IV.飛天族



  1)大天使
 神に仕える天使たちのなかで、高位の者たちである。その役目はさまざまであるが、それぞれがセフィロトを守る役割を負い、神に極めて近い存在である。一般的には優美なイメージがあるが、神の命を忠実に実行する者として、破壊神のごとき力をふるう天使もいる。


     サタン 《Satan》  出身地:イスラエル
 名は「敵対者」という意味である。教義的には非実在、非本質、反神的、不自然の力とされる。元来は天使たちの中にあり、人間を試すために遣わされ、そこで罪を犯した者を主に報告し、告発する役目を持っていた。
 一般にサタンはルシファーと同一視される。天に在ってはルシファーであり、地に堕ちてサタンということである。キリスト教でのサタンは、誘惑者としてエデンの園でイヴに知恵の実を食べるように勧めた蛇であるとされる。サタンが「古き蛇」と呼ばれるのはこのためである。ルシファーもまた、もともと人類に知恵をもたらす光の天使であるので、こうした混同はされやすい。
 しかし、サタンの起源をエジプトの邪神セトに求める説もある。セトもまた蛇に変身し、エジプトの主神たちに立ち向かったという共通点がある。また、元来階級の低かったサタンの名は、「セトの犬」という意味の「セト・アン」から来ているとも言われるので、この説も一概に間違っているとはいえないだろう。
 人知学ではサタンはゾロアスター教(古代ペルシア発祥)の暗黒神アンリ・マンユ、英語でのアーリマンと同一とされ、その本性は怜悧にして実利のみを追求し、功利主義者であるという。つまり、資本主義社会はサタンに支配されているというのである。

     メタトロン 《Metatron》  出身地:イスラエル
 天使階級上級第1位・熾天使(セラフ)。天界の書記であり、神の玉座に最も近い場所に立つものだとされている。ユダヤにおいて、ミカエルを凌ぐ最も重要な天使。天使の中で最も偉大と言われる。「神の顔」「契約の天使」「天使の王」「万物の創造主」「小ヤーウェ」など、さまざまな呼称を持つ。
 他の天使たちが「御使い」の意味の「エル《el》」の名がつくのに対し、メタトロンだけが例外であるのも、彼が特別な存在であるからであろう。そしてそれだけにさまざまな神学上の解釈がなされており、実に謎の多い天使である。
 メタトロンは最高位の熾天使に数えられるが、異説も多い。ある伝承によれば、メタトロンは血に飢えた天使であって、自分に背く人間を喜々として何百人も串刺しにして、苦悶のうちに死なせてしまうという。ゆえに、メタトロンはしばしばサタンと同一視され、天上界に在ってのサタンの姿とされる。あるいはまた、メタトロンの前身は『創世記』に登場するエノクだとされている。さらに数秘術によれば、メタトロンは神霊シャダイと同じ運命数を持つ。つまり両者は同一だというのだ。

     ウォフ・マナフ 《Wolvh manahu》  出身地:ペルシア
 ゾロアスター教。光明神アフラ・マズダに次ぐ神格とされるが、同時にアフラ・マズダの「善意」そのものと解されることもある。天界においては、アフラ・マズダや他の天使と同様、黄金の玉座に座り、天界に登ってきた義者の魂を最初に出迎える。
 人間の善悪の記録をつける者であり、死後の魂の行く末を決定する立場にあるとされ、天国そのものを「ウォフ・マナフの住居」と呼ぶこともある。
 後世においては、動物の守護霊とされる。

     スラオシャ 《Sraosha》  出身地:ペルシア
 ペルシア神話の聴取と従順の神。ゾロアスター教では人々の苦しみを光明神アフラ・マズダに伝える役目を持った、第1級の天使。ゾロアスター教では、死んだ人間の魂は死体の回りを3日間さまようものとされるが、その間、魂を悪魔から守護するのはスラオシャの役目だとされる。
 ミスラ神、ラシュヌ神と共に冥界で魂の裁判を司る天使であるともいわれ、魂の善悪を判断する天秤を用い、魂の行き先を決めるとされている。

     サンダルフォン 《Sandalphon》  出身地:イスラエル
 ユダヤ伝承で、メタトロンの双子の弟とされる。メタトロンとともに人間の魂が危機に陥ったとき、魂の背後に立つ天使であるとされ、また全世界の鳥を監督する立場にある天使でもあるとされる。
 カバラ主義では、「暗い天使」マルクトに位置し、「明るい天使」と呼ばれるメタトロンとは、対をなす存在とされる。予言者エリアの転生した姿ともいわれる。

     ミカエル 《Michael》  出身地:イスラエル
 天使階級下級第2位・大天使。大天使たちの長である。太陽の化身とされ、人間を支配する。名には「神のごとき者」「神に似る者は誰か」などの意味がある。
 キリスト教では最も偉大な天使とされる。というのも、『ダニエル書10』において、月の化身であり誘惑の蛇でもある、「古き蛇=魔王サタン」を屠る者としての存在であるからだ。異教に対するキリスト教の勝利を意味するのがミカエルであり、彼の持つ剣や槍なのである。主の実戦力として最も信任篤く、また死者の魂の善し悪しを計るという役目を持つ。
 ルシファーの反乱軍を退けた功績により、現在は4大天使のうちに数えられ、天使長として事実上天使たちの最上位階級に就いているようだ。
 美術では若い男性として描かれ、西洋では9月29日を記念日(ミカエルマス)としている。

     ウリエル 《Uriel》  出身地:イスラエル
 天使階級下級第2位・大天使。名の語源は「神の火」に由来し、タルタロス(地獄)を支配する。地獄の業火は、火山の火口に擬えられ、神の火はその噴火である。炎の属性を持ちながら地の属性を与えられたのは、火山に結び付けられたからだろう。地獄でのウリエルは閻魔大王さながらに、汚れた魂をさんざん拷問で苦しめる。このように法に関してひどく厳しい天使であったと言われる。
 最後の審判の時には、地獄の門の閂を折り、地上に投げ付けて破壊し、地獄から死者の魂を地上に導き出すという役割を持っている。
 現在は4大天使のうちに数えられる。

     ラファエル 《Ruphael》  出身地:イスラエル
 天使階級中級第3位・能天使。4大天使のうちに数えられる。北方を支配し、風の属性を持つ。熾天使としての6枚の翼を備え、その階級を持っているが、天使学によれば力天使という説が一般的である。しかし同時に智天使、主天使、力天使にも属し、古くは大天使であった。
 名の意味は「癒しの天使」または「神の薬」であり、医療と結びつくことから、蛇にも結びつけられる。さらにギリシアのヘルメスのイメージに重ねられ、ヘブライの冥界シェオルに人の魂を導く役も与えられている。
 4大天使の中で、最も慈愛に満ち、穏やかで、明朗快活な性格である。

     ガブリエル 《Gabriel》  出身地:イスラエル
 天使階級下級第3位・天使。4大天使のうちに数えられる。東方、または財宝や富を支配する。名は「神の力」「神の人」を意味する。水の属性を表し、タロットカードでは最後の審判のラッパを吹き鳴らし、死者を復活させる天使として描かれる。また、背徳の街ソドムとゴモラを焼き尽くしたのはこのガブリエルである。
 『新約聖書』において洗礼者ヨハネの出現をザカリアに告げ、聖母マリアに受胎告知をしたことで、キリスト教徒には親しみ深い天使である。また、イスラム教徒にとっても、『コーラン』をモハメッドに書き写させ、そしてモハメッドを怪獣アルボラクに乗せて天国へ運んだ天使として、おおいなる尊崇を受けている。

     アールマティ 《Armati》  出身地:ペルシア
 ゾロアスター教の最高神アフラ・マズダの神徳を示す7人の大天使(アムシャ・スプンタ)のひとりで、女神である。女性的な倫理における敬虔さや献身を表す。大地を統括し、家畜に牧場を与える天使とされる。

     カマエル 《kamael》  出身地:イスラエル
 天使階級中級第2位・力天使。戦いの天使。名の意味は「神を見る者」。能天使を率いて天国の門を護る、一種の鬼神である。赤い鎧と剣をおびた、火星の象徴を持つ猛々しい天使だ。
 カマエルの指揮の下には、「破壊」「罰」「死」などの144000にもおよぶ天使たちが控えており、神の掟に逆らう者や堕天使に対しても鋭く目を光らせている。その破壊的な性格は、カマエルは多くの悪魔を引き連れた地獄の男爵であり、赤い豹の悪魔でもあるという説もあるほどである。

     イスラフィール 《Ysrafeel》  出身地:イスラム
 音楽を司る天使。4枚の翼をもち、地に足がついた状態で天を突き抜けるほどに巨大な姿をしているという。
 イスラフィールの主な役目は地獄の監察である。昼と夜に3回ずつ地獄で苦しむ人間を見ては、巨大な涙を落として行く。神が地獄での罰をやめない限り、涙を流し続けるのだという。また、終末を告げる7つのラッパのうちの一つを吹く天使でもある。

     サリエル 《Sariel》  出身地:イスラエル
 死の天使であり、死霊たちを監視している。モーゼにさまざまな知識を与えた天使とも言われる。
 サリエルの姿は矮人であり、月の性質の秘密を知っており、そのために堕天したとも言われる。彼は無言で優美に天より離れたという。

     アズラエル 《Azrael》  出身地:アラビア
 4つの頭と4枚の翼を持つ、イスラム教の死を司る天使。全身にすべての人間と同じ数の目を持ち、それが瞬くたびにひとりの人間が死ぬという。
 モーゼの要請を受けたアラーに命じられたアズラエルは人間の生きる長さを60年から70年に決めたという。

     クシエル 《Kusiel》  出身地:イスラエル
 処罰の7天使のひとりである。「厳しき神」の意。炎の鞭でもって国家を罰する。破壊の天使たちはその性格のため、しばしば悪魔の仲間に入れられる。しかし、この天使の名は、確かに神の役割を代行するものである。

     メルキセデク 《Melkisedec》  出身地:イスラエル
 キリスト教グノーシス派の人々に崇拝された平和と正義の天使。聖杯とひとかたまりのパンを象徴する。キリストが人間にとっての救世主に過ぎなかったのに対し、メルキセデクは天使にとっての救世主であることから、キリスト以上に偉大であるとまでいわれた。
 厳密にいえば、大天使ではなく力天使であったとされる。メルキセデクはもともと人間で、エルサレムの王であり司祭であったと伝えられている。

     ライラ 《Lailah》  出身地:イスラエル
 ユダヤ伝承の天使。懐妊を司っており、もっぱらその役割が夜間であるためか、夜の天使とされる。赤子となる魂を母体に誘導し、自身の未来に関する知識を失わせる。

     オファニム 《Ophanim》  出身地:イスラエル
 天使階級上級第3位・座天使。エゼキエルの前に現れた天使。名の意味はヘブライ語で「輪」の複数形であり、天球を表すと考えられる。
 通常の天使とは容姿が大いに異なる。4つの顔、4枚の翼、直線的な足を持ち、足の裏は子牛のようである。4つの顔は、牡牛、獅子、鷲、青年の顔で、それぞれ占星術の金牛宮、獅子宮、天蠍宮、宝瓶宮を表している。その形状は青銅のようにメタリックに光り、1対の車輪を持ち、燃える炭火の様であったという。

     ラグエル 《Raguel》  出身地:イスラエル
 「神の友」の意。「光の世界の復讐者」として知られるが、その意は堕落に弱い天使たちを監視し、罪を犯した天使を糾弾する警察官のような働きをすると考えられている。
 中世の暗黒時代の教会会議では「聖人と偽って地上を歩いた」として、ウリエルと共にザカリアス教皇に糾弾されたが、現代の正当な神学では愚かな過去の世迷い言からは解放されている。

     ハニエル 《Haniel》  出身地:イスラエル
 天使階級下級第1位・権天使。美の天使であり、磨羯宮を支配する。「神の優美」という意味である。
 愛の星・金星と深く関わる天使とされ、女神イシュタルと同様の働きをする。人々に愛の心を沸き上がらせ、若い男女を愛の絆で縛るという役割を持つ。邪悪な者を打ち破るための護符を作る時にも、術者を護る働きをする。
 堕天使として扱われることもある。

     カズフェル 《Kazphel》  出身地:イスラエル
 南を支配する天使。どちらかというと、堕天使として文献に登場するほうが多いようである。

     ヴィクター 《Victor》  出身地:アイルランド
 ケルトの地アイルランドに布教した守護聖人パトリックに、啓示をもたらした天使。陰ながら布教に助力したといわれている。

     ザフキエル 《Zafkiel》  出身地:イスラエル
 天使階級上級第3位・座天使。人間が必要な知識を、的確に扱えるかどうかを監視する目であり、さらにそうした人間に知識を与え、正しい道に導くのだ。
 座天使の長であるが、智天使の上に位置するとも言われる。

     ラミエル 《Ramiel》  出身地:イスラエル
 主の御前に控える7大天使のひとりであり、彼らの指示を広めるという役割を持っている。彼の伝える言葉は、人間にとって幻視(ヴィジョン)の形で現れる。
 最後の審判の時に、どの魂が救われ、どの魂が救われるかを知っている。そして救済される魂を導く役割を持つという。

     ファレグ 《Phaleg》  出身地:ギリシア
 月や太陽など7つの惑星を支配するオリンピアの霊の一員。このグループは天使とされることもある。その中でファレグは火星を支配する。

     ニケー 《Nike》  出身地:ギリシア
 古代ギリシアの勝利の女神。神々が巨人族と戦った際、神々に味方して貢献した。ローマでも信仰された女神だが、死に打ち勝つ象徴としての存在に変化した。



  2)天使
 唯一神の手先となって働く天使たち。一般的に翼が生えた女性の姿を思い浮かべることが多いが、実際には男性的である。9つの階級に分かれ、それぞれがさまざまな役割を受け持っていて、一概にその性格を表すことはできない。また、必要があれば武器をとって敢然と戦う。


     ケルプ 《Chelup》  出身地:イスラエル
 天使階級上級第2位・智天使。ケルピンとも呼ばれる。普通1対で登場し、ヘブライ語の複数形でケルビムという。「知識」「仲介者」の意。4本足で立ち、4枚の翼と4つの頭を持つとされるが、実際のケルプの彫像はグリフォンに似た姿をしていることが多い。
 普段彼らは神の戦車を引いたり、神の御座を運んだりしているが、エデンの園を護ると言われる天使として名高い。岩のような外見で微動だにせず、永遠に門を見張るのだという。同様のゲートの守護者たち、すなわちスフィンクスやライオン、牛などとも同一視され、日本の狛犬にもつながっているのだろう。

     ソロネ 《Solone》  出身地:イスラエル
 天使階級上級第3位・座天使。神の正義を象徴する。燃える車輪の姿で描かれることが多い。

     ドミニオン 《Dominion》  出身地:イスラエル
 天使階級中級第1位・主天使。天使の勤めを統率する役割を持つ。上級の天使たちが天界でのみ働くのに対し、中級天使は霊界と物質界をつなぎ、コントロールする。主天使はその最高位にあり、これによって物質界の支配者としての権威も持っているのだ。その名も「支配」を意味し、物質界に現れる神の権力と栄光を示す存在である。

     ヴァーチャー 《Virtue》  出身地:イスラエル
 天使階級中級第2位・力天使。名は「高潔」「神の美徳」を意味する。マイト(万能者)とも呼ばれ、ギリシア語ではデュミナス、ヘブライ語ではタルシシムという。体を持たない精霊であり、「光り輝く者」「輝かしき者」として知られる。
 キリストの受難を表しており、それを象徴する赤い薔薇を持った姿で表されることが多い。キリストの昇天の際には、キリストの両側にふたりの力天使が付き添って、彼を天まで案内したという。
 力天使は恩寵の天使であり、奇跡を起こして、人に天からの恵みを授けるという役目を持つ。

     パワー 《Power》  出身地:イスラエル
 天使階級中級第3位・能天使。名は「神の力」を意味する。勝利の天使であり、世界を支配しようとする悪魔の軍勢に対抗する役目を持っている。完全に武装した姿で天の通路を巡回し、悪魔の侵入に備えている。
 能天使の重要な使命は、中級天使全体の使命でもあるのだが、対立するものを調和させ、均衡させることである。バランスを保とうとするために、能天使は他の天使に比べてとりわけ善悪の間で揺れやすい性質を持っている。天使が離反して堕天使になった際、最も反逆した者が多かったのはこの能天使である。

     プリンシパリティ 《Principality》  出身地:イスラエル
 天使階級下級第1位・権天使。ギリシア語ではアルカイという。権天使は個人よりも大きな単位の存在を守護する。国家の運命を司る天使であり、プリンスダム(公子の国)と呼ばれたが、次第に支配する領域が広がってゆき、文明の盛衰や世界の歴史も権天使の司る範囲となった。文明を監視する者として、信仰の擁護者としての役割も持つようになる。
 信仰を護るという性質上、権天使は少々頑固ともいえるほどの厳格な善悪の観念を持っている。

     アークエンジェル 《Arch Angel》  出身地:イスラエル
 天使階級下級第2位・大天使。最も有名な天使たちがこの階級に属しており、ミカエル、ウリエル、ラファエル、ガブリエルの4大天使は、本来この大天使であると言われている。
 大天使の役目で最も重要なものは、神の意志を使者として人に伝えることである。いわば人間と神の間に橋渡しする存在であり、人間にとって、位がより高い天使たちよりも身近な存在に感じることは自然なことである。
 天界における戦士でもあり、悪魔たちの軍勢と戦う際には、大天使らが天の軍勢を率いた。『黙示録』において、神の御前に立つ7天使も大天使であると言われている。その7天使は前述の4大天使に加えて諸説があり、メタトロン、ラミエル、サリエル、アナエル、ラグエル、ラジエルの内の3天使とされている。
 古くは最も位が高かったが、キリスト教が階級論を変更し、それに伴って位が下がった。

     エンジェル 《Angel》  出身地:イスラエル
 天使階級下級第3位・天使。一般的に流布している天使のイメージは、この階級の天使のイメージである。カバラの説に従えば、この天使の総数は301655722にものぼるとされる。個人個人の人間の生命に責任を持ち、罪のない人間や正しい者の守護を担う。
 本来天使に性別はないが、守護天使となると守護している者と反対の性別の傾向を持つようになる。

 天使の階級(ヒラエルキー)
 上級天使 熾天使(セラフ)-メタトロン、セラフィム   全ての天使を統率する
      智天使(ケルプ)-ジョフイエル    エデンの門を護る
      座天使(ソロネ)-ザフキエル     人間に知識を与え、正しい道に導く
 中級天使 主天使(ドミニオン)-ザディケル    天使の勤めを統率する
      力天使(ヴァーチャー)-カマエル    人に天からの恵みを授ける
      能天使(パワー)-ラファエル     対立する者を調和させ、均衡させる
 下級天使 権天使(プリンシパリティウス)-ハニエル  国家、文明、歴史を守護する
      大天使(アークエンジェル)-ミカエル    神の意志を人間に伝える
      天使 (エンジェル)-ガブリエル    人間個人を守護する



  3)堕天使
 かつては天使だったが、唯一神との戦いに敗れて魔界へと堕とされてしまった。善悪という考え方はなく、あくまで自分の利益になるかが行動の基本原理である。いわゆる悪魔のイメージに最も近く、ソロモンの王に封印された魔神たちが多い。


     ゴモリー 《Gomory》  出身地:エジプト
 ソロモンの霊72柱の魔神の内で唯一の女性である。黄金の冠を頭に乗せた美女で、真紅の流れるような髪に錦糸細工の黒ビロードと純白のレースを羽織っている。別名「吟詠公爵」。魔法の鞭を携え、多数のヒキガエルを従えてラクダに乗った姿で現れる。過去と未来を見通す力があるが、おぞましい醜女に化けて、召喚者を試すこともあるという。

     アドラメルク 《Adlamerk》  出身地:
 地獄の王の衣装部屋係。ラバの姿や孔雀の姿をとることがある。

     ムールムール 《Moolmool》  出身地:イスラエル
 ソロモン王に封印された72柱の魔神の一。「座天使の侯爵」と呼ばれ、また30の大軍を率いる地獄の大公でもある。緑の鎧をまとい、グリフィンに乗った姿で、侯爵の証しである冠をかぶった姿で現れるという。
 哲学とネクロマンシー(死霊を操る術)を得意とする。

     ペイモン 《Pamon》  出身地:イスラエル
 ソロモン王に封印された72柱の魔神の9番目。地獄の王であり、ルシファーの忠実な僕。「主天使の王」と呼ばれ、女性の顔をした男性の姿で、宝石をちりばめた王冠をかぶり、ひとこぶラクダに乗って現れるという。
 科学、芸術、秘術に関する造詣が深く、それらの知識を一瞬にして人々に分け与えることができるとされている。ペイモンを味方につけた人々は、努力を必要としなくなるという。

     フラロウス 《Fralows》  出身地:
 豹の姿で現れるデーモンの大侯爵。ハウレスともいう。ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。かつてはパワーの地位にいた。
 召喚三角形の中にいる間は偽りの言葉しか口にしないが、未来の知識や他のデーモンに対抗する方法を知っている。また、魔術師の要求する敵全てを炎に包んで消滅させることもできる。

     フルーレティ 《Frulety》  出身地:
 地獄の副将。氷を操るデーモンで、自由に雹を降らせることができる。
 夜に行動することが多く、夜中に行う仕事ならどんなものでも片付けてしまう。昼間は寝ているのに優秀なプログラマーは、この悪魔の助力を得ているのだろう。

     サマエル 《Samael》  出身地:イスラエル
 ユダヤの堕天使。「赤いドラゴン」「死の天使」などの名前で呼ばれるデーモン。人類をある期間支配する「火星」の化身でもある。また、サマエルはサタンと同一視されることもあり、アダムたちを誘惑した蛇もこのサマエルと言われている。
 炎を吐く地獄の猟犬ヘル・ハウンドを配下に持つ。かつてはアークエンジェルであった。

     アガレス 《Agares》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神である地獄の公爵。地獄の東の領域を治める、偉大な大公である。鰐を始めとするさまざまな異形の生き物にまたがって、腕に鷹をとまらせた老いた賢者の姿で現れる。召喚した者には、言葉の知識を授けたり、逃亡者を召喚した者のもとへ連れ帰ってくることができるという。

     アブラクサス 《Ablaksas》  出身地:エジプト
 もとはグノーシス派の至高の存在であったが、キリスト教正統派によって堕天させられた。頭が雄鶏、下半身が蛇という姿で、鞭と盾を持つ。アブラクサスは物質界を創ったが、最後の審判の日にはこれも消滅させるとされた。
 アブラクサスの姿は、魔よけの目的で、しばしば宝石や石に刻まれた。魔よけそのものをアブラクサスの石と呼ぶこともあったという。

     ダンタリアン 《Dantalian》  出身地:イスラエル
 ソロモン王に封印された72柱の魔神の一。異相の公爵と呼ばれ、その顔は常に老若男女さまざまな風貌に変化している。
 右手に1冊の分厚い本をもっており、その本にはありとあらゆる生物の過去現在未来の思考が、ダンタリアン以外には読めない文字で書かれているという。科学と芸術に詳しく、人の心の内を映し出して他人に見せることができる。

     マルコキアス 《Malchokius》  出身地:
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。翼の生えた、炎を吐く狼の姿で現れる。人間の姿をしている場合は優れた闘士であり、あらゆる質問に誠実に答えるという。
 天上にあってはドミニオンであった。間もなくその地位に復帰するため、悪行を行おうとはしないという。

     ガープ 《Gaap》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神であり、「エノクのデーモン」のひとり。2本の角を生やし、蝙蝠の翼を持つが、召喚された時は4人の王を伴った人間の姿をとって現れる。西方の王とされ、パイモンと共に西を支配している。
 人と人との間の憎しみをあおったり、逆に愛情をかきたてることができる。

     オセ 《Ose》  出身地:
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。巨大で優美な豹の姿で現れ、人間を思う通りの姿に変えてしまうデーモン。また、人間に妄想や狂気をもたらしたり、全ての隠されたものや秘密を暴くこともできる。

     ボティス 《Botis》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。蛇の姿で現れ、命令されると大きな歯と2本の角を備えた人間じみた姿に変身する、「醜悪伯」などと呼ばれるデーモン。地獄の総裁とされるが、伯爵か大公にすぎないともいわれる。
 過去、現在、未来についての知識をもっており、そのことを問いかけると、無遠慮に答えるとされる。

     ネビロス 《Neviros》  出身地:アフリカ
 デーモンの監察官。全ての金属、石、植物、動物を見分け、未来を予測することができる。また、どんな人間でも好きに傷つけることができ、その死体を操る屍人使いとしての腕も一流である。

     バルバトス 《Barbatos》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとりで、狩人の姿をした、30の地獄の軍団の先頭に立つ伯爵もしくは公爵。灰色のマントと緑の帽子を身につけている。隠された財宝を見つけたり、過去や未来の知識を与えるという。またすべての生き物の泣き声を理解している。
 かつてはヴァーチャーだった。

     ベリス 《Berith》  出身地:シリア
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとりで、地獄の公爵。性格は残虐で拷問を好む。古傷に覆われた顔をして、黒いあごひげを蓄え、金の冠をかぶり、赤い鎧を着て、真紅の馬にまたがった騎士の姿で現れる。
 彼は二重人格で、そのうえ二枚舌なので信用できないとも言われるが、召喚した者が上手く命じられれば、過去と未来、錬金術に関する正しい知識を授けてくれるという。

     バフォメット 《Baphomet》  出身地:アイルランド
 サバトを支配する悪魔の王。その姿に定説はないが、一般的には角の間に五芒星を抱き、烏の翼を持ち、人間の女性または両性具有の体を持つ山羊の姿で描かれる。
 テンプル騎士団に崇拝されていたと言われるが、これはフランス国王と教会が、強大な経済力を持ったテンプル騎士団を陥れ、その財産を強奪するために仕組んだ奸計であり、完全なぬれぎぬである。
 バフォメットは、現代の黒魔術でもサバトの山羊として、悪魔と人間の仲介者の役を負う。

     ハルパス 《Halpas》  出身地:イスラエル
 ソロモン王に封印された72柱の魔神の一。「死と破滅の伯爵」と呼ばれる。血のように赤い目の闇のように黒い鳩の姿で現れ、死臭を漂わせ、しわがれた声で話すという。
 建築の能力を持ち、願えば軍備や武器に満ちた砦や城塞を建設する。地獄の大伯爵であるとされ、人に戦いの技を授けるとされているが、人肉を主食とするため、人間にはあまり友好的ではないようだ。

     アラストール 《Arastor》  出身地:ギリシア
 地獄の死刑執行人。元はギリシア神話の海神ネレウス息子。義父に妻を奪われたため、復讐した。

     プールソン 《Purson》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。ライオンの頭を持つ、巨大な男の姿をしたデーモン。熊にまたがり、手には蛇をつかんでいる。過去と未来の秘密を教えてくれる。
 人間の姿をしているときは空気のように軽やかで、また衣装に気を使う性格らしくその時代のものしか着ないとされる。

     デカラビア 《Dekarabia》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。五芒星形の姿で現れるが、魔術師が望めば人間の姿を取ることもある。
 植物や石に隠された力についての知識や、鳥の形をした使い魔を与えてくれる。

     ビフロンス 《Bijrons》  出身地:イスラエル
 命令があるまでは常に魔物として現れるデーモンの伯爵。占星術や魔的な石や薬草などの知識をもたらす。また「死者の伯爵」と呼ばれ、能力の高いネクロマンサーでもある。
 墓石の上に火を灯すという。

     エリゴール 《Erigor》  出身地:イスラエル
 アビゴルともいう。ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。真っ黒な鎧をまとった黒騎士。漆黒の馬に乗り、ランスを右手に持ち、左手には王杓か毒蛇を持つ。
 召喚した者に、愛とそれに伴う戦いや争いをもたらす。

     レオナルド 《Leonardo》  出身地:イスラエル
 魔女を取りまとめるデーモン。山羊の頭を持つ男の姿で描かれる。バフォメットと同一視されるとも、インキュバスの変身した姿とも言われる。

     ベテルギウス 《Beatylgius》  出身地:ローマ
 映画『ビートルジュース』で道化た悪魔として登場する。映画に登場するアメリカンのティーンエイジャーたちはベテルギウスと発音することができず、ビートルジュースと言ったのだ。このベテルギウスは、蝿に化けたり、巨大な化物に化けたりと、さまざまな変身能力を持つ。
 「ベテル」はペテロと語源を同じにする、ギリシア語の「石」という意味である。

     オロバス 《Orobus》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。馬の頭部を持つ人間の姿で現れるデーモン。現在、過去、未来についてのいかなる質問にも答え、呼び出した魔術師に威厳と好意を与える。敵の嘘を見抜くために、あるいは未来の予測をするために魔術師から頻繁に呼び出されていたようである。

     マルファス 《Marphas》  出身地:
 ソロモンの霊72柱の魔神のうちの39番目。巨大なカラスの姿を持つ、地獄の大総裁。建築の力を持ち、願えば塔や城塞を築いてくれる。

     シトリー 《Sitry》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。様々な野生動物の頭を持つ羽の生えた人間の姿で現れる。愛や情欲にかかわる全てのことを支配する力を持つ。シトリーを呼び出した魔術師は、彼の望むどんな女も自由にすることができる。また、美しい女性に変身し、劣情を満たしてくれるともいう。

     フォルネウス 《Forneus》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。海の怪物の姿で現れるデーモン。あらゆる芸術、科学、言語に関する知識を授けてくれる。敵の寵愛を得る力を持っており、そのため敵の多い魔術師たちから頻繁に呼び出されていたようである。

     ガミジン 《Gamijin》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。小さな馬、あるいはロバの姿で現れるデーモン。死者の霊を自由に操り、またあらゆる教養学にたけ、質問に答えてくれる。

     オリアス 《Orius》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとり。巨大な馬に乗るライオンの姿で現れるデーモン。手には2匹の蛇を持ち、尾も蛇でできている。
 オリアスは自分を呼び出した魔術師に無報酬で占星術を教えるとされ、人間を魔術師の求める姿に変える力も持っている。また、敵を和解させる力も備えている。

     アンドラス 《Andorus》  出身地:イスラエル
 ソロモンの霊72柱の魔神の内のひとりで、デーモンの侯爵。鳥の頭を持つ天使の姿をしていて、剣を持ち、狼に乗って現れる。人々の間に不和といさかいを起こし、完膚なきまでの破壊を行う。

     ニスロク 《Nisroc》  出身地:イスラエル
 地獄最高の栄養士、蝿の王ベルゼブブの料理長とされるデーモン。かつてはエデンの禁断の果実の番人をしていたこともあり、地獄でもその実を使った料理を作る。

     シャックス 《Shacks》  出身地:イスラエル
 ソロモン王に封印された72柱の魔神の一。「略奪候」と呼ばれる。大きなコウノトリの姿をしており、しわがれたきき取りにくい声で話すという。人の目や耳や口を使えさせなくしたり、隠れた財宝を捜し出すことに長けているとされる。

     ガギソン 《Gagyson》  出身地:イスラエル
 「ばらまく者」という意味の名を持つ悪魔。元来はヘブライの疫病神だったと思われる。『アベラメリンの魔道書』によれば、オリアスの支配下にある低級の悪魔である。

     メルコム 《Melchom》  出身地:イスラエル
 『地獄の辞典』の著者コラン・ド・プランシーが、地獄で公務員の給与支払い係を務めるデーモンにつけた名。

     セエレ 《Seele》  出身地:イスラエル
 ソロモン王に封印された72柱の魔神の一。「願いの貴公子」とも呼ばれる。氷のように冷たい視線と、トウモロコシ色をした長髪の男性の姿をしている。グリフィンのような翼をもつ銀色の馬にまたがって現れるといわれている。
 盗みの技術に長けているとされ、召喚者が望むものを世界中のどこからでも一瞬にしてもってくることができるといわれており、幸運を導く存在として考えられた。

     ウコバク 《Ukobach》  出身地:フランス
 英語ではウコバチ。炎に包まれた姿で現れる悪魔。蝿の王ベルゼブブから、地獄の窯の火を絶やさないように、窯に油を注ぎ続ける役目を任されている。
 『地獄の辞典』の著者コラン・ド・プランシーの創作とも言われる。

     ストラス 《Storas》  出身地:イスラエル
 目の回りが赤く、銀の爪を持つ悪魔。召喚されると、カラスの姿で現れる。薬草や石の魔術的な効果や占星術の知識を持ち、質問すれば正直に答えてくれる。


[TOP] [目次] [索引]