II.鬼神族



  1)破壊神
 魔神に対抗できるほどの強大な力を持った神々。破壊は再生につながる重要な役割を持つ。すべてのものを破壊しつくしたあとに、新しい世界を生み出す創造の力も併せ持つ。神によっては魔神たちよりも崇拝されており、世界中のあらゆる神話にその存在が認められている。


     シヴァ 《Siva》  出身地:インド
 インド神話の神。ルドラの異名で『リグ・ヴェーダ』にも登場するが、あまり重要な神ではなかった。ヒンドゥ教においては三大主神の1柱で、天上界、地上界、地下界の三界に住む生き物すべてを支配し、徹底的な破壊とその後の創造を司る。名は「吉祥」の意。また「好意的」「親切」といった意味も含まれる。維持を司る光神ヴィシュヌと双璧をなす。
 その姿はさまざまな形態に描かれるが、青黒い肌をし、4本腕で、額に三日月のような閉じられた第3の目を持つという姿が一般的だ。第3の目は一度開けば見た者を焼き尽くす。修行の邪魔をした愛欲の神カーマを焼き殺した強力な武器であった。頭部には朔月か三日月を頂き、首にはコブラを巻いて、虎の皮を身にまとっている。4つの顔や、10本の腕を持つものもある。主な武器は三又戟である。神妃パールヴァティと寄り添い、聖牛ナンディに足を置いた姿で表されることもある。リンガ(男根)を象徴とし、男根崇拝と結び付いて崇められる。ヴィシュヌが化身を多く持つのに対し、シヴァはさまざまな相を持つ。通常のシヴァと破壊を司る踊るシヴァ、シヴァの憤怒相パイラーヴァの3相が主なものである。
 シヴァはより古いヴェーダでは暴風神ルドラと見なされ、畏怖の対象であり、アスラと呼びかけられる。シヴァの別名にマハカーラというものがあり、これは破壊神、死の神の半面だけが強調されたものである。
 仏教においては大黒天と呼ばれている。このマハカーラが中国に伝わる時に誤解が生じ、大黒天は厨房、福徳の神ということになってしまった。さらに日本では、読みが似ていることから、大黒天は大国主命と同一視されるようになり、七福神のひとりに数えられるようになる。

     素戔鳴尊 《Susanoo no mikoto》   出身地:日本
 素鳴男命、建速須佐之男命とも。「荒ぶる(=須佐)の男」の意味。「建速」は神威を称える。長い髭をたくわえた偉丈夫で、暴風神、あるいは雷神としても考えられる。伊弉諾尊、伊弉冉尊の2神の3子中、第3子。伊弉諾尊の鼻から生まれ、天照大神、月読命とともに三貴子と呼ばれる。
 幼い頃、父・伊弉諾尊から海原を治めるように命じられるが、亡き母・伊弉冉尊のいる根の国に行きたいとだだをこね、泣きわめいた。すると川も海もすべて枯れ、悪神たちが蝿のように沸き立って、この世に災いがもたらされたため、怒った伊弉諾尊に追放されてしまう。この後、姉である天照大神に暇乞いをしに高天原に上がっては、乱暴狼藉の限りを尽くし、果ては天照大神の「天の岩戸事件」を引き起こし、再び追放される。
 地に降臨しては、酒を使って八岐大蛇を退治し、助けた奇稲田姫を娶った。素戔鳴尊はそのまま出雲国に身を落ち着け、根の国の王となる。

     トナティウ 《Tonatyw》  出身地:メキシコ
 古代アステカ時代の伝承に登場する太陽神で、天体を象徴する神々のうちの一人。太陽の光を背負い、武装した戦士の姿で描かれることが多く、戦争の神ともされていた。
 アステカ時代には戦争崇拝があり、トナティウはその中核を担う神として崇拝されていた。その戦争の目的は、主として太陽であるトナティウに心臓を捧げるための捕虜を確保するためであったと言われている。

     トリグラフ 《Triglav》  出身地:ロシア
 西スラブ・バルト地方の主神格。名は「三つの頭」を意味する、黒き馬を従える3面の軍神。白き馬に乗る軍神と対をなす。
 西スラブの人々の間で崇拝されていた神々には、軍神とされるものが多い。トリグラフもその中のひとりである。

     蔵王権現 《Zaoh gongen》  出身地:日本
 役行者(えんのぎょうじゃ)が創建した金峰山寺(きんぷせんじ)蔵王堂の本尊にして、修験道の主尊である。「金剛蔵王権現」「蔵王菩薩」とも書かれる。魔障降伏の相をなし、右に三鈷(さんこ)を持ち、左手は広げて腹を押し、右足を上げた形で表される。
 役行者が混迷した世を救う力を求め、金峰山にこもって千日の修行を行った際に感得したと伝えられる。釈迦如来や千手観音、弥勒菩薩も現れたが自身の主尊とはせず、最後に現れた蔵王権現こそが混迷の世を救う神であるとして、自身の主尊に迎え入れたという。
 奈良県吉野山など、その他各地に奉られている。

     北斗星君 《Hokuto seikun》  出身地:中国
 道教の神で、北斗七星を神格化した存在。人間の善悪を調べ、地獄の行き先を決める、閻魔に似た神。

     カルティケーヤ 《Kartikeya》  出身地:インド
 軍神。シヴァとガンガーの息子であり、ヒンドゥー万神殿の主たる神のひとり。名の語源はプレアデス「クリティカー」からきている。孔雀にまたがった姿で描かれる。シュヴェータ山の黄金の穴から生まれ、生後4日目で神々の軍勢を退けて神軍の総司令官になり、生後6日目にして神々を率いて魔神たちを撃破したと伝えられている。
 仏教に入ると韋駄天と呼ばれ、俊足を誇る天軍の将として邪神を消滅させるとされている。

     斉天大聖 《Seiten taisei》  出身地:中国
 16世紀の小説『西遊記』で有名な孫悟空に与えられた称号。「位が天と斉(等)しい聖人」という意味。
 孫悟空は花菓山の仙石から生まれ、変化の術を身につけ、伸縮自在の如意棒を手に入れ、猿の眷属を率いて大暴れしていた。ついには天に向かって挑み、誰も彼を止めることができなかった。そこで天の神々は彼と和平を結ぶべく官職を与える。始めは馬丁の仕事が与えられたが、この官職の位が低いのに気が付いた孫悟空は怒って暴れだしたので、仕方なく「斉天大聖」の位が与えられた。役所であり、宮殿でもある斉天大聖府は、天界の西王母の蟠桃園の隣に造られ、この桃の管理を任されたが、孫悟空は蟠桃園の不老不死の桃を食って無敵となり、したい放題するようになった。しかしついにはお釈迦様には勝てずに下界へ落とされて、三蔵法師のお供をいいつかることとなった。
 また道教においては、孫悟空は悪魔退治の神である。『西遊記』の最後には孫悟空が天界に召されていることから、彼が神になっても不思議はないといえる。数々の悪霊、悪鬼と勇猛果敢の戦う孫悟空の英雄ぶりが、邪気を祓う神として民間信仰の対象となったのであろう。

     アレス 《Ares》  出身地:ギリシア
 ギリシアの戦争と破壊の神。ゼウスとヘラの間に生まれた。しかし、性格は凶暴かつ残忍、傲慢で思慮に欠けているが、風采だけは立派である。ローマ神話のマルスと同一であるが、性格面で対称的である。また、竜や巨大な猪など、破壊的な魔獣を支配下に置いている。アレスはオリンポス12神の1柱であるが、人気はなく、神話も少ない。同じ軍神でも知性で戦いを導く女神アテネの敵役として神話に登場するが、必ず敗れるのである。
 愛と美の女神アフロディーテと恋に落ちるが、アフロディーテの夫で鍛治の神ヘーパイストスに密会中のところを捕らえられ、恥をかかされた。
 なぜ彼がここまで嫌われるかというと、もともと野蛮で好戦的と言われていたギリシアの植民地、トラキア地方(黒海沿岸)の神であったアレスをオリンポスに取り込んだためであるからと考えられている。
 愛の神エロスは、アレスとアフロディーテとの間にできた息子と言われている。また、ほかにも多くの女からたくさんの戦争好きの息子を得た。

     アシュター 《Ashter》  出身地:シリア
 カナアンの軍神で、「恐るべき者」「獅子」と呼ばれた。バール神にとって代わろうとするが失敗する。
 バールの妻アスタルテとも同一視され、『聖書』では、アスタロトとして彼女の中に取り込まれる。エジプトにアシュターが入ると、彼は獅子の顔をした女軍神になっており、すでにここでも混同が起こっているのがわかる。

     牛頭天王 《Gozu tenno》  出身地:日本
 京都八坂神社の祭神で、祇園精舎の守護神。全国的に疫神として崇められ、各地にさまざまな伝承が残っている。薬師如来と同一視されることもある。

     オグン 《Ogoun》  出身地:ハイチ
 ブードゥー教の英雄戦士。エルズリーの夫の3神のうちのひとり。その名に「金属の神」の意を持つ。
 原初の混沌たる世界に火と鉄を用いて人間の文明を切り開いたと言われており、文化の秩序をもたらした文化的英雄でもあると言われる。人間の指導者として地に降り立ったオグンは後に王となったが、戦いの最中に酒に酔い味方を殺してしまったことを後悔し、姿を消したと言われる。
 呪術的な要素の強い神となっている。礼拝にはラム酒を撒いて火をつける。炎の赤はオグンの聖なる色とされる。また、ナイジェリアの鋼鉄の神にも同名のオグンがおり、深く関連している。本来の姿である戦士、呪術師、門番、政治家、火の番人、犠牲者など、さまざまなオグンがいるとされる。

     オーマ 《Ogma》  出身地:アイルランド
 ケルト神話における勇猛な戦士の神。神々の父ヌァザの弟で、アガートラームの片腕として戦場で活躍した。
 ドルイドの使うオガム文字を発明したとされる。



  2)地母神
 母なる大地の女神である。驚異なる自然の厳しさを象徴する存在であると同時に、暖かく包み込む母性の優しさをあわせ持つ。ある意味で自然そのものといえるだろう。それだけに彼女たちは古くから崇められており、いまだに強い影響を及ぼしている。


     イナンナ 《Inanna》  出身地:シュメール
 イナンナはシュメールの神々の体系の中でもっとも重要な女神で、もうひとつの名をニナンナ「天の女主人」といった。アン(天の化身)、あるいはエンリル(大地と大気の神)の娘で、金星と同一視され、また戦争の女神として山の神エベフに打ち勝ったとされる。しかし、最もよく知られているイナンナの姿は、豊饒と愛の女神の姿であろう。
 イナンナは時代の流れとともに他の神話体系に取り込まれていき、イシュタル、アスタルテ、キュベレ、アフロディーテ、ウェヌス等の起源となった。中でもイシュタルには多大な影響を与えており、有名な『イシュタルの冥界下り』は、イナンナの物語を元にしたものである。

     カーリー 《Kali》  出身地:インド
 ヒンドゥ教のシヴァの妃パールヴァティの変身した姿で、「黒い者」の意。血を好む殺戮の女神である。「カーリー・マー(黒い母)」とも呼ばれ、4本の腕を持ち、首からは人間の髑髏をつないだ首飾りを下げている。幻惑的な衣装を身にまとい、青黒い肌には腕輪や足輪、真珠のネックレスといった高価な装飾品がきらめき、切断された腕をならべたスカートで腰を覆っている。顔は真っ黒で、シヴァの三日月で飾られた宝冠に、その下の黒髪は背を覆い、くるぶしまで流れている。舌は血の味を確かめるがごとく垂れ下がり、眼は真っ赤に充血し、全身血に染まった恐ろしい姿である。第1の右手で血まみれの剣を振り上げ、第2の右手で三又戟を持つ。第1の左手では生首の髪をつかみ、第2の左手に頭蓋骨を持って生首から流れ落ちる血を受けている。蓮の寝床に横たわるシヴァを踏み付けた姿で表される。
 大女神ドゥルガーがアスラたちと戦った時、敵を目の前にして怒りに黒くなった顔からカーリーは生まれた。流れた血から新たな自分の分身を造るアスラ、ラクタビージャと戦った時など、その血を吸い尽くして倒したという。大女神に仕える者であり、大女神から生まれ、その危機を救った後、再びその中に帰っていくのだという。
 後世ドゥルガーがシヴァの妃になったため、カーリーもまたシヴァの妃とされるようになった。今日ではカーリーはもはやドゥルガーに仕えるものではなく、独立した神としてドゥルガー以上の力を得ている。インド全体ではポピュラーな人気だが、特に南部のベンガル地方(ヒンドゥ教シャクチ派)で崇拝され、その中心都市であるカルカッタの名は、カーリー・ガート(カーリーの沐浴場)がなまったものである。

     イシュタル 《Ishtar》  出身地:バビロニア
 バビロニアの愛と豊饒と戦の大女神であり、主神である。名は「星」を意味する。天神アヌの娘であり、金星の女神でもある。アッシリアでも崇拝されていたが好戦的な国家ゆえ、ここでは特に戦争の女神として崇められた。メソポタミア最古の文明を築いたシュメールの大女神イナンナのバビロニア版であり、後のアスタルテ、アフロディーテ、イシスなどに変容した、オリエント地方に共通する豊饒の大母神なのである。
 最も有名な『イシュタルの冥界下り』の神話によると、夫であり穀物神であるタンムーズを追って、イシュタルは冥界に赴く。冥界の7つの門をくぐるうちに、イシュタルは素裸にされ、ついには死刑の判決をうけ殺されてしまう。すると地上の世界では作物が実らず、生物の性的な行動もストップしてしまった。水の神エンキの助力で、イシュタルは再びこの世に戻って来たという。
 この夫婦神の関係はエジプトのオシリスとイシスの関係に反映されている。『ギルガメッシュ叙事詩』によると、英雄ギルガメッシュに好意を寄せたイシュタルは彼をかき口説くが、かつての愛人たちへの残酷な行為を罵られ、激怒して天神アヌに頼んで「天の牡牛」をウルクに送り込み、これを破壊してしまった。ここではイシュタルは敵役であり、これが母権社会が父権社会に換わる節目の神話であることがわかる。
 イシュタルは自らを「慈愛豊かな聖娼」と呼び、「大女神ハル(娼婦たちの母)」とも呼ばれ、娼婦の守護神でもあった。バビロニアの王は毎年新年の始めに、女神の神殿で女大祭司ハリーヌと性交儀礼を行い、女神に選ばれた夫として支配者としての認知を受けた。女神の神殿では、巫女が聖娼として男たちと交わり、女神の恩恵を与える者として崇められた。バビロニアでは女性はみな結婚前には、神殿で聖娼となる義務まであったほどである。しかしこうした淫行がユダヤ人を激怒させ、彼女は悪魔の一群に堕とされてアスタロトとなるのである。

     ドゥルガー 《Durga》  出身地:インド
 パールヴァティの変身とされる女神。「近づき難き者」の意。温和なパールヴァティとは対照的に、凶暴で恐ろしい性格ではあるが、容姿は極めて美しい女戦士である。体色は黄色で、10本(または18本)の腕にそれぞれ武器を持ち、魔獣ドゥンにまたがってアスラたちと戦う。
 アスラとの戦争で、神々(デーヴァ)が劣勢に陥った時、神々は怒りのあまり光輝を発し、この光の中からドゥルガーが誕生する。神々は喜び、自分の武器や力や装飾品を贈って祝福した。ドゥルガーは「一切を包括する者」となり、魔神たちを次々と討ち滅ぼし、最後に水牛の姿をした魔神の王マヒシャを、シヴァから与えられた三又戟で刺し貫いて倒すのである。この「水牛の魔神を殺す女神」のモチーフは、昔から美術作品に好んで用いられている。
 ドゥルガーは次第にほかの幾多の女神を吸収し、中核となって、大母神の体系を形成していった。世界そのものとも考えられ、ヒンドゥの三主神ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァをこの世に生み出したのも、この大母神と考えられた。パールヴァティもこの大母神の1面にすぎない。ドゥルガーがシヴァの妃とされ、パールヴァティの変身した姿と考えられるのは後代に入ってからである。
 女神崇拝の隆盛で、前述のパールヴァティ、カーリーなどと共に広く崇拝された。

     キュベレ 《Qubele》  出身地:トルコ
 小アジア(プリギュア国)の大地母神。のちにギリシア神話に組み入れられ、未開の大地の化身とされる。またクロノスの妻であるレアと同一視されるようになった。ローマ帝国の至高神ともされた。動物たちの女王であったことから、ディアナやアルテミスと言った女神とも同一視され、両側にライオンを置いて玉座に座った姿や、ライオンの引く戦車に乗った姿でも表された。
 ギリシア神話では、主神ゼウスがディンデュモン山に流した精液から生まれ、両性具有であったために去勢されて女神になったのだという。
 繁殖の神であるが、治療、神託を司り、戦争にあっては国を護る多面の力を持つ。

     西王母 《Seioubo》  出身地:中国 
 中国伝説上の女神。玉山、または崑崙山に住む豹尾虎歯の半人半獣。頭に勝(髪飾)をいただき、三青鳥が食物を運ぶ。元来はは天の災いと5つの刑罰を司る女神とされていたが、後に神仙説の流行から美しい姿をした崑崙の住人であるとされ、女性の仙人を統括する女神と言われるようになった。周の穆王や漢の武帝との会見伝説も生じた。
 魏晋以後、東王父という配偶者を得て道教で祭祀され、人々の運命をつかさどる神とされた。また、不老不死になる仙薬を持っており、これは孫悟空が食べたという仙桃の話でも知られている。

     ブラックマリア 《Black Maria》  出身地:中近東
 黒い聖母像を崇拝するキリスト教の一部傾向。スペインのモンセラートに代表されるような黒い聖母像は、一般的なキリスト協会で崇拝されているキリストの母である聖母マリアとは異なると考えられている。古代の豊饒祭礼をキリスト教に転化したもので、ヨーロッパの民衆に広く支持された。
 中等やヨーロッパの古い地母神に由来すると考えられており、その起源はエジプトのイシス、ギリシアのアルテミス、シュメールのイナンナ、インドのカーリー、イスラエルのリリトなど、様々な説がある。現在ではフランスなどで崇拝されている。

     ダイアナ 《Diana》  出身地:ローマ
 古代ローマの樹木の女神。誕生、多産を司り、また人間や獣の子の守護者でもあった。男嫌いで結婚を拒絶する乙女であり、美しい姿をしながらも純潔を守る誓いを立て、ニンフたちを従えていたとされる。
 ギリシア神話においては狩猟の女神アルテミス《Artemis》であり、これが後にローマ神話に取り入れられてディアナ(ダイアナは英語読み)となったとされる。ゼウスとレトの間に生まれ、太陽神アポロンを双子の兄にもつ。また、月の女神セレネと混同されることもあった。

     セドナ 《Sedna》  出身地:グリーンランド
 イヌイット(エスキモー)が信仰する恐ろしい一つ目の姿の女神。自分の子供であるアザラシや魚などの海の生き物を監視する海の神であると同時に冥界の支配者でもあり、人を溺死させることに喜びを感じる。求婚者を拒み、鳥や犬とともに、石と鯨の骨でできた家に住むとされる。その姿を見ることができるのは呪術師だけであるという。
 セドナの誕生にはいくつかの説があり、2人の巨人の間に産まれた貪欲な娘だとも、美しい人間の娘が鳥の姿をした悪霊に海に落とされ姿を変えたものだとも伝えられる。

     菊理姫 《Kikuri hime》  出身地:日本
 菊理姫(くくりひめ)、白山姫(しろやまひめ)ともいう白山(はくさん)の天津神である。伊弉冉尊の言葉を取り次ぐ巫女が神格化された神である。
 伊弉諾尊と伊弉冉尊が黄泉の国で争った時、仲裁役として黄泉平坂(よもつひらさか)に現れた。縁をつなぐという意味で、「くくり」の名がついたようだ。彼女は縁結びの女神であり、愛の女神でもあるのだ。
 もともと菊理姫は、霊山でトランス状態に陥ることによって、山の神や先祖の霊の言葉を伝える巫女であったと考えられる。古代朝鮮の山神信仰の影響も見られ、日本のシャーマニズムと融合して生まれた女神のようだ。

     ハリティー 《Hariti》  出身地:インド
 日本では鬼子母神(きしもじん)として親しまれている子育ての女神である。音を漢訳して謌梨帝母(かりていも)とも呼ばれる。ヒンドゥの富の神クベーラの妻、あるいはその母とされる。尽きることのない多産性の象徴であり、500もの子悪魔に乳を与える。
 仏教説話では、これらの子を養うために国中の子を盗んで我が子に食べさせ、人々を嘆き悲しませていた。そこで釈尊(ブッダ)が戒めのために末子のプリンヤカラを隠すと、ハリティーは狂ったように子供を捜しまわった。釈尊はそんな彼女の前に現れ、「500人もの子供のうちひとりがいなくなっただけでもこれだけ悲しいのだ。たったひとりの子供をおまえに連れ去られた母親の気持ちを考えてみるがよい」と諭すと、ハリティーは心から反省して仏に帰依し、以後は子安観音として安産、子供の守護神になった。彼女はそれ以後、子供達には人の子の代わりにザクロを食べさせることにした。ザクロが人肉の味がするという俗信はここからきている。
 東京の雑司ヵ谷、入谷の鬼子母神は有名である。母親はザクロを供え物として、安産や子供の無病息災を願うのである。
 寺院門戸の守護神、育児の神として、特に日蓮宗で信仰されている。

     ズェラロンズ 《Zelaronz》  出身地:カナダ
 北アメリカ太平洋岸に住むハイダ族に伝わる蛙の王女。「火山の女」とも呼ばれる。
 一杯に人を乗せた6艘の丸木舟とともに、海から現れたと言われている。夫は熊の神カイチ。

     ペレ 《Pele》  出身地:ポリネシア
 ハワイ島に多く見られる火山の女神で、流れ出る熔岩の神格化であると言われている。キラウェア火山の噴火口に住んでおり、噴火が近づくと島民に危機が迫っていることを警告するという。「マダム・ペレ」と呼ばれ、白い子犬を連れ、輝く赤いムームーに身を包んで現れる。怒りにかられると人々を石に変えるという。
 ペレの起源については多くのポリネシア神話で語られているが、ハワイの名家の出身とする説では、ペレはキラウェアの噴火口を掘り起こした本人であり、普段は噴火口に住んで火の神々を取り仕切ると言われている。

     セクメト 《Sekmet》  出身地:エジプト
 原始の神プタハの妻で、牝ライオンの頭をもつ女神。ハトホルの化身とも言われている。名は「力強き者」を意味する。
 太陽神ラーの怒りを体現する疫病の神で、また医者の守護神とされる。

     モコシ 《Mokosi》  出身地:ウクライナ
 ウクライナを中心とする東スラブ地方の女神。きわめて女性原理的な性格が強い大地の神で、豊饒から安産まで、生命にかかわるすべてに影響を及ぼす。

     タウエレト 《Taueret》  出身地:エジプト
 エジプトに伝わる古い地母神である。「偉大なる者」の意。ナイルの流れより巨躯を浮かび上がらせる河馬の姿は、ライオンでさえも追い払う力を有しているのだ。ナイル川にあっては日の出を見守る神であった。すなわち復活する太陽神ラーを(儀礼的にではあるが)毎朝産むのである。
 後代に入ると下級神に落とされてしまった。それでも家庭の女神として、あらゆる階層にわたって崇められ、同時に恐れられる。妊娠と出産にあたって、さまざまな悪霊から女性を守る者とされた。また、死者の国での再生を願って、タウエレトの護符が死者の墓に収められた。
 懐妊した河馬の姿で表され、垂れ下がった人間の乳房を備え、ライオンの後ろ脚で立ち、鰐の尾をつけている。時として太陽をかたどった円盤と牡牛の角をつけていることもある。

     ヴェスタ 《Vesta》  出身地:ローマ
 ローマ神話の暖炉の神。永遠の炎の中に住み、国を守護すると考えられた。ローマ各地の神殿の祭壇にはヴェスタの炎が奉られ、6人の乙女がこの火を守った。



  3)天魔
 十魔、四魔などと呼ばれる、仏道に妨げをなす第6天の魔王のこと。インド神話においては主にアスラのことを指す。神々と敵対する存在であるが、その力は魔神たちと比べても劣ることはない。


     アスラ 《Asura》  出身地:インド
 インド神話で神々(ディーヴァ)に敵対する存在。「アスラ」というのは固体の名前ではなく族名である。
 アスラ族はもともと神々と同等の存在だった。神々とアスラ族が万物の創造を行った時に不死の霊薬アムリタが創り出されるが、アスラ族は神々の陰謀により、それを飲むことができなかった。その結果、神々は不死の体を得、アスラ族は死の運命を免れない存在となる。このことがあってから、アスラ族は神々に敵対する者となるのである。
 仏教においては阿修羅(または修羅)と呼ばれ、八部衆のひとりとして仏法の守護者とされる。また、その一方で六道の1つの修羅として人間以下とされ、絶えず闘争を好み、地下または海底に住むとされている。
 阿修羅王とは阿修羅族の長のことで、常に梵天(帝釈天)と戦うとされる。

     インドラジット 《Indrajit》  出身地:インド
 インド神話のアスラのひとり。本名はメーガナーダ。ラーヴァナの息子。
 大叙事詩『ラーマーヤナ』に登場するアスラの中で、最も勇敢なアスラの戦士がインドラジットである。彼は父ラーヴァナとラーマたち神々の戦いの中でインドラを打ち破り、捕虜にすることに成功した。彼はインドラを解放することと引き換えに、ブラフマーからインドラジット(インドラを打ち破る者)という称号と不死の体を授かる約束する。しかし、神への儀式を行っている時に、ラーマの弟ラクシュマナが急襲してきたため、やむなく儀式を中断することになる。その結果インドラジットの不死の力は失われラクシュマナに倒される。

     ヤーマラジャ 《Yamaraja》  出身地:インド
 インド神話に登場する最初に生まれた人間。略してヤマと呼ぶ。
 ヤマにはヤミーという双子に妹がいたが、ヤマが死んだため、ヤミーは深い悲しみに包まれた。神々はヤミーにヤマのことを忘れさせるため、昼と夜を作ったのだ。
 ヤマは最初に死んだ人間だったので、彼の後に死んだ者たちを死者の国へ導く役割を持つことになる。この時には死者の国というものはいわゆる天国だけだったのだが、その後、ヤマは死者の生前の行為により死者に刑罰を与える仕事を始める。こうして地獄が生まれ、最終的にヤマは地獄を管理する神になってしまう。このヤマの姿が仏教に取り入れられ、閻魔大王という名で呼ばれるようになる。
 仏教の閻魔は、18の属将と8万の獄卒(鬼)を率い、人の生前の行為を審判する。中国においては道教と混じ、十王のひとつとされ、その姿が日本でも一般化した。

     ラーヴァナ 《Ravana》  出身地:インド
 ラクシャーサ族の羅刹王。クベーラ(毘沙門天)がランカー島に住むことになった時、ランカー島の先住者ラクシャーサのスマーリンはクベーラの父に自分の娘を嫁がせた。その間に産まれたのが羅刹王ラーヴァナである。
 彼は故郷をクベーラに奪われたことを恨み、千年もの長い間苦行に励んだ。そして10個ある首のうち、9個までを切り落として火に投じることにより、神々、ガルーダ、ナーガ、ヤクシャに殺すことのできない半不死の体を手に入れる。この体を使ってラーヴァナは神々への攻撃を開始した。まずクベーラからランカー島を取り戻し、さらにクベーラの逃げ込んだ都市をも侵略した。この戦いはラーヴァナの勝利に終わり、彼はクベーラの戦車プシュパカを我が物にする。そしていよいよ三界の支配に乗り出すのだが、ヴィシュヌの化身ラーマの妻シーターを誘拐したことが原因で、ラーマと敵対することになり、激しい戦いの末、ラーマに討ち取られる。

     アグニ 《Aguni》  出身地:インド
 インド神話の炎の神。地上の火と雷電、太陽を神格化したものである。炎の体を持ち、口の中には黄金の歯が生えている。好物はバター。
 彼は神と人間を結ぶ使者の役割を果たす。つまり、炎の中に投じられた供物を、彼が神に届けるのである。アグニは火神であるが、天界では太陽神となり闇を払い、空界では雷神となり、雷を起こして地上に雨を降らせる。



  4)鬼神
 人の耳目では接しえない、超人的な能力を有する存在。一般的には死者の霊魂や天地の神霊のことを指す。仏道を守護するものであったり、鬼たちが神の力を得て怒りを具現したものである。


     摩利支天 《Marisiten》  出身地:インド
 仏教を守護する善神。梵語マリーチ《Mariti》(威光、陽炎)の漢音写。摩利止天とも。2臂あるいは3面4臂、猪に乗る天女像で表される。梵天(初禅天、インドではブラフマー)の子と称し、日光、風の神として信仰され、その姿を隠し、しかもよく障害を除くとされた。
 元来は古代インドの民間信仰神であった。日本では武士の守り本尊。護身、隠身、遠行、得財、勝利の神とされる。

     毘沙門天 《Vishamonten》  出身地:インド
 梵語では《Vaisravana》と書く。帝釈天の家来で、須弥山中腹の北方に住む、北方世界を守る四天王のひとり、および十二天のひとり。忿怒の相の武神形で、甲冑を着け、右手に鉾、左手には宝塔を持つ姿で表される。常に仏法の道場を守護し、日夜法を聞くので多聞天《Tamonten》とも呼ばれる。四天王を並べていう場合には普通この名称を用いる。
 インド神話ではクベーラ《Kubera》という名前で呼ばれ、ハリティーの夫とされる。漢音写して倶毘羅。クベーラはシヴァから富の守護神に任命され、ランカー島に住むことになる。日本で毘沙門天が七福神のひとりに名を連ねているのも、富の守護神という肩書があるからである。
 四天王、十二天の詳細については後述。

     フヘディー・メルゲン 《Fuhedi Mergane》  出身地:モンゴル
 モンゴル神話の英雄神。雷神ともされる。神をだましたマンガドを滅ぼすよう父神に命じられた彼は、それを9人の自分の息子たちに伝えて攻撃させた後、自ら雷の矢を放って退治した。

     経津主神 《Hutunusi no kami》  出身地:日本
 フツヌシの名は刀剣に物が断ち切られるさまをあらわす「フツ」と、神であることを表す「ヌシ」から成ったという。そこから、刀剣の威力を象徴する神であるとされている。
 日本書紀では、伊弉諾尊が十握剣をもちいて火之迦具土神を斬殺した際に、剣からしたたり落ちた血液から生まれた岩の子であるとされる。

     鍾馗 《Shouki》  出身地:中国
 道教の疫鬼を退け魔を除くという神。巨眼多髯で、黒冠をつけ、長靴を穿き、右手に剣を執り、小鬼をつかむ。
 唐の開元年中、終南山の進士鍾馗が、玄宗の夢の中に出て来て魔を祓い病を癒したという。玄宗が呉道士に命じてその姿を描かせたのが起源。その画像を除夜にはった風俗が端午に伝わり、5月のぼりに描き、5月人形に作る。また朱で描いたものは疱瘡除けになるとされる。
 役人の試験に落ちて自殺した者の霊で、手厚く葬ってくれた高祖皇帝に報いるために悪霊退治をしているのだという説もある。

     ティール 《Tyr》  出身地:北欧
 北欧の最も勇猛な軍神。剣に勝利を意味するルーンを彫り、それを二度唱えると、戦に勝つことができる。フェンリルを縛るときに片腕を失った。
 ゼウスと同語源の名で、古くは最高神であったと思われるが、現存神話ではオーディンやトールらの風下に立ち、あまり活躍しない。
 他のゲルマン族の間では、《Tiw》、《Tiwaz》。
 ローマでは火の神マルスと同一視される存在で、英語の[Tuesday(名)火曜日]の語源ともなっている。

     十二神将 《12 jinshou》  出身地:インド
 夜叉族の救世主、薬師如来と『薬師教』を守護する十二夜叉大将である。もちろん彼ら12神は、猛る夜叉の一族を代表する者たちである。釈迦が薬師の徳に関して説法した時に、彼ら12神は感激して『薬師教』の守護者となり、以後薬師を信仰する者を護り、大願を成就させることに尽力することを誓ったのだという。12神の姿は、日本の各所にある薬師如来像の台座の部分に見ることができる。なお、薬師如来の両脇には日光菩薩、月光菩薩を控えており、薬師如来を助けている。
 また、十二神明、十二神明王、昼夜十二の護法神などと呼ばれ、十二支に当てはめることもあるが、後から合わされたものなのでさまざまな諸説があり、干支との組み合わせの確定はできない。
 詳細は後述。

     仁王 《Nioh》  出身地:日本
 金剛力士のこと。密迹金剛(みつしゃくこんごう、または執(しゅう)金剛ともいう)と、那羅延金剛(ならえんこんごう)の2神を二王(仁王)という。密迹金剛は左に立ち金剛杵(こんごうしょ)を持つ。那羅延金剛は右に立ち、両手を上下に張って大力を示す。憤怒の表情で、上半身裸の逞しい体を持っている。魔を祓い仏法を守護する役目を持つ者である。
 東大寺南門の運慶、快慶作は有名。

     愛染明王 《Aizen myohoh》  出身地:日本
 密教における愛の仏であり、人間の煩悩を仏の悟りに変える力をもつという。ローマの恋愛の神キューピッドと同じように、弓矢を引き絞っている姿で描かれる。

     乙護童子  《Otogo douji》  出身地:インド
 法力に使役され、または仏法守護のために童の姿で現れる鬼神。乙護法。

 四天王          梵語     守護方角 装備品
 持国天(じこくてん)  《Dhrtarastra》  東   刀 宝珠
 増長天(ぞうちょうてん)《Virududhaka》  南   鉾(刀)
 広目天(こうもくてん) 《Virupaksa》   西   三又戟 筆
 多聞天(たもんてん)  《Vaisravana》   北   鉾 宝塔

 十二天  守護位置    十二神将   漢名(和読)     干支 色 武器
 梵天     上      クンビーラ  官毘羅(くびら)   子 黄 宝杵
 地天     下      ヴァジラ   跋折羅(ばざら)   丑 白 宝剣
 日天     日      ミヒラ    迷企羅(めきら)   寅 黄 宝棒
 月天     月      アンティラ  安底羅(あんちら)  卯 緑 宝鎚
 帝釈天    東      マジラ    安仁羅(あじら)   辰 紅 宝叉
 焔摩天    南      サンティラ  珊底羅(さんちら)  巳 煙 宝剣
 水天     西      インダラ   因陀羅(いんだら)  午 紅 宝棍
 毘沙門天   北      パジラ    波夷羅(はいら)   未 紅 宝鎚
 火天    東南     マクラ    摩虎羅(まこら)   申 白 宝斧
 羅刹天   西南     シンドゥーラ 真達羅(しんだら)  酉 白 宝索
 風天    西北     チャツラ   招住羅(しょうとら) 戌 青 宝鎚
 大自在天  東北     ヴィカラーラ 毘羯羅(びから)   亥 紅 宝輪



  5)国津神
 森の国日本の土着の神々である。天孫降臨によって日本にきた天津神とは常に対立しているが、封じられている神が多い。日本各地に見られる自然信仰の具現化と考えられており、その禁を破った者には祟りをなすと言われている。


     荒波吐神 《Arahabaki no kami》  出身地:日本
 日本全土に影響を及ぼしていた最古の土着神。古代日本縄文文化の主神である。遮光器土偶は荒波吐神の姿を模したものだとされ、そのことからこの神が北方系であることをうかがわせる。
 日本土着の蝦夷の歴史書である『東日流外三群誌(つがるそとさんぐんし)』によれば、邪馬台国の長髓彦(ながすねひこ、那賀須泥昆古とも)とその兄の安日彦は、神武天皇の東征軍挑み、敗れて東北に落ちのび、津軽の地に荒波吐王国を建設する。その主神がいうまでもなくこの荒波吐神である。荒波吐神は天皇に対する最大の逆賊、蝦夷の神として、その信仰は長きにわたって弾圧されてきた。
 現代では関東の神社の末社で、客人神(まれびとがみ)として細々と奉られているにすぎない。

     建御名方神 《Takeminakata no kami》  出身地:日本
 大国主神の息子。
 出雲の国譲りにおいて、建御名方神はそれを認めなかった。しかし、武甕槌神と力比べをしたところあっさり負けてしまい、慌てて逃げ出す。そして信濃の諏訪(すわ)まで逃げたところで、武甕槌神に追い詰められ、彼に命乞いをし、この土地から1歩も出ないことを誓う。諏訪に逃げた建御名方神はそこで土神となり、ミシャグジ神と呼ばれるようになったと記録されている。しかし実際にはミシャグジ神を滅ぼして定着した神のようである。後に、武神または農業神として尊崇されている。
 諏訪大社上社に建御名方神、下社にその妻の八坂刀売神(やさかとめかみ)を、それぞれ奉っている。
 現代では、建御名方神は国譲りの悪役として挿入されただけという見方が大勢を占める。

     大己貴神 《Onamuti no kami》  出身地:日本
 一般には大国主神(おおくにぬしのかみ)として知られる。八千矛命(やちほこのみこと)、大物主神(おおものぬしのかみ)、葦原色許男神(あしはらのしこおのかみ)など多くの別名を持つ。
 出雲を作った国津神と言われるが、『出雲国風土記』には八握水臣津野命(やつかみずおみずぬのみこと)が朝鮮から国引きで土地を増やし、少彦名神(すくなひこなのかみ)と共に国土経営、農作物の栽培等を伝えたとする伝承は、『万葉集』や『古語拾遺』にも見られ、大小2神が国土の主であると考えられる。大己貴神はこの伝承を継承しているのである。
 また、大己貴神は天孫降臨に先だつ国譲りにより、全国の国津神の代表として、天皇家に屈する神となる。
 『古事記』では、素戔鳴尊の娘の須勢理姫(すせりひめ)を妻にもらうために、素戔鳴尊の出す試練を受ける説話や、因幡の白兎伝説などの主要神物として登場する。
 現在は出雲大社に奉られている。

     八重事代主命 《Yae no Kotoshironusi no mikoto》  出身地:日本
 大国主神の1子で聡明な神とされる。大国主神の後継者であり、国譲りの際にはすでに出雲の支配者であった。名は「事知りの神」の意。
 名の由来は、事を知る、つまり正邪を判断することに長けているということである。出雲神話の国譲りに関わり、国譲りには積極的に賛成する。正しく物事を判断する八重事代主命が、国譲りに素直に承諾したというのだから、高天原の行為は理にかなったこととして正当化されるというわけだ。
 静岡の三島大社に、大山祇と共に奉られる。

     猿田彦神 《Sarutahiko no kami》  出身地:日本
 国津神の中でも大きな力をもった神で、大神と称される。長身に赤ら顔、鼻が高く、目も大きくぎらぎらと光っている。
 天孫・瓊瓊杵尊の降臨に際し、天の八衢(やちまた)まで迎え、高千穂峰へ案内した。中世以後、道祖神・庚申と習合し、道案内の神として、今も祭礼の先頭に鼻高面の姿で立つ。

     長髄彦 《Nagasunehiko》  出身地:日本
 伝説上の人物。那賀須泥昆古とも。
 神武天皇東征のとき、大和国生駒郡鳥見(とみ)地方に割拠した士豪。孔舎衛坂(くさえのさか)で天皇に抵抗したため、妹の夫である饒速日命(にぎはやひのみこと)に討たれた。

     一言主神 《Hitokotonusi no kami》  出身地:日本
 素戔鳴尊の子とも言われる。「やまびこ」や「こだま」が神格化されたもので、古代では山の神は言葉も司るものであると考えられていた。
 『古事記』には、葛城山を訪れた雄略天皇の一行が一言主と遭遇した話が記されている。雄略天皇が葛木山にかりに出かけたところ、自分たちとそっくり同じの姿をした一団に出会う。怪しんで弓を向けるが、天皇の問いかけに同じ言葉を返し、自分は良いことも悪いことも表現する言葉の神であると名乗った。それが一言主神であることを知って天皇は平伏し、武器や弓や着ていた衣服を献上した。呪術の神である彼の発する一言は、真実の言葉となって人々を支配するのだ。また、託宣の神でもある。
 後に、役行者によって使役された。役行者はこうした国津神たちを使役して、さまざまな土木工事をさせていたという。ある時、葛木山と金峯山のふたつの峰に橋を架けさせようとして彼ら国津神たちを使役していたが、一言主神は自分の醜い姿を恥じて日中の作業を嫌がり、ついには小角の怒りをかって魔界に幽閉されてしまった。一言主神は復讐のために里人に取り憑き、役行者に謀反の心ありと託宣したという。

     少彦名神 《Sukunahikona no kami》  出身地:日本
 『古事記』では神産巣日神(かんみむすひのかみ)の、『日本書紀』では高皇産霊神(たかみむすひのかみ)の息子。民話『一寸法師』でも有名な、小人の姿をした神。大国主神の国土経営に協力したが、伯耆(ほうき)国淡島で粟茎(あわがら)に弾かれて常世の国に逝った。
 農業、酒造、医薬、温泉の神として信仰された。



  6)邪神
 堕としめられた神々の中でもっとも邪悪であり、恐怖の象徴として古く祟り神として奉られている。人間にとって害をなす存在でしかなく、怒り、恐怖、苦悩などを人間にもたらすためだけに破壊と誘惑を繰り返す。まさに邪悪の権化。


     クトゥルフ 《Cthulhu》  出身地:宇宙
 H.P.ラヴクラフトが独自の体系を作り上げた、クトゥルフ神話に登場する海底に住む神。正確には「クトゥルフの落とし子《Spawn of Cthulhu》」という。
 彼らは何千万年もの太古に宇宙から地球に舞い降り、隆盛を誇った。しかし地軸の大変動により、南極で氷漬けになっていたり、海中深くに没したりと、活動を休止した者が多く、現代ではめったに見られない。

     天津甕星 《Amatsu Mikaboshi》  出身地:日本
 その名のとおり天津神の出だが悪神とされ、武甕槌神(たけみかづちのかみ)、経津主神(ふつぬしのかみ)の力をもってしても滅ぼすことができず、独立を貫き通した。
 星の神とされる。

     パズス 《Pazuzu》  出身地:メソポタミア
 シュメール文明の風の魔王。獅子の顔に人間の身体で背中には2対の鳥の翼を持ち、手は獅子の前足、脚は鷲爪。額の上には1本の奇妙に曲がった角がある。蠍の尾とそそり立つ蛇頭の男根がついている。
 パズスはいつもしかめっ面をしており、ペルシア湾から毒気をはらんだ熱風と共にやってきて、疫病を蔓延させる。イナゴと災厄の王とされる。

     エキドナ 《Ekidna》  出身地:ギリシア
 ギリシア神話の怪物の母。上半身が女で下半身が大蛇の姿を持ち、兄である最強の怪物テュフォンと交わって様々な怪物を生み出した。エキドナが生んだ怪物をざっと紹介すると、地獄の番犬ケルベロス、炎を吹き出す魔獣キマイラ、ゲリュオンの牛の番犬オルトロス、9つの頭を持つ大蛇ヒドラ、無数の頭を持つ龍ラドン、人面獅子スフィンクスなどいずれ劣らぬ凶悪な怪物揃いである。
 また、エキドナは自分の子供を随分殺しているヘラクレスとさえ交わり、黒海沿岸に住むスキタイ族の始祖を生んだと言われている。エキドナ自身も凶悪な怪物であるが、体中に無数の目を持つ巨人アルゴスによって殺される。

     パレス 《Pales》  出身地:リビア
 古代のロバ神。両性具有の神とされ、この神の神殿が[palace(名)宮殿]という語の語源になった。パレスチナの国名もこの神に由来している。北アフリカからヨーロッパにかけて広く信仰を集めていた豊饒神。一説にはエジプトの悪神セト、あるいはギリシアの牧神パンのように男根に似た形の頭部をしていたとも言われる。ロバの頭は重荷を背負う存在の象徴ともされていたため、「貧者」を象徴する神であったとも言われた。
 この神の祭りの祭司はロバの頭の仮面をかぶるという。

     セト 《Seth》  出身地:エジプト
 エジプト神話の悪神。豚、カバ、ロバなどの姿で表現される、砂漠、不毛、暴力の化身。母の子宮から自分自身を引きちぎり、母の脇腹を破って出てきたと言われている。
 分割されたエジプトをめぐって兄オシリスに挑み、さまざまな権謀術数の果てに彼を殺害した。しかし、オシリスの霊の加護で処女懐胎したイシスが産んだホルスによって、砂漠の彼方に追放された、または誅殺されたとされる。
 元来は上エジプトに住んでいたセム人の主神である。

     ニャルラトテップ 《Nyarlathotep》  出身地:外宇宙
 クトゥルフ神話の悪神。英語読みではナイアラソテップと言われる。
 「這い寄る混沌」と形容されるこの狂った存在は、外宇宙より太古の昔に地球に訪れた一種の神である。ニャルラトテップはこれら神の根幹にあたる魂の存在であり、人間は彼らの精神に完全に支配され、その混沌のパワーでいかなる形にも変化していくのだ。
 ニャルラトテップは目的によって、さまざまな姿をとる。人間を相手にする時は人間の姿をとるのだ。その目的や計画は、人間にとって悪いことばかりである。「闇の跳梁者」「ブラック・ファラオ」「黒い男」「闇に吠えるもの」「ふくれ女」などの姿がある。

     サトゥルヌス 《Saturnus》  出身地:ローマ
 カルデアの占星術士の間で「黒い太陽」と呼ばれた原初の大地の豊饒神。人々に初めて農耕を伝えたと言われる。ギリシア神話のクロノスに対応する。サトゥルヌスはラテン語名で、英語ではサターン《Saturn》。
 「黒い太陽」とは当時のころの低い位置にある太陽を指して言われたもので、「夜の太陽」とも言われ、冥界に住む「死の王」でもあると言われていた。人々は冬の太陽であるサルトゥヌスに祈りを捧げ、新しい春を呼んだのだ。その習慣は、現在ではクリスマスとして残されている。
 占星術では土星をさし、わざわいの星とされる。

     饕餮 《Toutetu》  出身地:中国
 中国西方の辺境に棲む、四凶と呼ばれる四大怪物のひとつ。名は「贅沢を貪る」という意味。人の顔を持つ羊で、腋の下に目があり、虎の歯と人の爪を持つという。
 際限のない不道徳な欲望を持つ食欲の権化のような怪物で、知能はかなり高くしかもずる賢い。財宝、食糧を略奪する時には老いた者や力のない者を専門に襲い、また相手が手薄になった隙を狙って襲撃する。
 この怪物をモチーフにした殷周時代の青銅器のことを饕餮文(とうてつもん)という。この饕餮文から、き竜文(きりゅうもん)、き鳳文(きほうもん)などが生まれた。

     カナロア 《Kanaloa》  出身地:ポリネシア・ハワイ
 ポリネシア地方における創造神話に登場し、創造神カネが生み出した者に敵対する者とされている。ヤリイカの姿をしており、死したものを飲み込む者とされる。ポリネシアではタンガロアと呼ばれる。
 魚や爬虫類は、この神の子供達であるとされる。人間たちに自分の子供達を捕らえるすべを教えたカネらに復讐するため、カナロアはカヌーを沈め、洪水を引き起こし、また波を打ち起こしては海岸を侵食するのである。
 邪悪な神であり、雲の中にある魔法の島の住人の体内に宿っているとされる。醜悪な匂いを放ち、執念深い性格をしている。創造神カネの陰となる側面であるとも言われ、カネと起源を同じくする存在であるとも考えられている。

     オーカス 《Okas》  出身地:ローマ
 ローマ神話の死の神。戦いを好み、自ら殺した戦士の遺体を喰う。豚の頭と蝙蝠の羽を持つデーモンで、オーク誕生のもととなった存在である。オークを配下に持つとされる。
 ギリシアにあってはポルキュスと呼ばれ、ギガンテスの怪物の父とされる。ゴルゴンやグライアイを妹に産ませた。

     テスカトリポカ 《Tetzcatlipoca》  出身地:メキシコ
 アステカ神話の創造神のひとり。名は「曇った鏡」という意味である。ケツアルカトルを追放し、メキシコのマヤ族を制圧したトルテカ族の軍神。後にアステカ族にも信仰され、その地位を固める。片足を「大地の怪物」に切られ、そのかわりに「子宮の中で丸くなる兎」の形をした鏡をくっつけていたともいう。生命を与え、また自由に奪うことのできる全知全能の神であり、後にケツアルコアトルによって地上に落とされた原初の太陽神でもある。
 彼の性格は「好戦的で暴力的。逆らう者には死を与える」と恐ろしく書かれることが多いのだが、七面鳥の変装が大好きで、庶民の学校を設立したり、性相談を受けたりと、どの階級とも親友であり続けた。また彼は、戦いとその克服を自然界における最低限必要な受難であると考えて、水をあえて嵐に変えて与えたという。その反面、テスカトリポカを祀る儀式では、この神の化身として1年を生きた若者を儀式的に殺し、その心臓を捧げることによって祭事が成立したと伝えられている。
 ちなみに、オメテオトルが生み出したとされる創造神は、トラトラウキ・テスカトリポカ(赤い神)、ヤヤウキ・テスカトリポカ(黒い神)、ケツアルカトル(白い神)、ウィツィロポチトリ(青い神)の4神である。

     ケモシ 《Chemosh》  出身地:ヨルダン
 古代バビロニアの太陽神。ミルトンの『失楽園』にも登場する、死海の東岸に住んモアブ人の主神。ソロモン王の神殿に祭られた神で、アンモン人の神モロクとしばしば同一視される事もある。アッカド人はこの神をシャマシュと呼んだ。
 ヤーウェに対立したため後にキリスト教によって、悪魔の地位におとしめられる。ベルフェゴールと同一とする説もあり、悪魔払いの祈祷師たちは人々にとりつく悪霊をしばしばケモシの名で呼ぶ。
 戦勝祈願のために、人間が捧げられたこともあった。

     ナラギリ 《Naragiri》  出身地:スリランカ
 スリランカの悪象の大王。インド本土では象は聖なる獣で、決して悪い者はいない。しかし、これがスリランカになると悪者の象が登場するのだ。ナラギリは、こうしたヒンドゥ側からみた象の魔物の王なのである。

     パチャカマク 《Pachachamac》  出身地:ペルー
 魚の姿をとって現れる、太古の創造神。「大地をつくる者」と呼ばれる偉大なる大地の精霊にして、地震や予言を司る神とされた。パチャカマクは大地そのものではなく、大地から生を受けるすべての生命に対し、命と生きる活力を与える神としての役割を持つとされる。王の名前にも使われた。
 だが、その怠慢な性格により、人類最初の男を餓死させ、その妻が産んだ最初の息子も殺した。2番目の息子も殺そうとするが失敗し、代わりにその母を殺してしまう。後に2番目の息子の復讐にあい、海に落とされた。
 パチャママと呼ばれる、大地そのものを生み出すとされる女性神を妻に持つ。
 インカにおいても邪神であり、人を惑わすとされる。

     ミシャグジ神 《Mishaguji shin》  出身地:日本
 信濃地方における土地精霊と見られる原初の神で、大和政権が入り込む以前から諏訪大社によって祀られていた神である。たたり神とされる。
 昔はミシャグジ神の託宣を伝えるために選ばれた神主を、年に1度の託宣を終えると殺してしまうということが公然と行われていたようだ。しかし国譲りで建御名方神が諏訪に逃げてきてからはこのような信仰は行われなくなり、建御名方神信仰が中心となっていった。
 7本の杉の柱を立てたものと、7つの石を依り代とする。御神体は元々石の棒で、これは男根を表していた。



  7)死神
 人々を死に誘う霊界の使徒。あらかじめ定められた寿命に基づいて、一生を終える人の前に現れ、肉体から離れた霊魂が迷うことなく霊界にたどり着くよう冥府より遣わされた魂の案内人。魂を連れていく側面のみが強調され、邪悪な存在となるものも少なくない。


     モト 《Mot》  出身地:シリア
 フェニキア神話の死と荒廃を象徴する冥界の神。砂漠の象徴たる暑さ、不毛さ、乾燥、死、そして地下の世界はモトの領域とされる。『ウガリトの粘土板文書』においては、彼は神の子であり、バール、あるいはバールの子アレイオンと戦う英雄、あるいは元を同じくする双子であるとも分身であるとも言われる。
 フィロ・ビブロスの伝えるフェニキアの天地創成神話では、大気と混沌から風と欲望が生まれ、このふたつが卵の形をしたモトを生み、モトが割れて、太陽、月、星が飛び出したとされる。
 モトは、生命を休ませることによって得られる安らぎを「死」によって与える神であると考えられており、豊饒とならない季節を大地に与えることによって、次の命を養えるだけの力を大地に授ける植物神として崇拝されていたと言われる。

     ケルヌンノス 《Cernunos》  出身地:北欧
 ドルイド僧に崇拝された、冥府を司るとされるケルト神話の獣神。その名は「角を持つ者」を意味する。狩猟と多産も司るとされ、牛や羊の頭に、人間の胴体と蛇の足を持ち、雄鹿の角を生やした姿で表される。
 地下の世界、あるいは死後の世界を支配する者であり、生と死の間にある扉を導き開く者であるとも言われる。また、豊饒の神でもあるとされるが、これは死を刈り取り次の生へとつなぐ死神としての役割が共通するためであろう。

     ゲーデ 《Ghede》  出身地:ハイチ
 黒い山高帽に眼鏡をかけ、燕尾服を着た姿で、死者の通化する「永遠の交差点」と呼ばれる、死者の魂が神々の住家である場所へ向かう道に立っているとされる。死を支配すると同時に生をも支配すると言われており、生物を養って数を増やし、死者を生き返らせるということを繰り返している。
 ゲーデは、死者となった人間の知識を手にすることができるため、何よりも賢い神であるとされた。また、死者を守護する者として、ブードゥー信者の墓石には、ゲーデに関する名が刻まれるという。

     チェルノボグ 《Tchernobog》  出身地:ロシア
 ロシアの悪神。「黒い神」の意。黒、すなわち夜と闇を支配し、悪を司る。地にいては破壊を司る者とされ、死者の神でもあった。天に住み、光と昼を司る善神ベロボーグ「白い神」と対立する存在である。
 光と闇、善と悪といった対立二元論の世界は、隣国ペルシアのゾロアスター教における光明神アフラ・マズダと暗黒神アンリ・マンユに近い。しかし、アンリ・マンユが数多くの臣下を従えているのに対し、チェルノボグの臣下の伝承は残念ながら残っていない。スラブ神話は成熟期に入る前に、キリスト教によって排斥されたためである。
 チェルノボグは人に不幸をもたらすという能力ゆえに、しばしば人に呪いをかける際にその名を唱えられるという。

     アンクウ 《Ankuu》  出身地:フランス
 つば広帽を被った骸骨で、手には大鎌をもっており、馬車に乗って現れる。この死神を見たら、近いうちに誰かが死ぬとされる。

     タナトス 《Thanatos》  出身地:ギリシア
 ギリシア神話における「死」を意味する神。ニュクスの息子で、ヒュノプスの兄弟。
 定められた寿命の尽きた人間の元に現れ、まずはその髪を一房切り取って冥界の王ハデスに捧げる。それが終わると今度はその人間を連れて行くのである。
 黒いローブに身を包み、「死を招く剣」を携えて、人々の間を歩くと言われる。

     ヘル 《Hel》  出身地:北欧
 死者の国を治める女神。ヘラとも。ロキと巨人の女アングルボザの間に生まれ、半身が赤く半身が青い怪物だったので、オーディンによって地下に投げ下ろされ、冥界ニフルヘル(またはヘルヘイム)の女王となったという。

     ペルセポネー 《Persephone》  出身地:ギリシア
 ギリシア神話。ゼウスとデメテルの娘。「コレ(娘)」とも呼ばれる愛らしい乙女で、オーケアノスの娘たちと野原で花を摘んで遊んでいたところ、突然目の前の大地が裂け、その裂け目から現れた冥府の王ハデスにつれ去られた。ペルセポネーはハデスの妃となり、冥界の女王になったという。
 豊饒の女神でもあったペルセポネーがいなくなると、たちどころに大地は彼果ててしまう。それを悲しんだ神々の声を受け、ペルセポネーは1年の3分の1を地上で暮らすことにした。その間は、大地に豊饒が蘇るようになったという。

     イシュタム 《Ishtam》  出身地:メキシコ
 中南米はマヤの自殺の神。首にロープを巻き、自殺者さながら、ぶら下がった姿で現れる。首吊り自殺した死者や聖職者、戦死した者、いけにえの犠牲者などの魂を、「宇宙樹ヤシュチェの木陰」という心地よい楽園へと導く案内役。


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