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ABTの「海賊」と「ガラ」

 
BS2でABT(アメリカン・バレエ・シアター)の「海賊」の全編とガラを見ました。
このバレエは、全編が上演されるのは珍しく、パ・ド・ドゥだけを取り出して踊られるのが一般的です。
従って、勢い込んで観たのですが、正直の所、真夜中に「海賊」全編をテレビで観るは、かなり、しんどい。途中で眠くなりました。
もともとこのバレエはストーリーも特段おもしろいというわけでもなく、全体のまとまりの点でも「眠りの森の美女」等に比べると弱い面が有り、真夜中にテレビの画面で数時間も見ていると、退屈で眠くなるのも、いたしかたないと思います。
 
メドーラ役のジュリー・ケントはとてもフレッシュでよかったのですが、全体を引っ張るにはちょっと荷が重すぎます。眠くなって、寝てしまわれた方もいるのではないでしょうか。私も眠かったのですが、懸命に起きて観ていました。
 
ジュリー・ケントというバレリーナは初めてみたのですが、気品があって、とても良かった。
ほっそりとして、とても可愛らしいバレリーナで、非常に丁寧に踊っていました。
さしてテクニシャンでないようですが、上品な踊りに好感が持てます。グラン・フェッテも軽快でそつがない。今後期待できそうで、要チェックです。
 
私は、「海賊」よりも、このすぐ後に放映された「ABTガラ」の方がむしろ面白かった。
ABTの若手ダンサーたちの新鮮な踊りを見ることができました。
まず、ドンキ・ホーテのパ・ド・ドゥを踊ったパロマ・ヘレーラ。「海賊」ではメドーラの友人のギュルナールを踊っていました。
まだ21才だそうですが、同じラテン系のアルヘル・コレーラの好サポートに支えられて、のびのびと踊っていました。
彼女のアチチュードのバランスには感動しました。サポーターの手を離してから約10秒間、歯を食いしばってバランスをとり続けていました。音楽が止まってしまえば、もっともっと続けられるという感じで、思わず「頑張って!!」と叫びたくなりました。笑みを忘れた真剣な表情で、必死に揺れを堪えて、懸命にバランスをとり続けました。踊り終えて、やっと笑みが戻りました。ホッとしてレヴェランスで見せた彼女の表情は、至難な技を無事こなした安堵感満ちて、なにものにも代え難い美しいものでした。 心から「良かったね!!」と声をかけたくなる瞬間でした。VIEW
コーダのグラン・フェッテ・アントゥールナンも前半ダブルを入れてスピードもあり見事でした。ただ、アダージョのバランスもコーダのグラン・フェッテも、それぞれ単独ではとても素晴らしいのですが、それぞれが独立してしまっているようで、スムーズに繋がらないのです。長ーいバランスも、速いフェッテも、見せ場を作る意味では効果的なのですが、やはりパ・ド・ドゥとしての流れが必要だと思います。このあたりが彼女の今後の課題ではないでしょうか。
 
そのほか、スーザン・ジャフィーのオディールやアレキサンドラ・フェリのジュリエットも楽しめました。
ともあれ、途中で寝ないで見ていて、良かったと思いました。

 
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