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フォンティーンとアシュトン  (2001.1.13)

 
マーゴ・フォンティーンは、私が大好きなバレリーナです。
彼女は1973年来日、東京バレエ団の「眠りの森の美女」に客演しました。 バレエの魅力にとらわれて30年で、最も感動したのがこのステージと言えるかもしれません。  マーゴのオーロラは、初々しくて、可愛らしくて、既に50歳を越えているなんて、とても信じられませんでした。マーゴの「眠りの森の美女」
 
このフォンティーンが最も信頼していた振付師がフレデリック・アシュトンであり、彼無くしてフォンティーンの栄光は無かったとさえ言われています。
「振り付け者と、そのイメージを具体化するダンサー」、この両者の関係を最も象徴しているのが、アシュトンとフォンティーンでしょう。
1936年当時17歳のフォンティーンに初めてアシュトンが振り付けてから、アシュトンが亡くなる直前まで、この関係は続いたのです。
 
フォンティーンの踊りを見る限り、決して奇抜なテクニックを見せることはありません。気品に溢れていて、叙情的で、バランスを重視した踊りです。このあたりにもフォンティーンを知り尽くしたアシュトンの気持ちが現れていると思います。
 
15年ほど前に、アシュトンがフォンティーンに振り付けている様子が、NHKテレビで放送されたことがあります。ロイヤルバレエ創立25周年にアシュトンが振り付けた「誕生日の贈り物」を、1981年に再演した際のリハーサルの様子です。確か「世界の奇跡・フォンティーン」というタイトルの番組でした。なお、この番組では、他に「眠りの森の美女」の「ローズ・アダージョ」等、とても素敵なフォンティーンの踊りも見られました。

これをみるとアシュトンが如何にしてフォンティーンの美しさを引き出そうと適切な指示を出し、またフォンティーンがアシュトンを信じきって懸命に練習に励んでいるのがわかります。
アシュトンは、マーゴのパートナーのヌレエフにも細かく注意しています。「彼女が手を離したら、すぐ前に回りなさい」。「それが彼女に安心感を与えるのです」。「もっと高く(彼女を)持ち上げなさい」等々・・・
フォンティーンの表情は、初めは引きつっているように険しいのですが、だんだんと和らいで行くのがわかります。

また、このパ・ド・ドゥのフィニッシュ近くで、マーゴがポアントで立ち、後ろに立って頭上で支えているヌレエフの手を離してアチチュードのバランスをとり、前に回り込んだヌレエフに再び掴まる場面があります。 この時、ヌレエフの回りこんで差し出した手が、誤ってフォンティーンの腰のあたりにぶつかってしまいます。フォンティーンはバランスを崩して、そのまま床にしゃがみ込んでしまいます。ヌレエフも申し訳なさそうにうつむいてしまいます。
このときアシュトンは、フォンティーンに優しく「やり直すかい」と声をかけます。
ヌレエフに引き起こされて、フォンティーンは気を取り直して再度トライ。今度はヌレエフとの呼吸もぴったり合い、たっぷりとバランスをとってフィニッシュ。フォンティーンの顔に笑みが浮かびます。VIEW
 
これを見ると、世紀のバレリーナ、フォンティーンといえども、本番の舞台に備える為に、いかに苦労しているのかがわかります。
舞台ではいとも簡単に踊っているようでも、見えないところで大変な努力と練習を重ねているのを、まざまざと見せつけられるシーンです。
 
幸いこの放送の「誕生日の贈り物」のリハーサルの部分は、フィルムに残っていて、その後、「フォンティーンとヌレエフ」というタイトルに含められ、ビデオテープやレーザーディスクで発売されました。
ただ、その番組の中にあった「ローズ・アダージョ」等の舞台シーンは、その後発売されて私が購入した、フォンティーンのどのビデオの中にも収められていません。もしどなたかご存じの方がおられましたら、教えて頂けると有り難く思います。
 

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