新潟県立歴史博物館

所在地     新潟県長岡市関原町1丁目字権現堂2247-2
TEL     0258-47-6130
入場料     500円
休館日         月曜日(祝日の場合は翌日)
交通手段    JR長岡駅からバス

縄文時代に雪、そしてお米。一見つながりの見えない3つの単語だけど、これが新潟県立歴史博物館の、展示の大きな柱である。

博物館、外から見ると1階建ての建物が2つ見える。小さくはないけれどそんなに大きくも見えない。実は1階にあるのはエントランスと企画展示室のみである。といっても、企画展示室だけで小さな博物館程度はあるので決して小さくはない。メインとなる常設展示室、そのほとんどは地下にある。建物自体が斜面にあるのでそれを生かした構造である。
エントランスから常設展示室へのエスカレータを降りると広々とした空間があり、受付から先も広く、余裕を感じる博物館である。最初の展示は新潟県のあゆみ。土器石器の時代から近代まで。この地は火焔土器が最初に発掘された場であり、その展示も多数ある。火焔土器は縄文土器の代表のような土器である。歴史を追ったよくある展示方法で、ここの展示の特徴としては、佐渡の金山と石油かと思う。佐渡の金山は、日本で一番有名な金山のひとつであるし、石油は日本では新潟など限られたところでしか採掘されていない。どちらもこの地の大きな特色を生かした展示である。
ここだけでそれなりに満足できる展示であり、通常の歴史博物館であればこの内容だけで多くを占めるのだが、新潟県立歴史博物館のフロアマップでみるとこの部分の面積はごく一部、と感じるくらい狭い。単なるエントランスに見える程度である。その残りは? というと雪とお米、そして縄文時代なのである。

まず雪に関してである。新潟は世界有数の豪雪地帯である。上越地方などの町並みの特徴に雁木がある。これは、分かりやすく言えば歩道部分に屋根をつくり、積雪時でも人が歩きやすくしたものである。この、雁木の町並みがジオラマとして再現されている。雁木は道の両側にあるが、雁木の間の道、1車線半位の幅の道の部分は雪が雁木の高さまである。これは降って積もった雪だけでなく、屋根から落とした雪もある。落として圧縮され、また踏み固められているので氷に近くなっている。この様子は雪の上に人の乗っている様子で再現されている。私も雪国育ちであり、子供の頃は結構積もったものだが、それ以上にもすごい雪に感じる。これに近い積雪はいわゆる56豪雪一度のみである。
ジオラマでは、雁木側から見ると軒先ぎりぎりのところまで雪の壁となり、上にほんのわずかに隙間がある程度である。そして、反対側の雁木に行くために雪の壁にトンネルが作られている。トンネルの高さは人の背丈ぐらい、幅は60cm位、人がひとりやっと通れる程度である。だけど、雁木同士を行き来できるので便利なトンネルだろう。雪の多さが実感できる。
ジオラマでは店の中も再現されている。電球は点いているけれど暗い。電球が暗めのこともあり、目が慣れるまではどんな商品が並んでいるか分からない。まるで夜のようだ。おそらく実際の店も降雪時は雪雲で薄暗い上に店先が雪でさえぎられているのだから同様に暗かったことと思う。冬の寒さ、暗さが実感できるようなジオラマである。気温が冷蔵庫並みであればなお実感が出来ると思うが、それは電気代のこともあるので難しいと思う。雪国育ちの私でさえ、これだけ積もると大変、と思うのだから雪のない地方の人にとっては興味深い展示だろう。
雪国関連の展示、ジオラマ以外には雪に耐える住宅、除雪関連、雪を利用した空調、食品等の貯蔵などへの応用、レジャーの展示もある。特に除雪は現代社会では重要で、ここのジオラマのように道路を雪捨て場にしてしまうと車は当然通行できなくなる。これでは不便さが大きすぎる。除雪など、現在の社会に対応した雪の展示である。

続いてお米に関する展示である。新潟県は良質米の産地として知られている。その米作りに関連する展示で、昔の手作業による米作りから現在の機械化した米作りの道具などと共に、作業の様子などのパネルがある。良い展示なのだが、私の実家が農家であることもあって、サッと流して見てしまった。ここの特徴的な展示として、湿田対策がある。信濃川の下流部では、排水の関係などで湿田が多く、かっては人力で水車を回すようにして排水していたそうで、ジオラマもある。後に海への水路も開き、乾田化が進められた。この水路が複雑で、他の河川の下をくぐるような感じで作られていたりする。なぜこんな面倒なことを? 古い河の水も新しい水路と一緒に海に流してしまえば? と思ったけどあとでよく考えれば河川には水利用のこともあるので簡単に流れを変えてしまうことは出来なかったのだろう。この水路、現在も改修され続いている。ポンプ利用による排水設備も設けられているそうだ。

ここまで興味深い展示が続いたのだが、それでも常設展示スペースの約3/5に過ぎない。残りは縄文時代の暮らしに関する展示である。
一般的な発掘品のほか、住居などの再現のジオラマもある。これは、日常の一場面を実物大、その中に入って見学できるため、縄文の村に入ったような感じである。狩猟や土器作り、石器作りなど日常生活に関連する展示もあるため、縄文が身近に感じられるような感じさえする。遺跡によくある復元住居よりもよりよく分かると思う。縄文に関する展示は他の博物館でも良く見られるのだが、ここのように広く深い展示があるとずいぶんと違う。
この地は縄文土器の代表みたいになっている”火焔土器”が最初に発見された場所に隣接している。このためにこれだけの展示を作ったのだと思うが、縄文時代の展示としては非常に分かりやすく充実した展示になっている。展示品、展示ともに充実していると思う。特に歴史を学んでいる小学校高学年以上、中学生などに見て欲しいと思った。