【山口's HP TOPへ戻る】

バレエ・リュス 〜 踊る歓び、生きる歓び  (2010.8.1)

「バレエ・リュス 〜 踊る歓び、生きる歓び」という映画を見ました。ディアギレフが創設したバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)。ニジンスキー、カルサヴィナ等のダンサー、ストラヴィンスキー、ラヴェル等の音楽家、ピカソ、マチス等の画家という芸術家が集まり、20世紀初頭のパリで一世を風靡しました。一般的には、このバレエ・リュスは1929年のディアギレフ没後解散して消滅したと言われています。しかし、バレエ・リュスのダンサー達は、アメリカ、オーストラリア、そして南米へとその遺産を継承して行ったのです。この映画は、「バレエ・リュス・モンテカルロ」の名称で引き継がれ、1962年に最終的にその歴史を終えるまでの、バレエ・リュスの紆余曲折のドキュメントです。
 
この映画は、2000年にニューオリンズで行われたバレエ・リュッスのダンサー達の同窓会で始まります。彼らはロシア人ですが、ロシアでは踊れず、欧州に逃れて、最終的には、アメリカや南米にも渡りバレエの観客を開拓しました。A・マルコワ、A・ダニロワというディアギレフ時代に踊っていたプリマや、M・スラヴェンスカ、N・クラソフスカ、I・バラノワ、F・フランクリンら、2005年当時、健在だったダンサーによる回想インタビューで進められていきます。バレエ・リュッス時代の人々の思い出話がたくさんでてきて、とても感動的かつ興味深いドキュメントです。バレエ・リュスの団員たちは、ロシア革命、2つの世界大戦など、激動の20世紀を生き、世界中を旅してきました。そこには内紛や嫉妬といったドラマもあります。 しかし、彼らこそ、バレエへの純粋な情熱で、今日のバレエの基礎を築いた人達なのだと思いました。
 
当時の貴重な映像がふんだんに使われ、それを観るだけでも楽しい。「レ・シルフィード(風の精)」、「ジゼル」、「白鳥の湖」、「瀕死の白鳥」などの古典スタンダード。「第五交響曲(チャイコフスキー)」、「蝶蝶」(シューマン)など、の「ディアギレフ」以後の新作のダンス映像も盛り込まれています。
 
「よく残っていたものだ」とびっくりするほどの1930年代の舞台映像や、80歳を越えた伝説のダンサー達の証言および現在の活動を織り交ぜてあり、どのダンサーもほぼ60年も前の話をいきいきと語っているのが印象的です。「彼の身体は聖像のようで完璧だったのよ」と話す84歳の元ソリストの映像、軽やかに美しく踊ってバレエを初めて観る国の人々を驚嘆させる若く美しいバレリーナ・・・。この時代のバレエを観る側の意識は、今のような芸術というよりも「見世物」的な意味合いが強いような感じがしますが、ダンサーが日々研鑽して技術を磨いている状況に今も昔も変わりはないでしょうん。「報酬なんてあってもわずか。だけどこの踊りが踊れるなら…この人と仕事できるなら…これが私の財産なのよ。なんてリッチなんでしょう!」(映画の中のマルコワの言葉)。過酷な旅を続け、時には食うにも事欠く時すらありながらも踊り続けた誇りと情熱に満ちたバレエダンサー達の感動の記録とも言える映画です。
    映画「バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び」(原題・「Ballets Russes」)
    出演: アリシア・マルコワ、 アレクサンドラ・ダニロワ、 イリナ・バロノワ、
    フレデリック・フランクリン、アラン・ハワード、ジョージ・ゾリッチ
    監督: ダニエル・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン
    製作 ダニエル・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン、ロバート・ホークほか
    脚本 ダニエル・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン、セレスト・スナイダーほか
    撮影 ダニエル・ゲラー
    音楽 トッド・ボーケルハイド、 デヴィッド・コンテ

【山口's HP TOPへ戻る】