関令尹

関令尹 関守の尹喜というのは周の大夫であった。方術予言の学に精 通し、いつも物の精を服んで栄養とした。人柄を秘して修行につとめたので、当時は誰ひとりこれを知るものがなかった。老子が西へ旅したとき、 尹喜は早くもその前ぷれの気配を占って、大人物の通過すべきことを察知し、何者ならんと気を配って待ち構えていたところ、果して老子を発見し た。老子もまた尹喜が非凡な人物であることを認め、ために書を著わしてこれを授けた。のち老子とともに砂漠を旅し、西域の人になってしまっ た。胡麻の実を食用としていたが、彼が結局どうなったかは、まったく不明であった。尹喜もみずから九篇の書を著述し、書名を『関尹子』と称し た。

『列仙伝』より