくり返ってしまう。まるでイルカが水面で飛び跳ねるような動きだった。糸目調整で何とかしたい。そう思って大胆に変え、あるいは微妙に位置を調整してもだめ。最後の手段と、尻尾をつけたがそれでも少しよくなった程度で、とても揚がるような状態ではなかった。円形の凧は難しいというのも良く聞くこと。無理かも、と思いながらも、調整を続けた。
だが、糸目を1本増やしたとたん、それまでの気難しさが嘘のように安定してきた。ときどき頭を下げる癖は取り切れていないが、まあちょっと安定の悪い凧並みにはなってくれた。骨の重さと尻尾につけた吹流しの重みで、微風向きからやや強めの風を必要とする凧に変わってきたが、これは仕方ない。揚がる方がはるかに大切なのだから。

さて、安定してきたとなると、やはりMaruBee、21世紀美術館で揚げたい。
ここは金沢の中心部に近く、近くに建物や兼六園、金沢城など、風を乱すものが多い。建物の周囲には芝生があり、木々も多く、凧を揚げるには条件が悪い。だけど、糸をあまり伸ばさなければ十分揚げられるはずである。
追加した糸目の糸、これは仮のものだが、安定した今を逃すことはない。凧をそのまま車に積み、21世紀美術館に向かう。夏休みだからか、見学者は多い。ここは美術館の敷地内。ひょっとしたら止められるかも、という思いもあり、揚げるにはちょっと勇気がいる。だけど、”MaruBee”ここで揚げないでどこで揚げる? と、思い切って揚げてみる。
まずは風の様子を見、揚がりそうなのを確かめてBaruBeeを用意する。風がやや弱く、続かないが、そんな中でもMaruBee、短時間なら揚がってくれる。
美術館の前の、普通なら絶対凧を揚げないような場所での凧揚げ。見学者が多いこともあり、どうしても注目を集める。揚がっているMaruBeeを見て、これが21世紀美術館のマークと分かる人はさすがに多い。美術館から出てきた人は大抵、パンフレットを持っていて、そこに大きくマークが書かれているのだから当然だろう。そして、穴だらけであることに不思議に思う人も沢山いる。MaruBee、布よりも穴の方が大きく見えるのだから、当然だろう。理屈から言えば、穴が多くて面積が小さいけど、それ以上に軽いから揚がる、となる。理屈の上ではそうだが、実際に揚げっているのを見るとやはり不思議に思えるのだろう。自分で作っていてもそう思うのだから。揚げ始めた直後に出てきたカップル。女性が、”こんなに穴だらけなのにどうして揚がるの?”と。連れの男性、”そんなのわかるか?” まあ当然の答えだろう。
MaruBee、揚げたのは比較的短い時間だが、その割には多くの人に声を掛けられた。その中には遠くから21世紀美術館を目当てにきた女子大生も。”揚げてみたい”というので、糸を渡してた。おかげで揚がっているBaruBeeの写真を何枚か写せた。凧の正面からの写真は自分で写せるが、横から美術館を背景にしての撮影は一人では出来ない。これは非常に好都合だった。
BaruBeeを見て話しかけてくる人、21世紀美術館が好きな人が多かった。私もその一人であり、うれしく思った。こういう場所での凧揚げ、もっとやってみるのもよいのかもしれない。
帰る前に受付によって声を掛けてみた。驚いてはいたが、反応はいまひとつ。まあ仕方ないか。凧は揚がっているところを見てのものなのだから。

それにしても、館内を凧を持って歩くとものすごく人目を引く。今回は裏手の、人の少な目のところを通ったのだが、今度はやはり人の多いところを運ばないと・・・?、



正面から見ると、凧の形が良く分かる。
美術館の好きな人なら、この形が何か分かるはず?
金沢21世紀美術館前は、それほど広くはなく、木も多いので、糸はあまり伸ばせない。


凧の世界に戻る。