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アレテー&眠りの森の美女〜ハイライト  (2001.10.1)

松山バレエ団の「アレテー&眠りの森の美女〜ハイライト」を観てきました。
場所は、「テアトルフォンテ」。相鉄線、いずみ中央駅のそばの小さな劇場です。客席は、300程度。
室内楽をやるのに適した劇場で、「アレテー」や「眠り・・・」のようなバレエには、どうかな???と思っていたのですが、なかなか見やすくて良い感じでした。テープによる演奏で、オーケストラがない分、客席はステージに近く、私は前から五列目でしたから、舞台のダンサーの息づかいも聞こえてくるような場所で、ダンサーの動きがを手に取るように見ることが出来ました。
 
まずは、新作「アレテー」。これは、数週間前に The Japan Balletでも観たのですが、この時は遠くてよく見えませんでした。内容的には前回(初演)と大きく変わっていませんが見慣れたせいか、森下さんが出てくるまでが多少長く感じられました。
「アレテー」とは、ギリシャ語で「徳・正しい栄え・正義」を意味するそうで、バレエの演出・振付は、清水哲太郎氏。
マ−ラ−の交響曲第4番を使っていて、森下洋子さんは、3楽章途中から4楽章を踊りました。
 
クラシックなのですが、少しモダンな香りもする振り付けです。私は、モダンは好きではないのですが、森下洋子さんの良さがうまく表現されているような振付で、とても快い感じでした。
登場から、約30分間、森下さんは踊りずめです。ソプラノ独唱付きの第4楽章、決して踊りやすい曲とは思えないのですが、音楽をしっかり手中におさめた美しい踊りに圧倒されました。
森下さん初演のときより、さらにのびやかに踊られているようでした。地上に舞い下りた長いソロは印象にのこりました。
 
「眠れる森の美女」は第3幕からのハイライト、「オーロラ姫の結婚」という1幕バレエとしても親しまれている、いわゆるディベルティメントです。
平元久美さんと石井瑠威さんのダイアモンドの精のパ・ド・ドゥ。平元さんの表情がとても美しかった。気持ちよく決まったバランス、精進の跡が伺えます。
山川晶子さんと村山透さんの青い鳥のパドドゥ.。山川さんの「フロリナ王女」は美しかった。背が高いだけ良く映えます。とてもバランスがよく、余裕すら感じられます。ヴァリアシオンも軽快で美しかった。ブルーバードの鈴木さんとの息もピッタリ、微笑ましさ感じるパ・ド・ドゥでした。
森下さんの「オーロラ姫とデジレ王子のパ・ド・ドゥ」はアダージョのみ。チョット寂しい気がしましたが、アダージョ自体はとても素晴らしい。ひと味も二味も違います。バッチリ決まったフィッシュ・ダイブに大きな拍手が起きました。
とても楽しめたのですが、スペシャル・ハイライトというからには、「ローズ・アダージョ」を先頭につけて欲しかったと思うのは贅沢でしょうか。
 
ただ森下さんの存在があまりに大きいので、他の人たちが霞んでしまうのが気になります。
今回のように、せっかく「アレテー」と「眠り・・・」という2つの出し物でしたから、「アレテー」は森下さん、「眠り・・」は、平元さんや山川さんというように、主役を分けた方が良かったような気がします。
平元さんや山川さんは、優れた踊り手にも拘わらず、森下さんの陰に隠れてしまう。松山バレエ団も森下さんにばかり頼らずに、次の世代を表に出すようにしないと、せっかくの優れた芽が伸びません。
森下さんが居なくなってしまったら、松山バレエ団はどうなるの?、と心配になってしまいます。
森下さんは53歳。普通のバレリーナでしたら、とうに引退している年代です。ここまで頑張っておられる森下さんに、敬服の念を抱くと同時に、このままでは彼女はいつまでも辞めることができないなと、気の毒のような気持ちにもなってしまうのです。


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