第三の生物・・・古細菌


超好熱菌という微生物がいます。85度C以上の高温で生育します。信じられますか?人がこんな熱湯につかったら、たちまち大火傷です。この微生物は、最初はバクテリアの仲間ではないかと考えられていましたが、その後の研究により、高等生物やカビ、酵母、バクテリアなどの微生物とはまったく違う生物であることがわかりました。そして、このような微生物の仲間は古細菌または始原菌と名付けられました。



 古細菌が発見されるまで、生物は真核生物と原核生物の二つに分けられていました。真核生物には、動物、植物、酵母、カビなど、バクテリア以外のすべての生物が含まれます。原核生物はバクテリアのことです。真核生物と原核生物は細胞の構造が違っています。真核生物は遺伝子を含む染色体が核というものに入っています。ところが、原核生物には核がありません。

 火山などの高温環境で生育する微生物が発見され、100度近い温度でも生きていることがわかってきました。このような微生物は超好熱菌と名付けられました。バクテリアに似ているのですが、研究の結果、バクテリアとはまったく違う生物であることがわかりました。それまで、生物は真核生物と原核生物に分けられていましたが、超好熱菌はどちらとも違いました。第三の生物として古細菌と名付けられました。古細菌は現在名前が変わって、始原菌と呼ばれています。いままで知られていたバクテリア(細菌)は、古細菌に対して真正細菌と呼ばれます。
 

 

.
超好熱菌は地獄谷の中でも平気で生きている(登別の地獄谷)

 

.
「ぼくと古細菌、どちらが古いのか???」

 古細菌には変わった性質のものが多く、超好熱菌のほか、高濃度の塩がある環境を好む高度好塩菌やメタンをつくるメタン生成菌などがいます。

 メタン生成菌は廃水処理などに利用されています。食品工場やビール工場の廃水には有機物がたくさん含まれています。これを、そのまま河川に流すと、河川や湖が汚染されます。そこで、廃水中の有機物を分解してから放出されます。いわゆる廃水処理といわれる技術が利用されます。
 廃水処理の技術のなかにメタン発酵という方法があります。高濃度の有機物を含む廃水を酸素のない状態で処理します。この処理では、微生物によって有機物が分解され、最終的にメタンガスが発生します。このメタンは処理装置のなかにいるメタン生成菌によってつくられます。発生したメタンは燃料として利用できます。廃水を処理できると同時に、発生したメタンをボイラーなどの燃料として利用できるのです。

 古細菌は高温の温泉や高濃度の塩を含む塩湖など、通常の生物が生きていけないような環境に住んでいるものが多いのですが、その遺伝子や細胞の成分が調べられた結果、意外なことが分かってきました。その遺伝子やタンパク質は、普通のバクテリアではなく、むしろ私たち高等生物に近い構造を持っているのです。このような研究の結果、上に述べたように、通常のバクテリア(真正細菌)とは別の生物であることが分かったのです。

 古細菌は過酷な環境で生きているので、それがつくる酵素も非常に強い性質を持っています。超好熱菌の酵素には100度Cでよく働くものがあります。酵素はタンパク質ですから、普通の酵素は100度Cになると変性して活性がなくなります。卵をゆでると黄身や白身が固まりますが、このようになることをタンパク質が変性するといいます。超好熱菌の酵素はゆで卵ができるような高温でも働くことができます。このような強い性質を利用しようという研究が進められています。
 

 
.
「ぼくも古細菌のように強くなりたい・・・。」
.
微生物の話
Dr.Yamamoto's Homepage Index
ちょっとSCIENCE