おおさかパルコープ「省エネチャレンジ」事前アンケート結果概要

実施概要

 おおさかパルコープでは、1998年の7月から9月までの3ヶ月間に、「省エネチャレンジ」という取り組みを組合員対象に行っている。一種の環境家計簿であり、各家庭での環境の取り組みの実施状況を毎月評価すると同時に、電力などのエネルギー消費量も報告してもらうようにしている。この取り組みの前後でアンケートを実施する機会を得ることができ、今回「省エネチャレンジ」を実施する前の意識について第一回のアンケートを実施した。7月はじめに、省エネチャレンジ表といっしょに配布し、7月いっぱいでの回収を行った。回収数は206820日段階)であり、省エネチャレンジを取り組むことを決めた大部分の人が回答したものと思われる。(実際に何人が取り組んでいるのかは現在のところ報告はない)

 アンケートでは、(1)家庭内のコミュニケーション、(2)周りで取り組んでいる人との関係、(3)省エネ以外にごみ問題、有害物質に対する意識、(4)省エネチャレンジの構成に対する感想、の4点を柱に調査を行っている。

母集団の性質

 生協の組合員を対象としているため、一人住まいで参加する人は少なく、家族構成員は比較的多くなっている。また環境に対する認識としては、生協の中でもかなり取り組んでいる人が多く、一般の平均にくらべたらかなり意識は高いと言える。

 世帯人数の平均は4.1人(国内平均は3.0人)で、両親+子供二人といった組み合わせが標準的なパターンとなっている。エネルギー消費量との関係をみるために、時間帯別に家にいる人数を尋ねたが、午前6時、午後12時についてはほとんどの構成員が家に居るのに対して、昼間には1/3以下に減ることが示されている。

 98年の冬にも同じような「省エネチャレンジ」を取り組んでいるが、前回も実施した家庭が50世帯、今回初めて参加するのが144世帯となっている。前回の参加は109世帯であったため、およそ半数が再度チャレンジしていることになる。


家庭内のコミュニケーションについて

 家庭内で環境問題についての話がどの程度されるのかを、ネットワーク分析手法を用いて調査した。記入にあたてては、家族構成員を全員記入してもらい、誰が誰に対して環境の話をするのか、矢印で記入してもらった。また比較的よく話がなされる場合には、矢印に○をつけてもらった。(別掲の調査表参照:問2

図1 世帯人数別のコミュニケーション矢印数



図2 コミュニケーションにおける双方向の割合


 矢印の数は、人数が多くなるほど最大限引ける本数が増えることになる。たとえば2人世帯では相互の2本が最大限であるのに対して、5人家族では組み合わせにより20本が引けることになる。このため、実際に家族人数が多いほど本数が多くなる傾向があるが、必ずしも人数が多い方が関係が密であるとは言い切れない。○付きは、矢印のうち「よく話す」という関係の場合に付けてもらったが、これは矢印の本数の1/4程度を占めている。(図1)

 矢印が、双方向の関係であるのか、一方通行であるのかの違いで整理すると、ほぼ半数が双方向関係の矢印となる。双方向は2本と数えられるので、環境について話がされる2人の関係の1/3程度が双方向でやりとりが行われていることになる。(図2

図3 世帯人数別、任意の2者組み合わせに対する関係の種類



図4 世帯人数別の送信者割合、受信者割合



 任意の2人の間の関係において、矢印が引かれているのかどうかを世帯人数別に整理した(図3)。世帯人数が増えていくほど、構成員同士の直接の話をする関係は薄れていく。これには、幼稚園以下の子供に対しては家族人数として含まれていてもコミュニケーションが困難であったり、ある特定の人が他のすべての人に対して直接情報を伝える役割を担うために、構成員が任意の人と話をすることが少なくなる要因があげられる。

 家族の各構成員は、自分から話を発信するかしないか、他人から受信するかしないか、の組み合わせで4種類に分類することができる。世帯人数別にそれぞれの分類の人がどの程度いるのかを整理した(図4、表2、表3)。家族内の関係では、特定の人が他の人に対して働きかけをする構造がよく見られ、環境の話題についての発信者と受信者が分離している様子が伺えた。情報の発信者と、一方的な受信者はほぼ半々に存在することが示された。2人以上の世帯では、世帯人数が増えると発信者の割合が徐々に下がっており、世帯人数が増えるほど特定の人に発信を任せる傾向が出てきている。

※集計上、次男には三女、次女には三男が一部含まれる

 家族の構成員別に環境の話を発信している矢印の数を整理した(表4)。最も多く発信しているのは母親で2.7本となっているが、平均世帯人数が4人であることを考えると、家族の大部分の人に対して発信している様子がうかがえる。家庭の中で情報を発信する中心となっているのは母親であり、それ以外の構成員(父親、子供)が中心となっている例は、数例のみであった。これは生協という組織で行われたため、主婦から家庭へ伝えられる情報が多いことが考えられる。

○付きの場合には2本として重みづけ評価を行った。次男には三女が、次女には三男が一部含まれている。

 家族の構成員ごとに、誰から誰に話をしているのかを表5に整理した。値としては、単なる矢印を1、○が付けられた矢印を2として重み付けで点数評価を行っている。発信者、受信者がそれぞれ存在する家庭に於いて、重み付き矢印の平均をとっている。たとえば発信者が母、受信者が祖父の場合には0.64となっているが、これは祖父と母がいっしょにいる家庭に於いて(もしすべてが○なしの矢印であった場合には)2世帯に1世帯以上は母から祖父への話がなされることを意味している。

 発信者の合計点を見ると、母親が他を圧倒して多く情報を発信していることになる。父親は子供と同レベルであり、母親の110程度となっている。

 逆に、受信者についても、母親が最も多く受信していることが示されている。特に子供が情報を発信する場面に於いては、大部分が母親に対して発信されており、父親に対してや子供同士の情報発信は少ない。

 父親は、そもそも情報発信は少ないものの、母親以外に子供たちに対しても少ないながらも発信を行っている。ただし、祖父・祖母に対して情報発信が少ないのは、子供と同じである。

 以上の点から、母親が家族の中で中心となっていることがわかる。子供が家族の中で発信することとしては、学校での環境教育の成果と言えるかもしれないが、今回の母集団では家族の中で重要な位置を占めるようにはなっていない。

 なお、子供の年齢別に比較が行えれば、より環境学習の効果について言及できるが、7月の調査の時点では検討することはできない。次回調査で明らかになる予定である。なお、この調査は生協の組合員を対象に行っているものであり、母親の関心が高く、生協から環境の情報を得られることが考えられる。また、アンケートの記入者の大部分が母親であることが考えられ、自分以外のコミュニケーションが認識されていない可能性も十分考えられる。

図5 前回の取り組みの有無による矢印数の違い



 前回(冬)の「省エネチャレンジ」の取り組みを行った人と、行わなかった人との比較を図5に示した。取り組みを行った人のほうがコミュニケーション数がやや多いことが示された。しかし、グループに差があることが示されているだけで、取り組みの実施によって増えたものであるかどうかは、夏のチャレンジの実施後のアンケート結果を待つ必要がある。

省エネに対する意識について

 省エネに対する認識に関する10の設問について、「そう思う」から「そう思わない」まで5段階で回答をしてもらった(図6)。その結果「8温暖化が進行するのが怖い」「7世の中の取り組みは不十分である」「9情報がほしい」「4自分たちに責任がある」「10自分には取り組む余地がまだある」といったことで「そう思う」と回答した人が多かった。一方、「2何をしたらいいのかわからない」「5周りでは多くの人が取り組んでいる」といった設問には「そう思わない」という回答が多かった。

 回答の幅が大きかったものとしては、「3家庭での省エネだけでは温暖化は防げない」という質問で、家庭以外でも取り組むべきと考えている一方で、自分たちの取り組みが重要であると思いこもうとしている面もあると考えられる。

 「2割削減すること」が大変であるかどうかについて、昨年の冬に取り組んだ人と取り組んでいない人については、違いは見いだせなかった。

図6 省エネに関する認識とその分布



 周りで何割の人が取り組んだら自分も取り組み始めるかという質問では、既に取り組んでいる人をはじめとして多くの人が「誰も取り組まなくてもやる」という回答をしており、95年の買い物での同じような調査と比較しても、自主性が非常に高いことが示された(表6)。このグループであれば、自主的に環境への取り組みを行うことが安定状態となる。(周りの協力率に関する調査については詳しくは修士論文を参照)

表6 周りで何割の人が取り組んでいたら自分も取り組むのか(省エネで2割削減)



省エネと廃棄物問題、有害物質問題との関係について

 省エネ、廃棄物、有害物質の3つの問題について、先ほどの省エネと同じ構成でアンケートを実施し、認識の違いについて検討を行った(図7)。その結果、比較的3つの問題が同じようなものとして認識しているものの、わずかながら認識の差がある質問も見られた。

 特に明確に差がみられたのは、「何をすれば対策となるのかわからない」という項目で、省エネやごみ減量が、対策を認識している一方で、ダイオキシン等の有害物質が直接認識しにくく、何をしたらいいのかわからないという回答が多かった。それに関連して、「家庭の取り組みだけでは解決しない」という点についても、有害物質については家庭以外の責任が大きいと感じていることが示された。

 まわりの取り組みについては、いずれの問題もそれほど取り組んでいる様子は認識されていないが、何が取り組んでいる状態かわからないため、「他の人に比べて取り組んでいる」については有害物質の回答が消極的になっている。

7 「省エネ」「ごみ減量」「有害物減量」に関する意識の違い


 問題の大きさについては、省エネ(温暖化問題)がもっとも恐ろしいと認識しており、続いて有害廃棄物、ごみ大量廃棄の問題の順となっている。

省エネチャレンジに対する感想

 省エネチャレンジシートを見てもらい、その場での感想を尋ねた。「面倒だ」と感じてた人は、「そう思う」と「ややそう思う」を加えると7割に達している。ただ「やっかいそうだ」「わかりにくい」という回答は比較的少なく、むしろ「成果が上がりそうだ」と前向きに評価してもらえている。

 しかし「楽しそうだ」と感じる人は少なく、「成果が上がる」事にメリットを感じている人でないと取り組みを始めにくいかもしれない。

 「生協がやるのでなければ自発的にはやらないだろう」という回答に対しては、7割近い人がそう思っていることが示された。ある程度まわりでやろうという人がいて始めて取り組みが行えるものかもしれない。また、他の人に勧められるかについては、半数知覚の人が薦めたいと考えている様子が伺える。逆に「薦めたいとは思わない」という回答は非常に少なかった。

8 省エネチャレンジ表をもらっての率直な感想


(省エネチャレンジについては、おおさかパルコープで作成したもので、掲載の許可をもらっていません。環境庁の毎月記入する環境家計簿のようなものです。)


(最終更新98年10月2日)



お問い合わせ、感想などありましたら鈴木(ysuzuki@mti.biglobe.ne.jp)まで。お気軽にどうぞ。

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