センターゼミ 1998.5.18 鈴木靖文

鉛とカドミウムのマテリアルフローからみた製品リサイクル

1はじめに

 鉛やカドミウムは人間及び生態系にとって有害な重金属であり、その製造や利用、処理処分にあたっては十分な配慮が必要とされる。しかし一方でこれらの金属は充電式電池等として非常に有用な機能を持っているため、家庭でも広く一般的に利用されている。有害性の観点から最大限回収を行う必要があるが、現状ではニッケルカドミウム電池の回収率は2割を下回っており、回収の仕組みが十分整備されているとは言い難い。

 家電製品が高機能化するに従って、より多くの製品に充電式電池が内蔵されるようになり、それらが意図しないまま廃棄されている危険性が大きい。こうして廃棄された鉛やカドミウムは、焼却炉もしくは管理基準の緩やかな埋め立て地で処理処分され、環境中へ排出されていることが考えられる。また焼却灰を再利用するにあたっては、大量に含まれる鉛やカドミウムが制約となっており、灰中の濃度を下げることが必要とされている。

 現在では焼却された灰を安定化する技術開発が進められ、環境中への排出を削減するのに大きく寄与しているが、本研究では中間処理に入るまでの重金属フローを削減する政策についての検討を行った。

1.1鉛の有害性について

 高濃度の暴露によって、記憶障害や貧血症になる。また低濃度の暴露でも、繰り返し暴露されると体内に蓄積され、疲れが出やすい、不眠になる、胃痛、便秘、頭痛、気分が悪いなどといった影響がでて、高血圧の危険性が増えるとされている。

 人体への吸収は、食物を経由してのものがもっとも多い。

 土壌中の鉛の正常な濃度の範囲は1530mg/gを示し、路傍の土壌では5,000mg/kgに達することがある。

 一般的には土壌中の鉛は、1,000mg/kg以下の濃度では植物に対する毒性は見られない。有機鉛化合物は水生生物に対して、無機鉛よりも一般的に10100倍の毒性を示す。食物連鎖を通しての生物濃編は極めて低く、しばしば1よりはるかに低い数値となる。

 排水基準は0.1mg/L、環境基準は0.01mg/L

1.2カドミウムの有害性について

 カドミウムの長期職業暴露は、肺および腎臓を主とする重篤な慢性影響を生じさせる。慢性的な腎障影響は一般集団中にも見られる。その他、カルシウム代謝の阻害、高カルシウム尿、腎結石の生成がある。高濃度のカドミウム暴露の大多数は栄養上の欠陥などの他の要因と共存し、骨粗鬆症および/または骨軟化症を発症させる。

 非喫煙者の暴露経路は大部分が食品経由であり、喫煙者の場合には喫煙による暴露がもっとも主要な経路となる。非汚染地域での暴露量は、数百μg/日以上になる。

 海水中におけるカドミウムの平均濃度は0.1μg/l以下である。河川の水は、1135ng/lの濃度範囲の溶存カドミウムを含んでいる。遠隔地で住民のいない地域での空気中のカドミウムは、通常1ng/m3以下である。汚染の知られていない地域での土壌中のカドミウム濃度の中央値は0.20.4mg/kgの範囲と報告されている。

 カドミウムは多くの生物類により容易に蓄積され、特に微生物類および軟体動物類では著しく、その生物濃縮係数*は数千のオーダーを示す。土壌無脊椎動物もカドミウムを顕著に濃縮する。大部分の生物類は、100以下の軽度から中等度の濃縮係数を示す。

 排水基準は0.1mg/L、環境基準は0.01mg/L

以上 世界保健機関・国連環境計画・国際労働機関 :国際化学物質安全性計画 環境保健クライテリアより

2日本における鉛とカドミウムのマテリアルフロー

 日本国内における鉛、カドミウムのマテリアルフローの推定については、複数の研究が行われている。ベースの情報としては、資源統計年報による金属生産・利用の統計、および蓄電池工業会による用途別の統計が用いられている。

2.1鉛フローの概要

 日本で生産されている鉛の量は年間48.6t1993年)にのぼり、その約8割が鉛蓄電池に用いられている。そのほかには、鉛管、はんだ、電線といった用途に用いられており、また鉛化合物は白から黄色の発色を示すために以前からペンキ等の顔料として用いられてきた。

 鉛蓄電池については、車の廃棄やバッテリー交換によって廃棄物が発生するが、その多くは事業者によって行われるため、リサイクルが比較的行いやすく、以前から高いリサイクル率を維持してきた。しかし、一部では個人でバッテリー交換を行えるように、カーショップ等でバッテリーの小売りを行っており、この場合のリサイクルについては特に制度が設けられていない。路地裏や山道などに不法投棄されているバッテリーが多く見受けられ、回収のシステムが明らかでないためにこうした事態が起こっていることも考えられる。

 最近はメンテナンスフリータイプの鉛蓄電池の割合が増えてきており、これは既存のタイプと鉛合金の形が違うために、単純にリサイクルできないことが言われている。既存のタイプでは安定化のためにアンチモンが数%含まれる合金が用いられていたが、メンテナンスフリーのタイプではカルシウムが用いられており、回収された蓄電池をメンテナンスフリーの蓄電池製造に用いるためには、アンチモンを除去する必要がある。

 家庭で用いられる物としては、塩化ビニルの安定剤として利用されているほか、買い物の時に渡されるビニール袋で、特に黄色のものについては鉛が含まれているものがあることが知られている。

2.2カドミウムのフローの概要

 カドミウムは年間2290トン生産され、その75%が蓄電池に用いられている。ニッケルカドミウム電池は、鉛蓄電池に比べて小型で軽量にでき、乾電池とほぼ電圧が似ているために、乾電池の代わりとして利用されている。使い捨ての乾電池に比べて、数百回充電して使えるためにエネルギー的観点からは有利であるが、カドミウムを利用している点で注意が必要となる。最近は、カドミウムを使わないニッケル水素電池がニッカド電池の代替品として出てきており、多少高価であることを除けば、容量も大きいなどメリットが大きく代替が進められている。またさらに高価ではあるが、重量あたりの容量が大きい蓄電池として、リチウムイオン電池が実用化されている。

 充電式の小型家電製品が増えており、ニッカド電池が使われているものが多い。またコンピュータ制御でデータを保持するために小型のニッカド電池が内蔵されている製品もある。

 ニッカド電池の回収システムは、電池工業界の呼びかけで動き始めているが、回収率は12割程度となっている。

2.3鉛・カドミウムフローに関する既存研究

■環境庁

 環境庁の行っている推定は非常にベーシックな推定となっている。統計情報のうち信頼性のあるものを用いて作成するとこうしたフローチャートとなると思われる。

 しかし、推定される鉛やカドミウムの廃棄量に対して、リサイクル・再生利用量が非常に少なくなっており、不法投棄や廃棄物処理フローに入っているものがかなりあることが予想されるが、これについては言及されていない。環境への負荷を考えるにあたっては、この量の把握が最も重要になってくると考えられる。

■ライフサイクル情報の整理(三菱総研)

 環境庁で推定を行っているフローに対して、環境中への排出を重視しており、各工程での排水・排ガスを介しての排出量を推定している。特に廃棄物焼却処理におけるマテリアルバランスにも注目しており、経済フローの全体を捉えている。

 ただしマテリアルバランスとしてはなかなか整合性のある情報として得られておらず、今後の検討が必要となっている。

3廃棄過程の鉛、カドミウムの挙動

3.1焼却灰として排出される鉛、カドミウムの量

 焼却炉で焼却された灰は大きく焼却灰と飛灰に分けられる。灰の発生量としては飛灰より焼却灰のほうが多い。鉛やカドミウムについては、金属としては比較的沸点が低く、また塩素化合物として揮発しやすいこともあり、飛灰中の濃度が高くなるのが一般的である。鉛およびカドミウムの灰中の濃度の平均値を表1に示す。

 鉛やカドミウムは焼却中に生成や分解をすることはありえないため、灰として排出される分は焼却前のごみに含まれるはずである。こうした焼却前後のマテリアルバランスから、焼却ごみ中に含まれる平均的鉛・カドミウム濃度が求まる。鉛はごみ1t(湿重量)中に301g、カドミウムは5gが含まれることになる。この時のごみの分別形態は、大型ごみのみを別回収しており、その他のごみはすべて焼却炉に入っている。

 日本から排出される都市ごみが約5000万トンであることから、年間家庭からは1.5万トン程度の鉛、250トン程度のカドミウムが排出されていることが推定される。ただし「燃えないごみ」もしくは「埋め立てごみ」として別回収を行っている自治体では、これらが焼却に回らないことも多いと考えられ、上記のすべてが焼却灰として出されているものではない。

 汚染されていない土壌の濃度と比較すると、鉛の飛灰中濃度で140倍、鉛のごみ中濃度で15倍、カドミウムの飛灰中濃度では400倍、カドミウムのごみ中濃度では25倍汚染されていることになる。

1 焼却前後の鉛・カドミウムのマスバランス
カドミウム
飛灰中濃度(mg/kg)
2,751(n=40)
88.2 (n=40)
焼却灰中濃度(mg/kg)
1,515(n=46)
4.2 (n=24)
焼却ごみ中濃度(mg/kg-湿ごみ)
301
5.0

濃度は貴田および廃棄物研究財団(京都市北清掃工場)の測定値

焼却ごみ中濃度は廃棄物研究財団の報告値

3.2京都市のごみ細組成調査における鉛、カドミウムの量把握3

 焼却灰として排出される鉛やカドミウムは、焼却ごみ中に含まれているはずであり、ごみ中の濃度を測定することができれば金属の量はバランスするはずである。

 京都市では、毎年ごみの細組成調査を行っており重量や体積について調査が行われている。その分類ごとに鉛とカドミウムの含有量を測定し、由来となる製品についての検討が実施された。特に鉛とカドミウムが利用されている可能性の高い製品については、さらに項目を細かく分けて検討を行った。

 この結果、ごみの細組成分類から求めたごみ中の鉛濃度は7.7gt-湿ごみ、カドミウム濃度は0.43gt-湿ごみとなり、それぞれ焼却炉から排出されている量の10%以下しか説明できないことが明らかになった。

 この原因として、組成調査を行っているサンプル量が約900kgであるために、少量でも高濃度で含有する製品が把握されない可能性が考えられる。たとえば鉛について、小型シール電池(鉛量400g)によって排出される鉛のすべてを説明するとした場合には、ごみ約1.3t中に1個含まれれば十分である。こうした少頻度で排出される製品については別の方法で推定する必要があると考えられる。

3.3USEPAによる廃棄される鉛・カドミウムの推定

 合衆国において、家庭で利用される製品に使用されている鉛とカドミウムの量を、生産統計から整理し、都市ごみ中へ廃棄される量を推定している。製品をベースに議論を進めているために、量的な把握がしやすく、生産量のトレンドを用いて計算をして2000年までの排出予測を行っている。

 各製品については、焼却されるごみであるか、されないごみであるか分けて評価が行われている。このインデックス中には、鉛蓄電池も含まれており都市ごみ中の主要な由来となっているが、「焼却されないもの」として分類されている。カドミウムについても、ニッカド電池が主要な由来となっているものの同じく「焼却されないもの」として扱われている。

 単純に日米の比較をするわけにはいかないが、カドミウムについては製品由来の把握でほぼ説明がつくものの、鉛については十分に説明ができていない。

2 USEPAによる都市ごみとして排出される重金属量の推定(1986年値)
カドミウム
金属総排出量(t)
193,783
1,622
焼却される金属量(t)
4,651
584
ごみ中濃度(mg/kg)
50.1
6.3

ごみ中濃度はEdwinらによる

3.4The WASTE Programの研究

 The WASTE Programによる研究の中で、カナダのバンクーバーにおける焼却炉での金属類のインプットとアウトプットバランスの調査が行われている。

 サンプリングは1991年に行い、2250kg168のカテゴリーに分けて重量と17種類の金属濃度が測定された。また10t/hの処理能力を持つ焼却炉を用いて、各プロセスから排出される灰の金属濃度を10回にわたって測定を行っている。

 また、焼却されるごみ中の鉛の由来として、鉛蓄電池が主要な原因とされているという記述がされており、実際に焼却炉に鉛蓄電池を投入して排出される灰の鉛濃度の変化を測定している。10回の実験の中で、投入されていると考えられる鉛量の4倍量の鉛蓄電池(100kg/4h)を投入した実験を1回行っている。同様にカドミウムについても投入実験を行っている。

 組成分析による濃度は、日本での調査に比べて全般的に高くなっており、特にプラスチック類や繊維、厨芥、草木類などで高い濃度が報告されている。(別表)

 鉛蓄電池の投入による調査では、灰として排出される金属量の増加がみられなかった(蓄電池を投入しても大気中に放出される量は増えないと結論づけている)。カドミウムについてはペレットとして投入している。

3 鉛とカドミウムの焼却前後のバランス(投入ごみ1tあたり)
カドミウム
Control
Spike
Control
Spike
投入量(g)
157
5,580
4.4
13
焼却灰としての排出量(g)
426
534
0.37
0.35
その他の灰としての排出量(g)
148
184
8.4
9.5
排出合計(g)
574
718
8.7
9.8

3.5鉛バッテリーが含まれる可能性について

 以下の理由で鉛バッテリーが焼却炉に混入している可能性があると考えられる。

 低濃度に鉛を含有する製品のインプットのみでは、焼却炉から排出される灰中の鉛量よりかなり小さく、鉛の要因として説明するのには不十分である。

 灰中における鉛濃度は最大値と最小値の間には100倍程度の差があり、他の金属の濃度分布に比べても差が大きい。低濃度の鉛源が偶然集中して高濃度になるとは考えにくく、高濃度の鉛源があることを仮定するほうが説明がつきやすい。

 焼却炉からアウトプットされる鉛の量を、1種類の製品でまかなうとしたら、どの程度の製品量が必要とされるのかを表4に示した。絵の具チューブおよびバイク用バッテリーでは、生産量が少ないためにこれだけでは不十分となる。またもし自動車用のバッテリーが主要な原因であるとすると、世帯から40年に1個排出される頻度であれば十分説明できることになる。

表4 灰中の鉛量を説明するのに必要な由来製品量
製品
絵の具チューブ
家庭用シール電池
バイク用バッテリー
自動車用バ

ッテリー
鉛含有量
10
800
1550
8300
g
生産量
582
21681
10093
200981
千トン
焼却炉の鉛をすべてこの製品で説明した場合製品の廃棄割合
2,577
69
149
7
%
同:何トンのごみ中に1個が混入しているか
0.03
2.7
5.1
27.6
tごみに対して1個
同:家庭でどの程度の頻度で排出されるか
0.04
3.3
6.4
36.8
年に1個

 卒論では、これらのバッテリーが焼却炉に混入するものとし、焼却炉の中で一定の混合が起こる場合に、どの程度の頻度でこれらの製品を投入することによって測定される濃度分布をもっともよく説明できるかをシミュレーションした。

 その結果、自動車用のバッテリーは焼却ごみ5080tに一つ、二輪車用のバッテリーは40tに一つ以下、家電用シール電池は20tに一つ以下含まれる組み合わせがもっとも確からしいことが明らかとなった。

(卒論では絵の具チューブによる寄与を含めているために、実際には家電用シール電池の頻度はもう少し大きくなることが予想される)

4鉛・カドミウムフロー制御の政策
 既存の法律では、直接口に入る可能性のあるものなど、規制が進められているものの、廃棄時点での問題から製品中の重金属量を規制したものは少ない。現在施行・検討されている法律のほか、重金属フロー制御に有効と思われる政策について、その効果について以下に検討した。

(1)家電製品リサイクル法

 現在国会では、家電製品のリサイクル法案が審議中である(衆議院を通過、参議院へ回される予定)。この法律では、指定された家電製品について販売店が回収を行い、製造業者がリサイクルすることとされており、容器包装リサイクル法に引き続いて業者責任が示されることになる。回収された製品のうち、一定割合(別途政令で定める)以上をリサイクルに回すことが義務づけられており、これを契機によりリサイクルを進めやすい製品設計が進むことも考えられる。この法律で大きな問題点として指摘されているのが、リサイクルを行うに当たっては多大な費用がかかり、その負担を消費者、業者、行政のだれが引き受けるのかという点で、現状では消費者(排出者)の負担とする方向で話が進んでいる。ただし高度のリサイクルを行った場合、冷蔵庫1台で1万円近くの費用となるために、その負担増の問題とともに、不法投棄が増えるのではないかと心配されている。

 法律では冷蔵庫、テレビ、エアコン、洗濯機の4種類のみを対象としており、蓄電池を内蔵しているハンドクリーナーやコードレス電話などの家電製品は含まれない。上記の4品目については基本的に蓄電池は用いられておらず、重金属に関してもっとも重要なものが抜け落ちている。

 基板に使われているはんだと、テレビのブラウン管に使用されている鉛ガラスについては、法律の中で環境排出を注意する項目として取り上げられているが、回収リサイクルを義務づけているものではない。

 現状では、約6割が直接埋め立てられ、残りの4割についても一部金属を回収する以外は埋め立てに回っている。シュレッダーダストは現状では管理型に埋め立てられているが、この法律が施行されることにより、直接埋め立てされていた6割についても、含まれる鉛が管理型に埋め立てられることが想定できる。

(2)容器包装リサイクル法

 リサイクルにあたっては、容器包装リサイクル法があるが、基本的に容器包装には鉛やカドミウムは少量しか含まれておらず、重金属の視点からは効果は少ないと考えられる。

 着色されたプラスチック製の袋や、塩ビ製の食品以外の容器については、鉛やカドミウムが使われていることが知られており、これらがリサイクルの障害となることも考えられる。

(3)食品衛生法

 食品に接する包装類については、鉛やカドミウムの溶出濃度について基準が設けられている。これらをもとに、塩ビ製品でも食品に直に接する容器等については安定剤として鉛を使用しないようになっている(自主基準?)。

(4)重金属を視野に入れた家電製品回収

 現在審議中の家電リサイクル法案は、自治体が回収するよりも引き取りなど既存の販売形態を利用したほうが回収がスムーズにいくことを視野に、大型家電についての回収システムが提案されている。しかし、基板などですべての家電製品に鉛が使用されており、また充電式電池については小型の製品に特に多く利用されている。こうした視点から、すべての家電製品を別途回収し、有害性を取り除く処理が行われると制度としてすっきりすると考えられる。

 消費者にとっても、家電製品という枠組みのほうが、認識を行いやすく、区別して排出することは容易であると思われる。

(5)充電式電池の製品表示・店頭回収

 業者の自主的取り組みによるもので、製品の中に充電式電池が使用されている場合には、その旨製品に表示を行い、販売店での回収を行っている。しかし現状では特に古い製品を中心に、消費者が認識できないものも多く、十分その機能を発揮しているとは言えない。リサイクルシステムとしても、特定の店舗での回収の場合には、自治体による分別回収荷比べて回収率が低くなるのが一般的であり、現状のシステムでこれ以上回収率を上げることは難しいと考えられる。

(6)ニッケルカドミウム電池の代替

 小型の充電式電池としてもっとも多く利用されているのがニッケルカドミウム電池である。小型のものでは、家電製品の時計のバックアップ用としても利用されており、取り出せないタイプも多くなっている。

 最近ではニッケルカドミウム電池よりも高性能の充電式電池が出回り、利用されている。ニッケル水素電池は、単位体積あたりの充電密度がニッケルカドミウム電池の2倍にもなり、軽量化が必要とされる製品では代替が進んでいる。また、コンデンサーの大容量化もすすみ、電池に匹敵する容量が作れるようになってきている。

 これらの充電電池は、価格が高く、性質も多少異なるところもあり、放置したままで代替が進むとは考えにくいが、政策的には十分視野に入れることができると思われる。

(7)鉛チューブ製品の鉛以外への転換

 絵の具のチューブや、薬品のチューブに鉛が用いられている。絵の具についてはプラスチック製のチューブのものも出回っており、代替が進むことが考えられる。

 EPAによると、合衆国での消費量は1969年をピークに減少している。

(8)鉛顔料の使用制限

 合衆国でも消費量は大幅に削減されている。鉛を使用せずにも他の材料を用いていくことも可能と考えられる。

(9)自動車・二輪車用バッテリーの個別販売規制

 自分でバッテリーを交換する目的で家庭に持ち込まれた場合、交換されたバッテリーの処理ルートが明確になっていない。このために、自治体のごみ回収や、不法投棄として出されているものが多いと思われる。不法投棄されているものの多くは、こうした個別販売を行っているものが主要な原因と考えられ、販売時点での規制が重要になる。

 購入者に対して回収協力の忠告をすることを前提として、個別販売する店舗では使用済みのバッテリーの回収する義務を負う、もしくは実際に回収を行っている施設と協力して自主的な回収ルートを整備していくことが効果があると思われる。もし回収リサイクルルートを確保できない場合には、販売を禁止することも視野に入れる必要があると思われる。

(10)自治体の有毒物回収

 現状でも有害物回収として、蛍光灯や充電式電池などを別途回収している自治体はある。鉛やカドミウムを含有する製品として、ペンキや塩ビ製品なども含めて回収し、適切に管理型処分を行うことにより、焼却炉へ投入される量が削減されると考えられる。


5重金属管理を視野に入れた政策シナリオとその効果

1.現状シナリオ

 家電製品は一般廃棄物に分類され自治体の回収義務がある。しかし大型家電製品についてはサービスとして販売業者が引き取ることも多い。ただしその多くは自治体の処理場へと持ち込まれることが多く、業者が自主的に処理を行っているのは排出量の6割程度であると推定される。

 鉛蓄電池については、基本的に交換がなされるために、使用済みの蓄電池は業者が回収することになるが、カーショップ等で個別に販売される蓄電池も多く、こうしたルートで販売されている物については、交換によって使用済みのものを回収することは少ない。駐車場や山道などにおいてバッテリーが不法投棄されている事例がおおくあるが、個別販売によって、処理がわからずに不法投棄するものも多いと思われる。また、一部は自治体回収の焼却炉に入っていることも考えられる。

 ニッケルカドミウム電池については、販売店の店頭での回収が行われるようになっているが、実際の回収率は12割程度と非常に低く、多くが廃棄されていると考えられる。特に製品に内蔵されているタイプについては、取り出し方が難しく、また古い製品についてはニッケルカドミウム電池が使われていることも明記されていないために、リサイクルするにあたっては大きな障害となっている。

2.家電製品リサイクルシナリオ

 家電製品リサイクル法が施行され、50%のリサイクルを実施した場合。その他の対策については、業界の自主的な努力に任せられ、充電式電池の回収や鉛蓄電池の回収も強制がされないものとする。

3.重金属管理を念頭に置いたリサイクルシナリオ

 法律に基づいて家電製品リサイクルを実施する他、自治体の回収区分に小型家電製品を含む有毒物の分類を追加する。有毒物の処理処分については安全を期する。

 また、鉛・カドミウムを使用した製品については、量を削減するもしくは代替品へ移行させるなどの取り組みによって削減することを制度的に行う。鉛蓄電池については自治体の有毒物分類で回収をするほか、販売店やガソリンスタンドでも無料で引き取りをするよう取り決めを作る。

5.1鉛・カドミウムフロー推定における仮定

 生産と廃棄の間のタイムラグや、家庭などへの金属類のストック増加などは考慮しない。生産された量がそのまま潜在的に廃棄される量として評価している。

表5 シナリオ設定による鉛とカドミウムの排出経路の変化(t)
現状シナリオ
家電リサイクルシナリオ
重金属管理シナリオ
カドミウム
カドミウム
カドミウム
家庭からの排出量
54,187
1,206
54,187
1,206
50,810
606
焼却処理量
14,447
244
14,072
244
3,795
63
埋め立て処分量
38,928
833
39,313
833
30,394
419

 バランスしないものについては、家庭排出からリサイクルした分にあたる。

 家電リサイクルのシナリオでは、重金属が焼却、安定型処分場へ排出される量を削減することはできないが、重金属管理シナリオにより大幅に削減することが可能になる。

5.2需給バランスから生起する問題

 亜鉛といっしょに産出されるカドミウムが世界的に余ってしまう可能性がある。しかし、現状ではカドミウムの需要が多く、比較的カドミウムを多く含有する鉱石から採鉱している。このためカドミウムの需要が減少しても、カドミウム含有量の少ない鉱石にシフトさせることで需要バランスをまかなうことができる。

 ただし将来的にカドミウムを使わない社会ができあがると、鉱石くずの中に大量のカドミウムが含まれることになり、鉱石くずを有害廃棄物として管理する必要があると思われる。


参考文献

増田剛、田中信寿ら:廃テレビ・冷蔵庫の回収実体および分解性・重金属溶出可能性、第8回廃棄物学会研究発表会講演論文集、pp183-185(1997)

吉田卓弥:資源・生産・消費・廃棄流れからみた日本の塩素・か性ソーダ需要構造の考察、京都大学院衛生工学修士論文、(1993

1 環境庁:有害物質を含む使用済み製品のリサイクルのあり方検討会(中間報告)(1996)

2三菱総合研究所:スクラップ需給動向調査(有害金属物質とそのリスク調査)報告書(1995)

3 廃棄物研究財団:有害廃棄物対策研究平成4年度報告書(1993)

4 USEPA: Characterization of Products Containing Lead and Cadmium in Municipal Solid Waste in the United States, 1970 to 2000 (1989)

5 Edwin A. Korsum and Howell H. Heck: Source and Fates of Lead and Cadmium in Municipal Solid Waste, J. Air Waste Manage., Vol.40 No.9 pp.1220-1226, (1990)

6 Waste Analysis, Sampling, Testing and Evaluation(WASTE) Program: Effect of waste stream characteristics on MSW incineration - the fate and behavior of metals mass burn MSW incineration study, (1993)

7 Charles E. Roos et.al.: Reducing Incinerator Ash Toxicity due to Cadmium and Lead in Batteries


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