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アナログLPレコードの楽しさ  (2006.4.1改)

私がレコードを集め出した1960年代はLPレコード全盛の時代で、オーディオ雑誌では、カートリッジはMCかMMかとか、ターンテーブルはベルトかダイレクトドライブかとか、アナログレコードの議論が花盛りでした。私も大枚?をはたいて、MCカートリッジやダイレクトドライブ・ターンテーブルを購入したものでした。

しかし世は軽薄短小の時代。1982年にLPレコードに替わる記録媒体として、コンパクト・ディスク(CD)が現れました。CDはその名の通り、33センチのLPレコードに比べ12センチとコンパクト。この中に、LPレコードと、ほぼ同時間の音楽を収容できます。 コンパクトで手軽な操作性とクリアーな音質のCDの普及は目覚しく、操作が複雑で図体の大きなアナログLPレコードを完全に駆逐してしまいました。レコード盤が店頭から消え、針の最大のメーカーであったナガオカも針を作らなくなりLPレコードは永久に消えてしまうかに見えました。 その背景には、LSIやICなどの先端技術の進歩があります。技術は更に進歩し、そのCDですら、最近はDVDオーディオやDVDビデオにその座を脅かされるようにすらなってきています。
 
それでも私はLPレコードを捨てられませんでした。レコード盤のほこりをとって慎重に針を落すときの楽しみと、レコードのスクラッチノイズの中からアナログ特有の暖かみのある音が聴こえた時の興奮は、CDでは味あえない快感です。 特にモーツァルトの室内楽など貴族たちの夕食の時に演奏されたような小規模な楽器編成の演奏にはアナログの音に最もよく合うように思います。
 
それにしてもLPレコードのあの髪の毛ほどの細い溝にはなんと美しい音が入っていることでしょう。しかも、カートリッジを変えたり、ピックアップのアームを変えたりする事によって、さらに新しい音を発見できるのもアナログのLPレコードならではの楽しみです。レーザーピックアップとターンテーブルが一体となったCDプレーヤーでは絶対に味わえない楽しさです。 オーディオ部品メーカーの「audio-technica」では、今でもピックアップ・カートリッジやトーアームを販売しているようです。私が愛用しているMCカートリッジAT-F3も改良してAT-F3IIとして販売しているし、トーンアームに至っては、もともと業務用として製作され、一般販売された、かっての名機AT1503Vaを販売しています。 一本18万円と高価なステレオセットが買えるほどの値段ですが、既に300本以上も売れたとのこと。こんなに高くても売れるのは、やはりアナログレコードの魅力から逃れられないオールドファンが居るからでしょう。
 
このように、最近、LPレコードが見直されてきたのはうれしいことです。わずかながらLPレコードが発売され、店頭でレコードプレーヤーも見かけるようになりました。 SPレコードに始まったアナログレコードの歴史はCDに比べて数倍も長く、それだけコンテンツも充実しています。
レーザー光線で凹凸を読みとるといテクノロジーの固まりのようなCDと違い、波形として溝に刻まれた音を機械的に読みとるLPレコードは、構造がシンプルだからこそ、いつまでも親しみを忘れさせない良さがあります。エジソンの蓄音機に端を発する、この素晴らしい人類の発明を、いつまでも大切にしていきたいと思います。


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