ごみにまみれて '00/02

Last update: 2000/02/22

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●愛車 (00/02/21)

 愛車というのはほかでもない私の自転車のことです。昨年の春にもハンドルが回らなくなったあの世話の焼ける自転車ですが、今回もまたやってくれました。

 気候ネットワークで会議があり、いつもどおり自転車で10分の道のりを走っていました。京都の景観問題として最近有名になっている「町屋」の俵屋の前を通って、所々石畳の場所もある細い道を走っていく、なかなか風情のある通りです。少し車が多く、見通しも悪いのが怖いところで、これで車がなかったら非常にいいところなんでしょうけれどもね。

 ともかくいつもどおり、最後の交差点を左に曲がるところで、体重をハンドルにかけたところ、なんとハンドルの軸がぽきんと折れて左に曲がってしまいました。あわてて降りてみたところ、ちょうど缶詰を開けたときに蓋の最後の一部だけくっついていてぶらぶらしている状態でした。さすがにステンレスの軸は厚みがあるので、完全に切断されることはなかったですが、見事にさびて8割方切れていました。これがいわゆる金属疲労というやつなんでしょうかね。あの厚さの軸が折れるのはまあ見事としか言いようがありません。

 アロンアルファで直るだろう、などと勝手なことを言い合って、物珍しさに写真を撮るやつまで出てくる始末でした。「交差点で止まろうとしたらハンドルがすっぽり取れてしまった」という決定的瞬間に立ち会いたいという人もいたのですが、さすがにそれは当事者としては怖く、帰りは押して歩いて帰りました。

 今年の春といい、なかなか奇抜な壊れ方をして喜ばせてくれる自転車ですが、中古で買ってから10年、もういいかげん全体として寿命が来ているのかもしれません。買い替えてそれを長く愛用するというのも悪い選択ではないのでしょうが、「手間がかかる子ほどかわいい」とはよく言うもので、なかなか手放すことは考えにくいものです。かといって、こんな壊れ方をして、ちゃんと直ってくるのかもわからないですし、困った物です。とりあえず春にもおせわになった自転車屋に持っていきました。

 「こんな部品はないよ」と自転車屋に一言いわれて、もはやこれまでかと覚悟はしました。けれどもさすがは職人、「取り寄せになるから2-3日かかるよ」とのこと。まあこんなに壊れても直っちゃうのですね。「値段はかかるよ」。8000円ということですから、自転車屋の前に並んでいる特別価格中古自転車よりも3000円も高いのですが、まあ毒を食らわば皿まで、とことんつきあいましょう。


●夜のお散歩 (00/02/11)

 締切というのは、厳然と存在して非常に恐ろしいものですが、一方締切があるためにちゃんと仕事が進むというのも確かでしょう。しかし、その日付ですべて終わってくれたら非常にありがたいのですが、修正やなにやらの時間をご丁寧に取ってくれているようで、終わった気になっていても「もう少しがんばってみましょう」となかなか終わらないというのが辛いところです。本当は10月で仕上げるはずの廃棄物研究財団の報告書も、この2月になってもまだ仕上がっていない状況で、それ自体はゆっくりできてありがたいのですが、CASA環境教育の教材作成も締切が2月、マンガエコロジー入門も原稿の締切が2月、これをすぎるとさらに3月末の締切が並んでいるという大変な状況です。先延ばしにしたくないのですが・・・、仕上がっていないのだから仕方ないかもしれません。

 昨日はそんな締切間近のCASA環境教育教材作成の打ち合わせにでかけてきました。仕事をまともにやっていない状況で参加する会議ほど気の重いものはないのですが、最近はそんな気の重さに慣れてしまったのか、何かが「切れて」しまったのか手ぶらででかけてきました。だって時間がとれないんだもの、なるようにしかならないですよね。

 同じ様な気分というのは、大学の授業でもいやというほど体験してきたことです。予習をしていなかったから、授業を休みたくなってしまい、休んでしまうと更に授業が分からなくなるので、いつのまにかに授業には出なくなる・・・そんな悪循環に陥りがちです。しかし予習などしていなくても、出てみると意外とアドリブが効いたりして結果オーライとなるのがふつうなんですよね。今回の会合もまさにそんな感じで、みなで顔を合わせて進行状況を見せあって、話し合ってみると、なんとか完成の形が見えてくるものだから不思議なものです。会合が終わってからの飲み会は、いやあ気持ちがいいものでした。いろいろ裏話も聞けたし。

 大阪での飲み会の気分が良かったものだから、終電の時間よりみんなで話をするほうを優先させてしまい、いわゆる「終電がなくなっちゃったよ」状態になってしまいました。まあ天下の大阪ですから、オールナイトの喫茶店でも、映画館でもあり、夜を明かすまで暇をもてあますことはないはずです。けれどもなんか気分がよかったんで、ちょっと変な気を起こしてしまい、ついつい京都にたどり着くことのない最終電車に乗り込んでしまいました。「まあ大阪と京都なんて近いもんやろ」という酒の勢いで、気が付いてみると人気のない高槻の駅に降りていました。

 高槻から京都まではおよそ30km。まあ6-7時間も歩いたらたどり着くでしょうと計算をし、昔の人だって歩いたんだからと興味半分で歩きはじめました。自転車では京都から高槻を経由して兵庫県の三田まででかけたことがあり、道はだいたい覚えていますし、街道沿いですから間違えることはないでしょうが、夜道ということもあって寂しそうだったんで、夜も眠らぬ大動脈:国道171号線沿いを歩いて上がることにしました。

 しかしまあ午前2時をすぎても、トラックをはじめ車の多いこと。こんな夜中にも寝ずにがんばっている人たちがたくさんいるというのは驚きです。そんな中、交通量が多く当然のことながら人通りは全くありませんので、遠慮なく大声を張り上げながら歌を歌って気持ちよく歩いていくことができました。

 しかしさすがに合唱団で多くの曲を覚えたとはいえ、一人で2時間も歌っているとさすがに曲目も尽きてきてしまい、排気ガスが多いのにもうんざりしはじめたころ、なじみの大阪府青少年活動センターのある水無瀬駅の近くまでやってきました。ここからはまっすぐ京都まで旧街道を上がっていけばたどり着けますので、国道171号線とはおさらばして、昔ながらの夜道を静かに楽しむことにしました。石垣に囲まれた旧家やお寺などが多く、夜に歩いてみてもなかなか楽しめる街道です。名前が途中から変わっていくのですが、旧西国街道、物集女街道など、名付けられており、江戸時代などここを通ってひっきりなしに人が行き来していたことが想像できて楽しいものです。時には商店街の中を通り抜けたり、いきなり田圃があったりなど、趣がありました。

 ただそんなのんきなことが言えるのも歩き出して5時間くらいのもの。それまで順調だった足も、少しずつ痛み出してきました。また、道路沿いにはところどころに雪が残っている寒さ。気が付いてみると頬のあたりなど完璧に冷たくなってしまっていました。いつもながらの草履を履いているのですが、こちらは慣れているせいか冷たさは感じないのですが、かかとのクッションが少ないために、かなり痛み出してきています。1時間ぶりくらいでコンビニを見つけ、足を休めたり、暖まったりしていたのですが、歩き出すとまったく回復しておらず、一歩一歩痛さをこらえながら足を進める繰り返しでした。

 そんな状態で、いつのまにか周りは明るくなりつつあり、かといってまだ京都市内にも達しておらず、気が付けば隣の線路を家の近くまで行く電車が走りはじめているという、ちょうど酔いが醒めて自分のばかばかしさに気が付いたような状況に至りました。しかし、ここまで歩いてきて家まで電車に乗るというのもしゃくですし、びっこを引きながらテンポが半分くらいになった歩みを進めることにしました。

 桂川を渡り、町中に入ってからなんとも距離があることか。私の家は川端三条ですから、東の端です。自転車でもだいたい40分くらいかかる道のりですから、そう簡単にたどりつくものではありません。しかもかかとを踏むだけで激痛が走る状態で。だれかにドクターストップをかけてもらいたいような気分でした。よく自転車で走っている道のりであるがゆえに、一歩ずつ歩いていく景色の動きののろさが、なかなか思考を停止させてくれます。

 そうしてようやくたどりついた我が家。手をつきながら階段を上り、こたつに腰掛けたときには、なんか涙が出てきそうでした。時計は8時半。ごみを出す時間にもどうにか間に合いました。

 しかしたかが30kmで、これだけ苦しがるというのも情けない話ですね。昔は老人や子供だってこんな距離はふつうに歩いていたでしょうし、現在でもマラソンでそれより長い距離を走っていくわけですからね。いかに運動不足だったのかを思い知らされました。

 また一方で、大阪−京都というのが、電車でわずか40分の距離ですが、本当はそう簡単に行き来をすることができない、とてつもなく遠い場所だったということを改めて実感しました。電車だから環境にいいと言っても、エネルギー消費量を計算すると、往復で1リットル以上の石油を使う換算になるはずです。そんな距離だとは知らず、気楽に京都大阪を往復していたのは、ちょっと反省すべきところかもしれませんね。ましてや東京へ日帰りで行ってくるなどというのは、昔に何日もかけて歩いて移動していた人にとてつもなく失礼な話かもしれません。

 その後・・・たどり着いたその日は、全く足が動きませんでした。次の日になってようやくつま先立ちで歩けるようになり、ふつうに歩けるようになったのは2日後でした。はてさて、なにをやっているのやら。


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