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今月の表紙から / 2001.12
AiAF Zoom Nikkor ED 18-35mm F3.5-4.5D (IF)


ズームレンズ躍進

最近、一眼レフに単焦点レンズがついていることの方がめずらしくなってきたように思える。事実、ズームレンズの広角端は35mmから28mmそして24mm、望遠域は105mmから200mmそして300mmにまで広がり、「一本で風景から運動会まで」の高倍率ズームが単焦点レンズを凌駕、駆逐しつつある。レンズを交換してさまざまな画角を得るのがレンズ交換式一眼レフのあるべき姿、ズーム一本で済ませるのは……と言ったところでしかたなし、時代の趨勢はズームレンズ主体になっているのは各社ラインナップや新製品を見るまでもない。

最近顕著なのは、20mmより広角域を含むズームレンズ、いわゆる「超広角ズーム」が安価に出まわるようになってきたこと。従来は単焦点レンズの独擅場(どくせんじょう)であったところだが、設計の進歩によるところが大きいと見られる。広角域では焦点距離1mmの違いも画角に大きく影響を与えるということもあり、多少の暗さもくつがえすパフォーマンスが光る。室内など引きの取れない場所での威力はまさに一目瞭然。

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Night Drive (山形自動車道 2001.9 協力 : 上野晃生)
[Nikon F70, AF ED 18-35mm, RDPIII]
展望電車 (青梅線 2001.10)
[Nikon F5, AF ED 18-35mm, RDPIII]

これまで私の手元にあるレンズは単焦点24mmが最広角だった。動体写真が主なので明るさを重視していたためである。しかし広角ズームの魅力も捨てがたい。発売以来コンパクトさに注目していた AFニッコールの超広角ズーム 18-35mmをとうとう手に入れてしまい、これで画角の広がりは100°(18mm) から5°(500mm) に広がった。


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デジタルカメラD1の登場で広角域の重要性が高まったためか、あるいは他社からも超広角ズームがラインナップされてきたためか、ニコンは1999・2000年と相次いで超広角ズームレンズを登場させた。ひとつは超音波モーター内蔵の大口径ズーム AiAF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)。つづいてリリースしたのがこの 18-35mm である。

ボディモーターでフォーカスリングは常に回転する。IF方式でフォーカシングによる伸縮はない(ズームでは伸縮する)。フィルター径は 77mm、花形フードは 17-35mm と共用。

AFニッコールになってから一部の大口径(高価格帯)レンズを除いてプラ鏡筒が採用されているが、これは使い込むと表面がテカテカと光ってしまう。歴戦の証明といえばそうかもしれないが、質感としてはよろしくない。そこで……なのか、最近のニッコールレンズには「レザートーン塗装」と称する、これまでより細かいちりめん状の塗装がレンズ価格帯を問わず施され、つや消しに仕上げられている。

鏡筒に書かれている文字は距離計も含め、今までと字体が異なるゴシック体になり、色も白から銀色になっている。絞り環の文字だけが従来の字体で残るのがかえって違和感を感じさせるくらい。全体的になんだかEFレンズに似てきたなあ……と思ったら、当のキヤノンEFは時を同じくして字体を替えた、のだった。あまり気づかないところだが、鏡筒下部には今まで出てくることの無かった「Aspherical (非球面)」「IF (内焦式)」といった製品およびレンズ・ガラスの特徴、「φ77mm」とフィルターサイズが書かれている。

これら新デザインは一部 AF-S 17-35mm および1999年発売の AiAF Zoom Nikkor 28-80mm F3.5-5.6D <New> で採用されている。評価は分かれるところだが、Aiニッコールなどにしても初期のオートニッコール時代とはまったく違うわけだし……というところ。

重量は 17-35mm の1/2、価格は1/3。どのカメラにも合うが、F80クラスのボディと組み合わせて散歩気分でいきたいレンズだ。


100°の世界へ

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秋風 (東京・青梅市 2001.10) [RDPIII : 20mm, 1/400s, f/5.6]
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光 (東京・奥多摩町 2001.10)
[RDPIII : 18mm, 1/160s, f/5]

コスモスの花をワイド域で撮ってみたが、正対したのではなんだかつまらない。そこで下から見上げるように構えてみた。実は斜めにフレーミングしているが、あまりそう感じないのが興味深い。

最短撮影距離はズーム全域で 0.33m、17-35mmF2.8 の 0.28m との差は 5cm。なんでもない距離のように見えるが、近接域でこの差は実に大きい。だからマクロレンズとして使おうとするとがっかりさせられるかもしれない。同クラスの他社製品と比べたらそれでも一歩リードしてはいるのだけれど。

100°ともなると容易に逆光状態になりうるわけで、その性能もおろそかにできない。太陽を入れてフレーミングしたが、ゴースト・フレアは全く感じられなかった。逃げるより積極的に光を入れて行きたいところだ。順光でも油断は禁物、うっかりすると自分の影を入れた写真を作ってしまいますよ。


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青空・稲穂・ディーゼルカー (上野尻-野沢 2001.9)
[Nikon F5, AF Nikkor ED 18-35mm 3.5-4.5D (IF), RDPIII : 20mm, 1/800s, f/4.5]

広角で近寄りすぎると被写体の形が大きく歪むので、箱物である鉄道写真ではあまり好ましくない。しかしすこし引いて、空を大きく入れた構図を作ると、あまりおかしくなく表現できる。非電化区間で架線や柱などがないから、すっきりとまとまった。


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残照 (富水-栢山 2001.10)
[Nikon F5, AF Nikkor ED 18-35mm F3.5-4.5D (IF), RDPIII : 20mm, 5s, f/13]

2001年12月表紙は夕暮れ時の足柄平野。走り去るロマンスカーEXE、ブロンズ色の車体が色を失う寸前のところでとらえてみた。

三脚に据えての長時間露光。シャッター時間が長すぎると雰囲気が出ないし、短すぎると潰れてしまう。あたりがどんどん暗くなるので露光時間の選択が難しかった。

と、本当はこれともう一つ別の意図もあったのだが、この写真でもいい雰囲気が出来るのでそのまま使った。何を考えていたのかは、ナイショ。(笑)


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