※ 作者より : これは2001年4月1日のトップページ用に企画したものです。「エイプリルフール」と銘打っていますが、単なる冗談ではありません。画像は実際に「レンズつきフィルム」で撮影したものです。
鉄道写真の条件とは?
鉄道写真は基本的に動体写真であり、高速性能が必要とされる一方で、高画質への要求も非常に高い分野だ。一昔前は明るい単焦点レンズは必須だったし、ISO64 の Kodachrome 64 Pro (PKR) や ISO50 の FUJICHROME Velvia (RVP) が低感度なのにその解像度の高いことから好まれていた事実からも理解できる。
で、それがさらに進行していって、高級機と大口径レンズでないと鉄道写真は撮れない、そんな風潮が漂うこともなんとなく否定できない。鉄道趣味誌に載っている撮影データでは一目瞭然だ。好撮影地に集まるカメラを眺めても、Canon EOS-1 シリーズなんて結構見るし、Nikon F5, F4 も然り。最近は PENTAX 67 といった中判さえよく見かける。レンズも同じで、EF70-200mm F2.8L などはそれなりに嵩(かさ)も値も張るレンズだが、カメラの集まる場所で目にしないことはないくらい、とてもポピュラーだ。
かくいう私もだんだん高級機、大口径へとシフトしていっているのだ。当然ながら「もっと良い写真を撮りたい」という欲求の帰結である。機動性などの問題からなんとか35mm機にとどまってはいるけれど。
でも、そうまでしないとよい鉄道写真は撮れないのか? 一眼レフにポジじゃないと鉄道写真とは言えないのだろうか?
[両方とも]栢山〜富水 |
ここに並べた写真は、片やレンズつきフィルム (ネガ)――いわゆる「使い捨てカメラ」、片や高級一眼レフ、大口径ズームレンズにリバーサルフィルムで撮られたものである。どっちがどっちか、即座に判定できますか?
意外に撮れるんです!
レンズつきフィルムというと、最近だと35mmくらいのレンズでフラッシュつき、フィルムはISO400〜800というのが定番だが、中にはユニークな商品も存在する。鉄道写真を撮ったら面白いだろうな、と思った以下の3商品を使って撮影してみた。
- フジカラー写ルンです 望遠800 (富士写真フイルム)
- 撮りっきりコニカ もっとMiNi 標準+パノラマ (コニカ)
- フジカラー写ルンです Golf (富士写真フイルム)
フジカラー写ルンです 望遠800
レンズ | f=100mm F9.5 |
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シャッター | 1/125秒 |
フィルム | FUJICOLOR SUPER 800 (ISO800) |
撮影枚数 | 27 |
主な用途 | 屋外でのスポーツ観戦 |
インプレッション
だいたい焦点距離30mm〜50mmくらいで、記念撮影に適しているレンズつきフィルムの中で、この製品は100mmとかなりの望遠タイプといえる。前面のレンズ位置が高いのが特徴で、内部で光路を折り曲げて長焦点を確保している。
以前標準と望遠で切り替えられるようなタイプもあったような気がするが、定かではない。
晴天用に絞りこめるようになっているのも特徴で、f9.5, f15 の二つが選べる。円の絞りをスライドインさせるのは、ミノルタTC-1などでもとられた手法。小絞り時にはファインダー内部が青く色づく。
なお、このモデルは最近になってISO1600(!!) のフィルムを採用するマイナーチェンジを受けている。
撮影結果
シャッター速度1/125秒。走行写真を普通に撮ってはブレるのは確実なので、流し撮りをやってみた。
栢山〜開成 |
これが意外にも(?) イケてるので感心した。例えばこのカット、一眼レフと望遠ズームを振り回して何度もチャレンジしつつ、なかなか納得のいく画を撮るに至っていないアングルなのである。
右のPNG画像を見るとわかるが、号車番号札からロゴの細かい文字までしっかりわかる。実のところこれはかなり傾いてしまって補正したことを白状せねばならないが、それを差し引いてもISO800フィルムとしてはかなりの実力だ。周辺の画質もかなりのもの。L版のプリントだけをぱっと見せられたら、それがレンズつきフィルムで撮られたとは考えもつかないのではないかと思った。
評価
一回ずつ撮ったきりであまり大きなことも言えないが、初見の印象も大事だろう。5段階評価で、☆は星1/2。
星 | ★★★★− |
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コメント | 予想をはるかに上回る切れの良さ、レンズつきフィルム侮りがたしという気にさせた一品。 ISO1600までいくと画質的に若干気になるところだが? |
撮りっきりコニカ もっとMiNi 標準+(ト)パノラマ
レンズ | 詳細データなし |
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フィルム | KONICACOLOR CENTURIA 400 (ISO400) |
撮影枚数 | 24 |
主な用途 | スナップおよび風景撮影 |
備考 | フラッシュ内蔵 |
インプレッション
35mmフィルムの上下をマスクして36×12mmの横長パノラマ写真を作る方式は、「コロンブスの卵」的発想で一世を風靡し、一眼レフタイプでも採用するモデルが多かったものの、最近は下火になったのか、あまりこのタイプの「パノラマ」を前面に押し出すことはなくなった。もともとが無理やりな発想でもあり、当然の帰結ともいえる。レンズつきフィルムでも一時期フジ・コダック・コニカが並んだが、現在店頭には元祖のコニカが残るのみだ。
形はオーソドックスなレンズつきフィルムの流れを汲む。前面のパノラマスイッチを切り換えると、ファインダー像もきちんと上下マスクが出る。まあ、この程度の連動は当然だろう。
撮影結果
改めて説明するまでもなく、鉄道車両というのはかなり横長な「ハコ」である。パノラマサイズにうまくおさまるものだが、さて……。
[上]海老名〜厚木 [下]開成〜栢山 |
「ちょっと画質が悪いなあ」というのが最初の感想である。流して撮っているからある程度ブレるにしても、周囲での乱れがかなりひどくボケボケというかホゲホゲである。L版ではなんとかごまかせてもパノラマだと破綻してしまうようだ。標準サイズのも合わせて見てみたが、静止した被写体でも左側がボケてみえる。フィルム浮きが発生したのだろうか。
ISO400なのだがいまひとつシャープさを感じないのはレンズのせい? フィルムの性能? これで風景をパノラマで撮って、出来上がりを見て感動できるかなぁと思ってしまう。
とはいえ、大伸ばしクラスのプリントはそれなりに迫力がある。カメラを振って撮影したらきちんと背景が流れて動感もまずまず。
やはり元の画面サイズが小さすぎるのが難点。35mmでこれではAPSのPプリントなんて想像しただけで……。35mmフルサイズのパノラマ切り替えカメラ (FUJI TX-1) も出ているけど、かなり高いしレンジファインダーということでそうそう気楽に手を出せるものではない。ここはひとつレンズをもうちょっと大きくして「写ルンです(撮りっきりコニカ/スナップキッズでも可) フルサイズパノラマ」とか、出ないものですかねえ。パノラマオンリーでいいから。
評価
「パノラマ」での評価。
星 | ★★☆−− |
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コメント | 期待があっただけに、ISO400でこの画質だとちょっと…… レンズ・フィルムのさらなる性能アップに期待する。 |
フジカラー写ルンです Golf
レンズ | f=22mm F9.5×8 |
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シャッター | 1/250秒 8連写 |
フィルム | FUJICOLOR SUPER-G ACE 800 (ISO800) |
撮影枚数 | 15 |
主な用途 | ゴルフでのフォームチェック |
備考 | ハイビジョンサイズ |
インプレッション
「ゴルフコンペの景品に!」と触れ込みのあるこの商品は、その名前と外装を見れば分かる通り、ゴルフのショットを連写して撮れるカメラである。その速さ、1秒間に約8コマ。Nikon F5 と肩を並べる超高速カメラ……というのは半分だけ本当。これは約1コマ (ハイビジョンサイズ、と言っている) を8分割し、つぎつぎに連写して写しこんでいるのだ。
外観は非常にユニークで、レンズが8個並んでいる。シャッターボタンを押すと、その8個のレンズシャッターユニットが次々とレリーズされるのだ。コンパクトカメラにはもっとすごい16連写というのも見たことがある。
これを含め3つのカメラは、いや、レンズつきフィルム全般だろうが、みなプリワインド = フィルムをパトローネに巻き込んでいくタイプである。出来上がったネガは上下・コマ番号が逆だ。
シャッターボタンを押すと、「チュチュチュチュチュチュチュチュ」と8回のレリーズ音が聞こえる。一眼レフと違い像消失もミラーショックも無いので、被写体ををしっかり追える。
撮影結果
撮影した日は曇からしだいに雨も降り出すという、ただでさえレンズつきフィルムには厳しい条件。パッケージにもしっかり「日陰や室内では明るさが不足するため、おすすめできません」と断り書きがある。そんな中で無理やり撮ってみたのだが……。
鶴川〜玉川学園前 |
これはびっくり、しっかり撮れているではないですか。ネガも十分濃く、ISO800のラティテュードの広さで十分カバーできている。
ワイドサイズにプリントするため、フジカラーラボ送りになってしまい納期がかかってしまうのが欠点といえば欠点。が、コマがワイドなのではなく、これまた上下をマスクしていたのだった。
撮像もファインダーも小さいので、しっかり撮らないとフレームアウトや手ブレを簡単に起こしてしまうが、うまくいけば連写の威力を十分に認識できる。
現在この商品は富士フイルムのWWWサイトには載っておらず、残念ながら店頭からも消えてしまっている。
評価
星 | ★★★☆− |
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コメント | 8連写の威力だけでも★3つ。 他に例を見ない商品なので、ISO1600にすればより活用範囲もひろがるのに。 |
まとめ
これらの結果を持ってして、レンズつきフィルムが鉄道写真に使えるかというと……実に微妙なところである。まあ、同等品にはならないだろう。しかし、片や重量2kg超、もう一方は100gちょっと。お値段でも片や30〜40万円コース、片や千円ちょっとである。無理して重い機材を使って、必ず良い撮影ができるかと言うとそうでもないし……。
リュックに詰め込んだ機材を背負って歩き回るのは、趣味の延長としての健康維持と言えなくもないが、一方でポケットに小さなカメラを放りこんで散歩気分でいくのも、また精神衛生によろしいのではないかと思う。