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12歳のオペラ「バスティアンとバスティエンヌ」    (2009.8.15改) 

モーツァルトは12歳で歌劇を作りました。12歳といえば、小学6年生。そんな子供がオペラを作曲・・・やはり神童です。 このオペラが、「バスティアンとバスティエンヌ」K.50です。
登場人物は、羊飼いの少女バスティエンヌ(ソプラノ)とその恋人の少年「バスティアン」(テノール)、 そして魔法使いの「コラ」(バス)の3人です。バスティアンに捨てられたと嘆くバスティエンヌの悩みを聞いた魔法使いコラスは、二人の仲をもと通りにしてやろうと、バスティエンヌに恋の駆け引きを教えます。バスティアンとバスティエンヌは、いさかいから急転直下仲直りしてめでたしめでたし、という他愛の無いストーリーです。 しかし、私は、わずか12歳の子供がこんなオペラを書けたなんて、とても信じられません。

この作品は、歌の間に自然体のせりふが加えられた「ジュングシュピール(歌芝居)」という形態で、これは、以後、「後宮よりの逃走」を経て「魔笛」へと続きます。 「フィガロの結婚」、「ドン・ジョバンニ」そして「コシ・ファン・トッテ」に至るイタリア風オペラ・バッファとは別の系列のオペラなのです。 当時は、イタリア風のオペラ・バッファの方が高級、ドイツのジュングシュピールは、低俗と見られていたのですが、モーツァルトは、ジュングシュピールの素晴らしさを証明してくれたように思います。

さて、「バスティアンとバスティエンヌ」は、序曲と16曲からなり全部で50分程度の一幕もののジングシュピールで、丁度LPレコードの両面や、CD一枚に入る程度の長さのオペラです。 原作は、ソプラノ、テノール、バスですが、少年と少女が主人公の為、大人の歌手が演じるよりも、少年合唱団のボーイソプラノが演じるケースが多いようです。
    歌劇:バスティアンとバスティエンヌ(Bastien und Bastienne) K.50 (46b)
    ・作曲 1767年?68年 ウィーン

    ・序曲と1幕16曲
      序曲 Allegro ト長調
      バスティエンヌのアリア 「いとしい人は私を捨ててしまったの」 Andante un poco adagio ハ長調
      バスティエンヌのアリア 「私は今、牧場へ行くの」 Andante ヘ長調
      コラの登場(オーケストラ)ニ長調
      コラのアリア 「やさしい女子が私にきくのは」 Allegro ニ長調
      バスティエンヌのアリア 「私のバスティアンがいつかふざけて」 Tempo grazioso ト長調
      バスティエンヌのアリア 「私だって沢山の羊飼いの女のように」 Allegro moderato 変ロ長調
      コラとバスティエンヌの二重唱 「私が与えた忠告を」 Allegretto ヘ長調
      バスティアンのアリア 「あなたに厚くお礼申し上げるのが」 Allegro ハ長調
      バスティアンのアリア 「ああ、あなたは僕に嘘をついている」 Moderato ト長調
      コラのアリア 「ディッキー、ダッギー」 Andante maestoso ハ短調
      バスティアンのアリア 「いとしい人のきれいな頬を」 Tempo di menuetto イ長調
      バスティエンヌのアリア 「あの人は昔は私に身を捧げてくれたわ」 Un poco allegro - Andante ヘ長調
      バスティアンのアリア 「行っちまえ!」 変ホ長調
      レチタティーヴォ 「君の強情は、僕が悲しんでるんでいっそう増したのかい?」 ト短調
      バスティエンヌとバスティアンの二重唱 「行ってしまって、浮気な人!」 Allegro moderato 変ロ長調
      三重唱 「子供達よ!」 Allegro moderato ニ長調 - Allegro ト長調

    ・登場人物
      バスティエンヌ Bastienne (S) 羊飼いの娘
      バスティアン Bastien (T) 恋人
      コラ Colas (B) 占い師(コルシカ島のバスティア村の賢者)
私は、2種類のレコードを持っていますが、どちらもウィーン少年合唱団の団員による演奏です。 一つは、1950年代のモノーラルのLPレコード、もう一つは1986年に録音されたCDです。 音の良さから言えば、もちろんCDですが、私はむしろLPの方が好きでよく聴きます。 歌は文句なしにLP盤の方がうまいですし、録音機が真空管アンプのせいか、モノーラルとはいえ自然な音で、むしろこの天真爛漫な牧歌的作品にふさわしい音作りです。 CD盤は最新の技術によるデジタル録音で、音は澄み切っていて、ステレオによる臨場感もたっぷりですが、なんとなく無機質的な感じがして、あまり好きになれません。

最近は、レコードはCDに変わり、LPレコードの針もなかなか手に入りにくくなってしまいましたが、やはりアナログのLPレコードはCDには無い温さを感じる良さがあると思います。このLPレコード、いつまでも大切にしたいと思います。

【LP盤】

【CD盤】

もう一つ、以前、CS放送・クラシカジャパンで放送された映像の録画があります。
  エマニュエル・リゾ:バスティアン、エルザ・ジュンエル:バスティエンヌ
  シリル・リゴーヌ:コラ、レ・プティ・シャントール・ドゥ・サン=マルク
  ニコラ・ボルト指揮、ルアン室内オーケストラによる弦楽四重奏
2004年のテアトル・デ・ボッフォ=パリジャンでのものです。
何故か、途中から映像が乱れますが、結構楽しめます。
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