「地域版かいものガイド」を作りませんか


 この文章は、全国版のかいものガイド「地球にやさしい買い物ガイド」(講談社94.12)の第5章の元原稿です。 全国の50のスーパーをくまなく調査し、ランク付けを含めた調査結果を載せていますので、ぜひ手にしてみてください。(もう手に入らないかな?)

 全国の調査はなかなか企画が大変ですが、自分の周りのお店を調査することは比較的簡単にできて、楽しみもたくさんありますよ。


全国版と地域版でセットに

 この全国版のガイドブックでは、大手のスーパーや生協などの利用客の多いお店を調査していますが、自分の家の周りにこのような有名なお店があるとは限らないかもしれません。たとえ○○スーパーが環境にとってもいいと言われても、何時間も車を走らせて買い物に出かけるわけにはいきませんよね。普段買い物に出かける範囲の中で環境にいい商品を買えたり、環境にいい取り組みができれば、それに越したことはありません。環境に取り組んでいるお店というのはここに乗せられているような大手のスーパーばかりではないということだけは知っておいて下さい。この本には載せきれなかったお店の中にも、立派に取り組んでいるお店がたくさんあります。

 残念ながらこの全国版では日本中の全てのお店をくまなく調査することはできませんから、別の本にその役をお任せするしかありません。その役割を持ったグリーンコンシューマーのガイドブックが「地域版かいものガイド」なのです。これは地域に住んでいる人の視点から、身近にあるスーパーや生協などのお店を一軒一軒回って品揃えや取り組みを調査して作られたもので、普段買い物にでかける範囲のお店は全て揃っています。これさえあれば、行き付けのお店の中でどのお店が一番“環境にいい”のかわかりますし、普段の買い物の中でどうグリーンコンシューマーできるのかのヒントになるでしょう。いままでにも、全国の数ヶ所で地域版のガイドブックができています。またこれから作ってみようという企画が持ち上がっている地域もいくつかあります。

 まだまだ全国を網羅するまでに至っていませんが、「わたしの住んでいる地域にはない」と言って落胆する必要はありません。いかがでしょうか、他でもない自分の住んでいる地域の話ですから、自分たちの手でガイドブックを作ってみてはどうでしょう。お店の調査を通じて直接お店の人と話をすることができますし、きっといい協力関係を作っていく事もできます。

 地域版が作られはじめたのはここ2〜3年ですが、調査に回った様子では、自分の店で取り組みをしたいと考える店長さんが増えています。実際に品ぞろえなどで取り組みをはじめているお店も多いのですが、なかなか十分宣伝されにくく、どのお店が本当に頑張っているのか分からないというのが現状です。せっかく頑張っているお店があるのですから、そのようなお店を紹介することで励ます価値はあるでしょう。

 また、自分の地域の中に環境にいいことをしたいと考えている人がいても、どのお店が環境にいいのか、どんなものを買ったらいいのか分からなくては、不十分です。きちんとした情報を提供することで、グリーンコンシューマーの仲間を増やすことができます。

 地域のお店と、買い物客。お互い環境にいいことをしようとしても、すれ違いではもったいない話です。そのつなぎの役割をする地域版のガイドブックをぜひ作ってみましょう。


地域版かいものガイドの作り方

 本を作るというとたいそうな事のように思うかもしれませんが、最近は自費出版も増えてきているように、意外と簡単に作れるものです。名古屋市版のように学生だけで本を作ってしまった例もあります。

 企画から本の発行まではおよそ1年間。役に立つものをつくるために、じっくり腰を据えて取り組んでみましょう。

  1. 一緒に作る仲間を集めましょう
  2.  せっかく地域版を作るのであれば、面白いと思ってくれる人はできるだけ巻き込みたいものです。中心になって作業に関われる人数は数人で十分できますが、あとあと調査をしたり、編集をしたりと人手が必要になってきますので、呼びかけられるところは呼びかけて仲間の輪を広げておくと楽です。

     特に環境問題関連の市民団体や、消費者団体、婦人団体などが必ず声をかけましょう。参考になる話を聞けたり、もしかしたら何人か興味をもって関ってくれる人もいるかもしれません。

  3. どんなガイドブックにするか
  4.  「かいものガイド」といっても、無料で配るパンフレットから、本屋で販売する本の形まで、いろいろ作られています。グリーンコンシューマーの話をすると、本にしても書ききれないほどですが、一方で、できるだけ多くの人に読んで知ってもらう意味で、自由に持って行けるパンフレットにも捨てがたい意味があります。スタッフの力量や、どれだけ寄付金が集まったかなどを考えて、どのようなガイドブックにするのかは話し合ってください。

     地域版の特徴は、身近に行き来ができる範囲のお店の情報が載せられているために、普段の買い物や生活の中でガイドブックを開いて参考にしてもらえるという点です。「牛乳をびんで買いたい」、「一升びんを回収しているお店は?」といったことを知りたいときに、ガイドブックを開いて情報が載っていると役に立つものです。

     ただ、調査した情報を一覧表にして示すのも一つ重要な点ですが、ポンと一覧表だけ出されてもどう使ったらいいのか困ってしまう人も多いと思います。グリーンコンシューマーを知ってもらうことも大切な目的ですので、「どのように買い物をしたらいいのか」のヒントを載せると使えるようになります。

  5. お店で何を調査するのか
  6.  調査する項目としては、その取り組みをすれば環境にいいこととして評価できる項目を選びます。どんなお店が環境にいいのか、理想のお店はどんなお店だろうかなど話し合ってみるもの面白いものです。

    およそ地域版では次の項目について調査しています。

     このほか、地域に特徴的な項目などを考えてみてください。京都市では、洗って何度も使えるリターナブルのペットボトルが流通していましたので調べました。

  7. どの範囲のお店を調べるのか
  8.  お店は電話帳から調べます。たいていはスーパーの項目にあるのですが、中には市場の中にあったりしますので、一応チェックしておきましょう。また、意外と電話帳に載っていないスーパーもたくさんありますから、近所の人に聞いて確かめたほうが確実です。

     どの範囲まで調べられるかは、協力してくれる人がどれだけいるのかに大きく関わってきます。市内全部を調べるというのは分かりやすいですが、中には遠く離れた集落にある場合もありますし、ちょっと調査が大変になってしまいます。

     また、一般のスーパーと同じ調査をすることは難しいのですが、商店街や市場といったところで買い物をすると、包装材などスーパーよりはるかに少なくてすみます。本当に環境にいい買い物は市場でこそできるのかもしれません。スーパーだけを調査して載せるとよもすればスーパーの宣伝になってしまいがちですが、こういったお店の話はできれば欠かさないようにしてください。

     もし調査する地域にチェーン展開をしているスーパーなどの本社がある場合には、環境問題に対する方針などを直接聞いてみるのも面白いでしょう。

  9. 多くの人に調査をお願いしましょう
  10.  気楽に知り合いに「調査をしてもらえませんか」とお願いしてみると、結構面白そうだと言って話に乗ってくる人が多くいます。調査のポイントなど説明するなかでグリーンコンシューマーについてより詳しく知ってもらうこともできます。せっかくの機会ですから、幅広く調査員を呼びかけてみたらいかがでしょう。引き受けてくれるといっても、各人それぞれの仕事があるでしょうから、一人にあまりたくさん頼むのは避けて、多くとも3〜4店程度にしてください。京都市の場合には、206店舗を調査するのにおよそ60人の人に調査員として協力してもらいました。

     なお、依頼するにあたり、こちらの意図に沿った調査をしてもらえるようきちんと説明する必要があるのは言うまでもないことです。

  11. お店に出かけて調査をしましょう
  12.  お店の調査にはできれば2人以上で行くようにしてください。複数人で調査をすると楽しいということももちろんありますが、調査もれなどがないようにお互いチェックしあうことが大切です。

     本来は電話で事前に連絡をして会う約束をしてから出かけるのが筋ですが、直接店長さんに話を聞く項目は2〜3問程度で長くても5分程度で終えてしまいますから、お店に出かけてその場で調査の意図を伝えたほうが話が伝わりやすい場合もあります。ただ、直接お店を訪ねたはいいけれど行ってみたら休業日だった、などという笑い話もありますので気を付けてください。また、大きなお店になると店長さんも忙しかったり、チェーン店の本社に許可を取る必要があったりしますので、事前に電話をする方がスムーズにいきます。

     店長さんに聞く項目の他に、自分でお店を見回って商品のチェックする調査をして、およそ30分から1時間程度で終える事ができます。

     さて、直接出かけるにしろ、電話で約束をとるにしろ、まずは店長さんに調査の許可をもらう必要があります。「お店の調査をしたい」と言うと、お店の人もあまりいい顔をしませんが、環境に取り組んでいる点を評価して多くの人に知らせるためという意図をきちんと伝えるとかなりのお店は調査に協力してくれます。

     この調査がやはりいちばん楽しい活動です。直接お店の人に会って話を聞こうというのですが、こんな機会はめったにないことでしょうから、いろいろ知りたいことを尋ねてみてはどうでしょうか。中には、野菜類のショーケースの電気を止めて電力使用量を半分にしたというお店もありました。また、ガイドブックで自分のお店を高く評価してもらいたいために、調査員にどうしたら環境にいい取り組みができるのかを逆に尋ねてくるお店もありました。話を聞くなかで、面白い発見もたくさんあるものです。

     普段の買い物ではなかなか気がつきませんが、環境にいい商品を探してみると意外なところに隠れてあるものです。小さいお店では「環境にいい」ことを宣伝して置くほどスペースが作りにくいのですが、他の商品にまぎれて、せっけん類が置いてあったり、有機農法によるお茶がおいてあったりするものです。見落とさないように気を付けて探してみましょう。

  13. 集計してみましょう
  14.  さて、何割のお店が牛乳パックのリサイクルをしていたのか、トレイの包装はどのくらいのお店でされているのか、集計をしてみましょう。環境への取り組みの現状がこれでよく分かるようになります。この値を他の地域と比較してみると、自分の住んでいる地域が環境の取り組みの点で、進んでいるのか遅れているのかといったこともわかってきます。 また、一つ一つの取り組みごとに点数をつけて、お店全体としての評価を決めることも可能です。ちょっとお店にとっては酷かもしれませんが、環境の取り組みを競ってもらうのにはちょうどいい指標になるかもしれません。

  15. 編集、出版しましょう
  16.  ページ作りをある程度印刷所に頼むこともできますが、お金もちょっとたかくついてしまいます。ワープロかパソコンがあれば、自分で編集作業をする事ができますので使える人は考えてみてください。

     実際に一覧表などを作る作業は、かなり手作業の部分も出てきますので、かなりミスもたくさん含まれるものです。いくら丁寧に作業をしても必ず出てくるものですから、調査票との照らし合わせをする時間もきちんと取っておいてください。このガイドブックは多くの人に見て使ってもらうものですから、信用を落とさないように、できるだけ正しい情報を載せるよう努力してください。

  17. ガイドブックができたらお店の人にも返しましょう
  18.  調査に協力してくれたお店にはできるだけガイドブックを返すようにしましょう。その結果をもとにお店の人に取り組みをしてもらうのも一つの役割です。「あなたのお店ではこことここを取り組むとよくなりますよ」などと取り組みのヒントをつけて送るとお店の人も信頼してくれるかもしれません。取り組みするかどうかはともかくとして、お店の人は結構調査の結果を気にしているものです。


地域版ガイドブックの取り組み

 92年、93年と京都で地域版かいものガイド「この店が環境にいい」を製作したのを契機に、その後、全国でこの取り組みが行われるようになりました。

 現在のところ、横浜市、兵庫県西宮市、金沢市、神戸市、愛知県東海市、東京都目黒区、東京都の多摩地域、川崎市、名古屋市などでガイドブックが作成されています。また、このほかにも取り組みを行おうとしている地域もあります。


ノウハウなどの協力をします

 作り方など短い中で十分書ききれなかった点も有りますので、問い合わせていただければより詳しい方法などをお伝えします。

 市民団体や婦人団体など非営利団体にて調査を行う場合には無償にてこちらのノウハウを提供させていただきます。なお、営利団体もしくは公共団体等にて調査を行う場合にはノウハウ等提供につきましては交渉させていただきます。

 いずれにしても、ガイドブックを作ってみたいと考えた方は、一度環境市民までお問い合わせ下さい。

環境市民
 京都市中京区寺町二条下る呉波ビル3F
 TEL 075-211-3521 FAX 075-211-3531


お問い合わせ、感想などありましたら鈴木(ysuzuki@mti.biglobe.ne.jp)まで。お気軽にどうぞ。

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