博物館訪問の際、事前に地図で場所を確かめることが少なくない。特に車で行くような場合は道や駐車場の確認のためにも必須である。今回も車を使うので地図を開いたところ、入江状のなった海の真ん中に印が付いていた・・・。この地図どおりとすれば、博物館は海の真ん中にあることになる。いったいどんな建物だろう? 博物館へはどうやってゆくのだろう? 行く前から楽しくなる。

さて、博物館についてみると、入り口は陸の上にあった。当たり前のようだが、どんなところだろう?と思っていただけに普通じゃないか? なんて思ってしまう。まずは入場券を買う。ここも自動販売機である。最近は自動販売機が増えてきてい て、これはちょっと寂しい気もする。券売機を見ると、入館料のほかに映像に関する料金表示もある。有料の映像展示もあるようだ。見ると小箱入りのセット券もある。が、価格は単純に合計しただけ。割引にはなっていない。 だが、小箱がちょっと気になり、これを買ってみる。この小箱、開けてみるとコインが3つ出てくる。1枚が入場券、あとの2枚が映像展示の入場券となる。このほかに、黄色い小さな巾着が付いてくる。これがセット券のおまけとなる。 巾着には別に使い道があるわけではないが、ちょっと楽しくなる。
入館用のコイン、四角い穴が開いた古銭風で、色もちょっとくすんだ感じになっている。”時空通寶”と書かれていて面白い。しかし、残念なことにこれは入館時に回収されてしまう。これはちょっと惜しい。

  

セット券サービスの巾着と入館用コイン

さて、中に入ると、目の前に海が広がり、その先に半円形の建物が浮かんでいるのが見える。これが展示棟である。海に浮かぶ建物であろうことは地図でわかっていたが、実物を見るとやはりすごいと思う。 わずかな距離ではあるが、この距離が博物館への期待を一層高めてくれるように見える。しかし、見方を変えれば海に浮かぶお饅頭のようにも見え、なんとなく面白い。

  

さて、展示棟へはどうやって行くのか? これは海底トンネルを使うのである。エレベータで地下に降りるとトンネルになっている。長さはおおよそ60m。そう長い距離ではないが、細長いので結構遠く見える。歩き始めると天井に窓が開いていて海中が見える。海面も見えるし、そんなに深くはない。結構明るいのだ。とはいえ、海中であることには違いない。地震などがおきたら?  これはちょっと怖いかもしれない。
海底からエスカレータで1階に向かう。いきなり大きな船の船底が目に付く。これは菱垣廻船、浪華丸である。 木造の船なのだが、見上げるととても大きい。大いに気になる船だが、この見学は後にして、まずはエレベータで4階に上る。
まずは”海がつなぐ世界の文化”の展示となる。ここでまず目に付くのがフィギアヘッド。帆船の先頭についている飾りである。女神や鳥などをイメージしているのだが、意外なほど大きい。そして、美しい 。この展示棟は外から見ると黒っぽいのだが、ガラス張りの外壁の内側には遮光も兼ねて穴あきの金属のパネルが貼ってある だけ。外から見た感じでは想像もつかないほど明るい。太陽の光にあふれる中で見るフィギアヘッド、とても美しく感じる。もともと外にあるものだから、明るい中で見るのが一番なのかもしれない。
フィギアヘッドなどは別にして、多くの展示品は壁で仕切られた展示室内にある。まずは”世界の海洋交流史”である。 船の模型や貿易などの展示であるが、六分儀などの航海術関連の展示もある。これは星などを使って緯度を測定する器具である。自由に操作できるわけではないが、壁にある北極星を使って緯度の測定を行ってみることが出来る。また、北斗七星を使って時刻を調べる機器もあり、これも実際に体験できる。 円盤を北極星に向け、メモリを北斗七星にあわせる・・・。簡単そうだが、2時間ほど誤差が出てしまった。円盤を星に向かって直角になるようにしなければなら ないそうだ。もちろんそのつもりで操作したのだが、ずれてしまったようだ。意外なほど熟練を要する。
次は帆走の仕組みとヨットレース。有料ではあるが、小型のヨットのシミュレータもある。初級から上級まである。面白そうではあるが、難しそうでもある。 ちゃんと説明してくれるので、初級なら・・・と思うのだが、この日は先客がいたのでパス。4階には、このほかには、船や港に関する絵画も展示されている。

次は3階に下りる。この階は大坂みなとに関する展示となる。大坂は経済の中心。そこを支えた海運の展示がある。
まずは大阪の港の発展について。ここはかってはおおきな湾だったのが、砂州が発達し、それに伴って内側に土砂が溜まり、沼地化していったという。 砂州が陸地を作ったわけだが、逆に砂州のために洪水が起きやすい、という問題もあった。これを防ぐため、砂州を開いた堀江が港として発展したという。このあたり は大阪港の基礎となったことだけに展示も詳しい。
そして、戦国時代以降は経済の中心として発展する。大坂の町の堀。これも水運には欠かせないものだが、これについての展示ももちろんある。また、川で運ばれた土砂を積み上げて出来たという天保山もでてくる。そして、米に関連する展示では、コント風の解説もあり、楽しめる。漫才的な面白さがありながら、米の取引に関する解説もあり、ただ展示を見ているより数段、わかりやすい。時間が決められているので、それにあわせての見学をお勧めしたい。

2階は浪華丸に関する展示となる。まずは船に乗ってみよう。乗ってみると外から見たほど広くはない。 甲板から船室に入ると天井も低く、梁があったりしてうっかりすると頭をぶつけてしまいそうだ。とはいえ、決して小さい船ではない。甲板から見上げる帆は、4階以上に伸びていて、帆の重さも1トンあるという。 帆を巻き上げる轆轤は線室内にあるが、それほど大きいわけではない。これで1トンの帆を上げるのだから相当な労働だろう。
船は、板を継いで作られている。板と板をつき合せて止めるのだが、鎹などでは止めきれない。ではどうやって?  このあたりは展示室でも解説があるが、まずは船を見ておこう。ところどころに木で穴を塞いだようなところがある。ここに釘があるのだ。でも、まずは見ておこう。この板の継ぎ方が和船の特徴なのだ。見ただけでは分からないほど巧妙に作られている。 浪華丸、一見したところ船の復元模型のようにも見える。しかし、これはちゃんとした船である。昔の設計を検証するために図面に従って建造し、そして実際に海で走らせている。船の建造のほか、操船に関しても研究が行われた実験船なのだ。この船の意義は非常に大きい。
2階の展示は、浪華丸の建造に関してがメインである。ここには木の継ぎ方を初めとして、和船の建造に関する展示がある。浪華丸でみた木の継ぎ方、船で見ると小さな木を埋め込んであるだけのようにも見えるが、内部には長い釘が打ち込まれている。それも、弧を描くように、である。これを正確に打ち込むのはさぞかし経験がいったことだろう。和船の作り方、これは芸術的な方法だと思う。もっとも、この独自の方法故、更に大きな船の建造は難しかったとも聞いている。
2回にはもうひとつ、船の競争のシミュレーションがある(有料)。操作は舵と帆の上げ下ろし。2人、必要になる。大きな画面を見ながらタイミングよく帆と舵の操作を行い、江戸を目指す。うっかりすると逆に操作してしまったりする。私の同行者が挑戦したときは逆の操作を行い、他船に激突、沈没してしまった。他の人の操作を一度見てからの方がいいかもしれない。

1階はシアターである。ここも別料金になっている。2つあり、ひとつはベネチアのゴンドラの体験。これは立体映像でのんびりと水の都を楽しむことができる。そしてもうひとつは映像に合わせて大きく揺れ動くタイプ。こちらは身長などに制限がある。どちらも15分程度で、頻繁に上映されている。一度楽しんでみる価値はあると思う。
それともうひとつ。浪華丸の船底。これは一度ゆっくりと見て欲しい。この船底の形が和船の特徴でもあるのだ。現在の船とはちょっと違うその形、じっくりと見て欲しい。

この後は再び海底トンネルを通って戻る。行くときと同じ海底を見ながら戻るのだが、どことなく海に対して意識が変わったようにも感じる。ちょっと不思議な感じがした。


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