美術の小径(びじゅつのこみち)


坂道らしくない名前である・・・。
名前であるが、この坂が中村記念美術館と石川県立美術館を結んでいることから付けられたのだろう。この付近を車で走っていてはわからないのだが、地図で見るとこの坂道により、かなりの近道になるのがわかる。坂の上には藩老本多蔵品館や石川県立歴史博物館もある。そういう意味では観光に便利なのだが、上り口も降り口も美術館の敷地内であり、おそらくあまり知られていないだろう。むしろ、地元の人の通行に役に立つかもしれない。

さて、この坂道、その名前から新しい道のように思えるのだが、実際には藩政時代から存在する。
但し、一般的な道ではなく、本多家の下屋敷と上屋敷を結ぶ道であり、邸内の道みたいな感じだったらしい。ただ、絵図面には道らしい書き込みがあったりするから、知られてはいたのだろう。

美術の小径であるが、坂というよりは急な階段である。そして、一番の特徴は隣に用水が流れていることである。用水は、兼六園内に入る直前に分水された辰巳用水である。辰巳用水は、美術の小径の隣を滝のように流れ落ちる。この水は、崖下の池の湧き水と共に、西外惣構堀となり、城の重要な守りとなっていた。
美術の小道、手すりなどもあるので上りにくい、ということはないのだが、やはり急な階段である。一気に上ると息が切れそうだ。
だけど、この坂、急な崖だけに道は林のような中を通る。そして、滝のように流れる水音を聞いていると、どこかの山中にいるように感じられる。町の中にあってどこか別世界のような感じもある。

新しい坂のようだけど・・・上り口付近ではどこか歴史を感じる。この雰囲気もちょっと不思議な感じである


左は中村美術館前の、坂の上り口

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