惣構掘の坂


藩政時代、金沢の街には外側に惣構掘が作られた。街を取り囲む堀と土塁である。小田原攻めの際、惣構掘の有用性を感じ、金沢にもつくられたといわれている。城の西と東、それぞれ2重に作られている。金沢城は、小立野からの台地の先端にあるため、その地形を生かして惣構掘が作られている。高台の先端、と言う感じである。実際には街がすぐに発展して大きくなり、惣構掘の外にも街が広がってしまった。
惣構掘は、堀と土塁からできていて、街の守りのためのものだから、交通からいえば当然支障になる。後には守りの必要性がなくなっているが、堀は残り、元々の地形を生かしたものだけに場所によっては横切るところが限られてしまっていたりする。この周囲も横断する道路は少ない。

さて、この坂は鞍月用水沿いにある。用水の南、香林坊側は崖となっている。鞍月用水は道路に沿っているが、用水側にも家や商店が並び、用水に掛けられた橋を渡って家や店に入る。それ以外の道路は少ないため、表通りとはちょっと離されたような雰囲気になっている。その中で唯一、歩行者用となっているのがこの坂道である。
鞍月用水から見ると、坂の周囲は小公園になっている。橋を渡って公園に入り、左に曲がって折り返すように歩いて階段を登る。段はそれほど多くはない。すぐに登りきる。階段とその下の通路は、その周囲に木などが多くあり、惣構掘の解説板も立っている。公園とはいえないが、落ち着きのある空間である。坂の上も下も住宅が多い。
橋の横には用水に降りてゆく階段が見える。鞍月用水には、ここと同様に用水に降りてゆく階段が何か所かある。以前は水利用のために使われていたのかもしれないが、現在は”管理用”と書かれていて、全て常時施錠されている。残念な感じもあるが、流れも速いので危険防止のためには仕方ないかと思う。だけど、この階段は小公園と一体化しているように見え、これもまた景色になっている。金沢の他の用水にも利水のための階段が設けられている例は多い。現在も利用できるものもあるが、街の中心部は見た範囲全て施錠されている。

この付近、川を渡る道路が少ないからか、歩いてゆく人も見かける。適度な緑と利便性。バランスのとれた好坂である。


鞍月用水に架かる橋。
橋の向こうに木々の多い小広場が見える。
橋から階段に向かう小路。
木々や花も多い。
高低差は会談で一気に登る。
坂の上から。
橋から用水に降りる階段がある。
但し、常時施錠されている。





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