蛤坂



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坂は、犀川大橋の、寺町側の橋詰から上る坂である。橋からの道をまっすぐに進むと北国街道である。そこから左に分かれると、犀川から離れるように右に緩やかに曲がりながら上る道がある。今は裏道のように見えるが、元は鶴来往来であり、野田山道へと続く道である。この坂道が蛤坂である。

寺町台地は、犀川大橋橋詰あたりが北の端となる。蛤坂は、北国街道から別れ、高くなりはじめた寺町台地をゆるりと上る。比較的緩い坂で、車の通行も可能であるがあまり広くはない。犀川からゆっくり分かれるように、緩やかに曲がりながら上る。寺町の寺院群の始まりでもあり、お寺も目に付き始める。上り始め、ちょっと高くなったあたりに蛤坂の石碑がある。大きな柳の木の下であり、犀川も見渡せる。対岸の町並みも見える。金沢らしい風景のひとつだろう。

さて、蛤坂にはもうひとつ見所がある。それは古い料亭である。木造ではあるが犀川から見ると見上げるほどの建物である。そして、緩やかに曲がる蛤坂に沿って折れ曲がっている。道に面するところだけではなく、建物全体が折れ曲がっているようだ。これは、犀川側の裏から見るとよくわかる。この建物もまた、坂の雰囲気を高めているように思う。

蛤坂の由来、これは享保18年このあたりの大火の後、道を開いたことによる。焼けて口を開くとの意味から名がついたという。また、蛤の身が開いたように見えたから、との説もある。名前はよいのだが、大火による由来、ちょっと引っかかりを感じてしまう。

また、この坂道は、近くの寺院から、妙慶寺坂とも言う。

蛤坂にある料亭
料亭を裏側(蛤坂新道ノ坂)から見る。折れ曲がっているのがわかる。
木造ながらかなりの高さである。
蛤坂新道ノ坂の分かれ道。
蛤坂の別名妙慶寺坂の
由来である、妙慶寺


蛤坂新道ノ坂

蛤坂新道ノ坂は、蛤坂の中ほどから蛤坂新道へ通じる坂、とされている。
蛤坂新道は、犀川に沿って桜橋に向かう道である。現在の道は、犀川大橋の左岸の橋詰めから上流に向かって見ると、川に沿って道があり、その右に蛤坂が分かれてゆき、蛤坂を少し上ったところから左に分かれるように下り坂がある。この下り坂は、犀川沿いの道と平行して走りやがて合流する。高さこそ違うものの、並んで走る道であり、ちょっと無駄な感じに見えてしまう。この坂道が蛤坂新道ノ坂と思われる。どこか不自然な感じのある道であるが、このほかに蛤坂から分かれる坂道はないので、これが蛤坂新道への坂、なのだろう。

さて、不自然さの理由であるが、古い地図を見ると犀川沿いの道は1本しかないようにも見える。とすると、今の川沿いの道はなく、坂道のみが蛤坂新道に続いていたのかもしれない。このあたりに理由がありそうな気がする。

さて、坂道であるが、川沿いにちょっと高いため、見晴らしはよい。犀川の雰囲気を楽しむなら、こちらを歩く方が楽しいだろう。また、蛤坂との分かれ目には柳の木があり、それもまた雰囲気が良い。
ただ、抜け道的に使う車が多いのがちょっと残念である。

蛤坂から分かれる蛤坂新道ノ坂(左側に下る坂)
右側は蛤坂


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