鍾離権

唐代の仙人。呂洞賓の師。鍾離覚・和谷子・雲房先生・正陽子・正陽真人とも称する。燕 台の人、一説では京兆咸陽の人。漢に仕えて諫議大夫となる。漢の滅亡後曹魏に仕え、その後西晋に仕えて将軍となる。ある戦いで敵味方とも壊滅 し、単身で逃走中、山中である老人に出会い、昇仙の志を発して老人から長生真訣・赤符玉篆金科霊文・金丹火候青龍剣法を授かる。一説では、早 くから昇仙の心を抱いていた所、華陽真人王玄甫に会い長生訣を授かり、ついで、太乙刀圭火符・内丹洞暁玄玄之道を伝えられ、得道したという。 唐代になって、科挙に落第して長安にいた呂洞賓と出会い、終南山に連れ帰って道を授ける。後に羊角山に隠れ住んだ。呂洞賓に授けた書として 『鍾呂伝道集』『秘伝正陽真人霊宝畢法』の二つがあり、また『破迷正道歌』なる書も伝わっている。しかし、いずれも本人の自作とは考え難い。 後世、鍾離権は呂洞賓と共に八仙の一人に数えられ、民衆の間に親しまれている。また、全真教でも甘河の遇仙で、王重陽に口訣を授けた神仙とし て、五祖の一人に数えられ、特に重要視されている。しかし、鍾離権の実在については、その伝記に矛盾も多く歴史上実在の人物であったかどうか 疑わしい。