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瀕死の白鳥 平尾麻実    (2018.9.30)

とても素敵な「瀕死の白鳥」の映像を見ました。平尾麻実というダンサーが松戸市のオーロラバレエスタジオの発表会で踊ったものです。 バレエの舞台は、通常、「公演」と「発表会」に区分されます。それに加えて「コンクール」というものがあります。まず、「コンクール」。これは、ダンサーが自ら技を競う為に参加する場であり、観客に自分の踊りを披露する「公演」と「発表会」とは、大きく異なります。 コンクールは日本でも数多く開かれていますが、有名なのは、何と言っても「ローザンヌ国際バレエコンクール」。吉田都さんや熊川哲也さんも、このコンクールの受賞者です。 さて「公演」と「発表会」の違いに入りましょう。解釈は色々あるようですが、一般的に「公演」はプロのダンサーが踊りを観客に見せるもの、「発表会」はバレエを習っている人が、日ごろの成果を友人や家族や関係者に見てもらうものと言えるでしょう。 「公演」は、観客がお金を払ってプロのダンサーの舞台を観るもの、「発表会」は出演者自身がお金を払って舞台に立たせてもらうというものです。 「公演」はプロの舞台ですから、出演者は観客を楽しませなければなりません。つまり自己満足であってはならないのです。必然的に舞台を観る観客の眼も厳しくなります。失敗は許されません。ダンサーは踊りに誇りを持って公演に参加しています。「公演」は「発表会」の延長ではありません。 一方「発表会」では、出演者は日ごろの練習の成果を晴れの舞台で一生懸命に披露するもの。出演者自身が楽しめれば良いということになります。失敗しても、それは成長の過程と大目ににてもらえます。舞台経験を積んで出演者は成長していくのです。
でも、観客サイドからすると、「発表会」の中にキラッとした輝きを見つけることもあるし、大規模な「公演」でも、つまらないと思うこともあります。むしろ、発表会に近い小規模な「公演」に大規模な「公演」には無い魅力を感じる場合が多いのです。 この「瀕死の白鳥」は発表会で踊られたものです。平尾麻実さんは、オーロラバレエスタジオのHPによると特別講師となっているので、おそらく生徒たちの発表会の模範演技者として出演を依頼されたのでしょう。
私は「瀕死の白鳥」を好んで観てきたのですが、この平尾麻実さんの気品に満ちた死に至る白鳥の舞に目が釘付けになりました。最初から最後まで一時も目を離せませんでした。 平尾麻実さんは、ごまかしがきかないボロがでやすいこの踊りを、正確にゾクゾクするほど美しく魅力的に踊っていました。一度床に臥せり、最後の力を振り絞って立ち上がり、再び倒れてしまう場面の演技の素晴らしさと、愁いを帯びた表情の豊かさと美しさに感動でした。 「瀕死の白鳥」は、若さの芸術と言われるクラシックバレエの中で、年齢を重ねて踊り込むほど味が出てくると言う異色の作品です。 派手で見栄えのするパが少ない上に、ゆっくりとしたテンポの振りの連続で失敗するとごまかしがききにくい上、最初から最後まで一人で踊り通さなければならず、 肉体的にも精神的にも、きつい踊りとされています。   
瀕死の白鳥(facebook(オーロラバレエスタジオ)より
こんなに感動した「瀕死の白鳥」は久しぶりです。死に至る白鳥に自らの力を出し切って踊り切った平尾麻実さんに「お疲れ様!!」と労をねぎらってあげたい気持ちになりました。
平尾麻実さんが、コッペリア Coppelia 3幕「祈り」を踊った映像がYouTubeに載っていましたが、これがまた美しい。 技術を誇示するようなところはなく端正な踊りです。彼女の人柄が表に出たような慎ましやかな踊りで、かと言って、決めるところはきちっと決めて・・・とても正確でうっとりでした。本当の舞姫というのは平尾麻実さんのような方を指すのでしょう。 バレエスタジオの講師をされているという彼女、さぞ素敵な先生なのでしょう。

コッペリア 3幕「祈り」(平尾麻実

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