4民生家庭部門

 この報告は、CASAの気候変動研究会で進められている研究の一部です。97年9月中に中間発表として、その他の分野も合わせてまとめて報告される予定です。2010年までに40%削減のシナリオを作ることを目的に調整が進められています。

 中間報告の中に含められる内容は、随時訂正が進められていますので、以下の文章を参考にする場合にはご注意ください。

1民生家庭部門からのCO2排出の状況




2民生家庭部門におけるCO2排出増大の原因−現状分析−

(1)世帯数の増加


(2)快適な生活を目的とした、家電製品の普及や大型化、建物の全館空調化の進行。


*レトルト食品化や外食化等によって、厨房でのエネルギー使用量はあまり増加していない。しかし、乾燥機(衣類、ふとん)などは大きな増加となっている。

*床暖房は住宅雑誌でも特集で取り上げられ、快適性の面から注目されている。しかし電気式の場合には電気料金が月あたり10000円(8畳一間、15時間通電)と言われており、最新型のエアコン(12畳用、月あたり3980円/カタログ値)の倍以上のエネルギー消費となる。

(3)夜型ライフスタイルへの移行

(4)情報化社会に向けての要因

3民生家庭部門におけるCO2排出削減の技術的可能性−ハード対策−

3.1 2010年までに導入可能な対策技術とそのCO2排出削減効果

3.1.1空調負荷の削減

(1)既存住宅の保温構造化(窓・サッシのペアガラス化)

*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)

(2)新築住宅の保温構造の強化(断熱構造化・保温構造強化)

*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)

3.1.2自然エネルギーの利用

(1)太陽熱温水器、ソーラーシステム

(2)パッシブソーラー住宅

*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)

3.1.3エネルギー効率の改善

(1)電力多機能ヒートポンプ

*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)

(2)エンジン多機能ヒートポンプ

*住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)

(3)家電製品の効率向上

<エアコン>



<冷蔵庫>


<テレビ>

<照明器具>

<電子レンジ・オーブンレンジ>

<その他の電力機器>

(4)効率的な技術の選択

3.1.4集合住宅用コージェネレーション

3.1.5効果を計上できないその他の技術

(1)ガスエアコン

(2)エンジンヒートポンプ

(3)プラズマディスプレイテレビ

(4)発光ダイオード照明

3.2対策技術の導入を促進するための政策と措置

(1)建物の保温構造等に対する基準強化

(2)住宅金融公庫の融資条件化

(3)補助金制度・税制

(4)電気機器のエネルギー効率の向上に向けた施策

(5)エネルギー消費の非効率な機器に対する改善勧告・指導

(6)家電製品に対する廃棄物処理費用の上乗せ

*廃棄物研究財団「廃棄物適正処理対策調査報告書−適正処理困難物対策(家電製品)」、1995

3.3対策技術を最大限導入した場合に削減可能なCO2排出量

3.3.1省エネルギー技術の普及に伴うCO2排出削減量の推定

図表4-13 民生家庭部門における温暖化防止技術とその効果予測(1/3)
既存住宅へのペアガラス開口部保温構造化
断熱構造化 保温構造強化 ソーラーシステム 太陽熱温水器
対象 公共住宅 民間戸建て住宅 民間集合住宅 新規住宅・北海道東北地方 新規住宅
CO2原単位 30 15 13 104 47 179 77
(単位) kg-C/世帯・年 kg-C/世帯・年 kg-C/世帯・年 kg-C/世帯・年 kg-C/世帯・年 kg-C/台・年 kg-C/台・年
年間導入実績
年間の新規住宅建設件数は149万戸(1995)/保温構造強化は北海道では完全実施されている
2.3万台 18万台
(年) 1994 1994
ストック量 280万戸 2406万戸 1363万戸
1995年の戸建て以外の公共住宅
1995年時点での一戸建て戸数 1995年の共同住宅戸数
設定 2000年以降2005年までに宮崎以北のすべての住宅(280万戸)へ導入 既存住宅に対して年間1%ずつ2005年以降は年間2%ずつ導入していく 既存住宅に対して年間1%ずつ2005年以降は年間2%ずつ導入していく 公庫融資を受けるところ全部+受けないところ同数が断熱構造化するものとする 2005年以降はすべての新築住宅への導入(現在の新築数の半分が改善したものとする) 現在の太陽熱温水器の販売の2倍のペースで設置、2005年以降は更に4倍とする。 2005年までは現状の2倍、それ以降はソーラーシステムに置き換わる。
2010年時点での導入数 公共住宅の全世帯 戸建住宅の15% 民間集合住宅の15% 全世帯の5% 全世帯の9% 全世帯の21% 全世帯の8%
(単位) 万戸 万戸 万戸 万戸 万戸 万台 万台
年間増加数 2000年 56 24 14 26 18 40.6 40.6
2005年 56 48 28 26 75 163.2 0
2010年 0 48 28 26 75 163.2 0
累積導入数 2000年 0 0 0 0 0 23 180
2005年 280 120 70 130 90 226 383
2010年 280 360 210 260 465 1042 383
削減予測 2000年 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 41.2 138.6
(千トン-C) 2005年 84.0 18.0 9.1 135.2 42.3 404.5 294.9
2010年 84.0 54.0 27.3 270.4 218.6 1,865.2 294.9
導入コスト(万円) 30.0 7.5 7.5 80.0 30.0
省エネ分(万円) 3.2 1.6 1.4 11.0 4.9 24.3 10.4
2010年総経費(億円) 7,516 2,131 1,288
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58,057 7,489
代表的推進施策 政府による率先実施 公庫融資での条件義務化 公庫融資での条件義務化 地域により公庫融資での条件義務化 建築基準の設定/公庫融資での条件義務化 財政的支援、設置の義務化 普及啓発

民生家庭部門における温暖化防止技術とその効果予測(2/3)
パッシブソーラー住宅 電力による多機能ヒートポンプ エンジン多機能ヒートポンプ ヒートポンプエアコンの効率向上 ヒートポンプエアコンの普及拡大 コンパクト蛍光灯の普及 冷蔵庫の効率向上
対象 エアコン所有世帯 北海道以外
CO2原単位 23934 20067 121(省エネ率)67 42
(単位) kg-C/世帯・年 kg-C/台・年kg-C/台・年 kg-C/世帯・年 kg-C/世帯・年% kg-C/世帯・年
年間導入実績 約1000戸 約500台 (廃棄)289万台 (廃棄)363万台
(年) 1993 1995 1995
ストック量 0 3000万世帯 世帯あたり4個
1993 推定
設定 現状の2倍のペースで施工、2005年以降は5倍になる。 東北以北をのぞき、電気温水器の販売がすべて多機能に替わる 2005年以降、電気多機能ヒートポンプの1割の販売 廃棄される分の効率がよくなる。年間360万世帯が買い換えを行う。 寒冷地以外で石油ストーブを購入する世帯の10%がHPへ転換する 白熱灯ストックを年率10%ずつ取り替えていく 廃棄される分の効率がよくなる。毎年500万世帯が買い換え。
2010年時点での導入数 所有している全世帯で買い換え 白熱灯のすべてが置き換わる 全世帯での買い換えが完了する
(単位) 万戸万台 万台万世帯 万世帯万個 万世帯
年間増加数2000年 0.22.6 360 422000 500
2005年 0.52.6 0.26360 422000 500
2010年 0.52.6 0.26360 422000 500
累積導入数2000年 0.80.5 00 00 0
2005年 1.813.5 01800 21010000 2500
2010年 4.326.5 1.33600 42020000 5000
削減予測2000年 1.90.2 0.00.0 0.0272.5 0.0
(千トン-C) 2005年4.3 4.60.0 1,210.3254.1 573.11,057.5
2010年 10.39.0 2.62,420.7 508.2751.6 2,115.0
導入コスト(万円) 165.0 65.065.0 0.1
省エネ分(万円) 43.3 6.228.1 12.23.6 0.77.7
2010年総経費(億円) 523 1,55948
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代表的推進施策 補助制度 補助制度開発の支援 効率の基準の強化 消費者への啓発 消費者への啓発省エネルギー基準の設定

民生家庭部門における温暖化防止技術とその効果予測(3/3)
テレビの液晶化 「動力その他」製品の消費電力削減 集合住宅のコジェネレーション
対象 集合住宅
CO2原単位 3141 15
(単位) kg-C/台・年 kg-C/世帯・年kg-C/世帯・年
年間導入実績 (テレビ全体)830万台
(年)
ストック量
設定 2000年以降、ストックの0.5%/年、2005年以降は1%/年の速さで代替される(テレビ出荷の1/10程度) 2000年以降毎年10%が削減される(10年で買い換えの完了) 1件あたり100世帯以上の集合住宅に限定して設置
2010年時点での導入数 テレビストックの6%程度 全世帯で省エネ型を導入する
(単位) 万台万戸
年間増加数2000年 43.8500 15
2005年 87.6500 15
2010年 87.6500 15
累積導入数2000年 00 0
2005年 2192500 75
2010年 6575000 150
削減予測2000年 0.00.0 0.0
(千トン-C) 2005年67.5 1,012.50.1
2010年 202.52,025.0 0.2
導入コスト(万円) 5.0 3,000.0
省エネ分(万円) 5.6 7.3203.5
2010年総経費(億円)
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42
代表的推進施策 液晶タイプの開発の支援 開発の技術支援/表彰制度 小型化等への技術開発支援
CO2原単位 ヒートポンプエアコンの効率向上、ヒートポンプエアコンの普及拡大、冷蔵庫の効率向上、テレビの液晶化、動力その他製品の消費電力の削減、については既存消費量から推定。
その他は住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)より
年間導入実績 新規住宅建築戸数は、建設統計要覧平成9年版より
エアコン、冷蔵庫の廃棄台数は、家電製品協会の予測
その他は住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)より
ストック量 既存住宅については、全国住宅基礎統計調査より
費用 住環境計画研究所「平成7年度地球温暖化対策技術評価調査(民生部門)報告書」(1996年3月)より
省エネ分 エネルギー種別の省エネルギー量を元に、現在のエネルギー価格を用いて計算。10年間で回収できる金額を示した。
2010年総経費 2010年までに導入に必要な総費用を計算した。ただし、省エネによって回収できる金額も含めて計算を行った。


3.3.2 2010年のエネルギー利用シナリオとCO2排出削減量

(1)シナリオ設定

シナリオ1:資源エネルギー庁の総合エネルギー調査会が出している予測に基づき、民生家庭部門のエネルギー消費が増大するものとする。エネルギー消費は2000年までは年平均で2.7%の増加、2000年から2010年までは年平均1.8%の増加が続き、1990年に比べて2005年では43%、2010年には56%増加する。技術的改善は含める。

シナリオ2:2005年及び2010年における各家庭のエネルギー利用機材の使用量を1990年レベルに抑制される。すなわち生活スタイルを変えないものとする。ただし技術的な省エネルギーの改善は見込まない。

シナリオ3:2005年および2010年における各家庭のエネルギー利用機材の使用量を1990年時点に比べて20%削減する。加えて技術的改善がなされたものとする。

参考シナリオ:2005年及び2010年における各家庭のエネルギー利用機材の使用量を1990年レベルに抑制される。シナリオ2に対して、技術的な削減を含めない場合。

(2)その他の設定


(3)各シナリオにおけるCO2排出削減量の試算

        図表4-16 シナリオの試算結果
シナリオ1:増大予測ケース (1000t-C)
暖房 冷房 給湯 厨房 動力照明 合計
1990年実績 8,886 1,272 7,925 2,322 17,095 37,501 100
2005年予測 11,683 1,527 13,324 3,299 23,769 53,602 143
2010年予測 11,215 1,506 13,058 3,346 24,243 53,369 142
シナリオ2:利用量1990年レベル抑制ケース (1000t-C)
暖房 冷房 給湯 厨房 動力照明 合計
1990年実績 8,886 1,272 7,925 2,322 17,095 37,501 100
2005年予測 8,407 1,176 8,147 2,593 16,377 36,700 98
2010年予測 7,022 961 6,871 2,648 14,398 31,899 85
シナリオ3:利用量20%削減ケース (1000t-C)
暖房 冷房 給湯 厨房 動力照明 合計
1990年実績 8,886 1,272 7,925 2,322 17,095 37,501 100
2005年予測 6,422 892 6,377 2,074 12,560 28,326 76
2010年予測 4,996 671 5,064 2,118 10,499 23,347 62
参考シナリオ:1990年レベル抑制:技術なしケース (1000t-C)
暖房 冷房 給湯 厨房 動力照明 合計
1990年実績 8,886 1,272 7,925 2,322 17,095 37,501 100
2005年予測 9,922 1,420 8,849 2,593 19,088 41,872 112
2010年予測 10,132 1,450 9,036 2,648 19,492 42,759 114

4家庭でのエネルギー使用削減のメニューとその効果−ソフト対策−

4.1家庭での省エネの取り組み

図表4-17  家庭におけるソフト対策とその効果
用途大項目 CO2排出量(1995年) 対象 行動内容 削減量
kg-C/世帯・年 kg-C/世帯・年
暖房 273.4      
エアコン 暖房の設定を2度下げる 34.0
  暖房の使用時間を1時間短くする  
  1度がまんする(暖房を始める気温を1度低くする、設定温度を1度低くする) 49.2
  2度がまんする(同上) 109.4
エアコン フィルターの定期的点検  
全館暖房 全館暖房の場合には、全体の温度を低めに設定して、部分暖房を補助的に加える  
  人のいない部屋を暖めない  
  家族が一つの部屋で過ごす  
  厚着をする  
カーテン 夜暖房をするときにはカーテンを閉める  
こたつ 部屋暖房からこたつへの変更 66.3
冷房 39.1      
エアコン 設定を2度あげる 10.6
エアコン 1日1時間使用時間の短縮 5.1
エアコン タイマーや、省エネモードなどを有効に利用する  
エアコン フィルターの定期的点検  
  扇風機の活用  
カーテン 昼間の日光を遮る、熱の拡散を遮る  
水打ち 夕方水打ちをする  
庭木 庭木を植える  
給湯 243.9      
シャワー シャワーを一人一日1分短縮 19.3
風呂 風呂の二度炊きを週2回減らす 8.8
風呂 沸かしたら間をあけずに入る  
風呂 風呂の湯量を1割減らす 22.0
風呂 沸かす温度を42度から39度程度にする 22.9
風呂 2日に1回はシャワーで済ませる 22.1
風呂 風呂を2日に1回にする 112.3
風呂 太陽熱温水器の手入れをして活用する  
風呂 ふたをこまめにする  
風呂 冬は沸かす直前に、夏は朝水を張る  
火種 ガス湯沸かしの火種をこまめに消す 6.4
台所 食器を洗う時に、お湯を流しっぱなしにしない  
厨房 71.5      
お湯を沸かす場合には、効率のいいガス湯沸かしを活用する  
  長時間の煮物等については、圧力釜や保温型調理器具の活用をする。  
ポット 長時間使わないときにはポットを切る  
無駄なお湯は沸かさない
照明動力 526.0      
テレビ テレビの視聴を1時間減らす 6.7
テレビ テレビを見ない 41.1
テレビ等 テレビやビデオなど、見ないときには元電源を抜く  
掃除機 掃除機のフィルター掃除の徹底 1.8
掃除機 (事前に片づけるなどにより)掃除機一日10分の短縮 3.7
洗濯機 風呂の残り湯(温水)の利用による洗濯時間の短縮  
洗濯機 洗濯物をまとめて洗う(2回を1回に) 2.5
洗濯機 洗濯・脱水時間の見直し  
乾燥機 乾燥機を使わずに天日乾燥させる  
照明 1日1時間の照明時間の短縮 23.2
照明 家族が同じ部屋で過ごす  
照明 複数の蛍光灯がある場合には1本減らす  
照明 人がいないところの照明をこまめに消す  
冷蔵庫 冷蔵庫の適正容量を維持 0.8
冷蔵庫 開け閉めの回数を減らす
家庭排出量 1,153.9

※参考文献

  地球温暖化対策技術評価検討会報告書(1996.5)
  静岡県地球温暖化防止対策地域推進計画(ふじのくにアジェンダ21)(1996)
  仙台市地球温暖化対策推進計画策定調査 委託報告書(1995)
  東京都地球環境保全行動計画(1992) 等

4.2家庭エネルギー消費アドバイザーの設置・改善技術の宣伝

4.3これ以上持たないという選択

4.4サマータイム制の導入

4.5エネルギー使用量を伝える政策

4.6製品情報を伝える制度



お問い合わせ、感想などありましたら鈴木(suzuki@student.eprc.kyoto-u.ac.jp)まで。お気軽にどうぞ。

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