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ベートーヴェン交響曲全集       (2002.1.30)

「ベートーヴェンの交響曲9曲のレコード全曲を同一の指揮者の演奏でそろえる意味がどこにあるのか?」と言われたことがあります。確かに、指揮者もそれぞれの曲を演奏するのに得手不得手もあるでしょう。ですから、曲ごとに最も定評のある演奏をそろえた方がよいという理屈です。
でも私は、ベートーヴェンの交響曲に限らず、独りの演奏家が全てを演奏した全集を揃えるのが好きなのです。独りの演奏家が精魂込めて作り上げた全集にこそ、その演奏家の意気込みが感じられるような気がするのです。
そんなわけで、私は、3種類のベートーヴェンの交響曲全集を持っています。
いずれも、アナログ録音ですが、ディジタル録音の最新盤に比べても決して見劣りしない美しい音と素晴らしい演奏です。いわゆる、名盤と言われるものではないので、あまり知られていないもののようですから、簡単にご紹介します。
 
古い順に並べると、
(1)指揮:ルネ・レイボビッツ
   演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団&ビーチャム合唱団
   独唱:インゲ・ボルク(S)、ルート・ジーベルト(A)
      リチャード・ルイス(T)、ルドウィヒ・ウェーバー(B)
   録音:1961年 ロンドン
(2)指揮:ハンス・シュミット・イッセルシュテット
   演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
   独唱:ジョーン・サザーランド(S)、マリリン・ホーン(A)、
ジェームス・キング(S)、マルティ・タルヴィラ(B)
   録音:1965-69 ソフィエンザール、ウィーン
(3)指揮:オイゲン・ヨッフム
   演奏:ロンドン交響楽団&ロンドン交響楽合唱団
   独唱:キリテ・カナワ(S)、ジュリア・ハマリ(A)
      シュチュアート・バーロウズ(T)、ロバート・ホル(Br)
   録音:1976-79年 ロンドン
 
(1)は、LPレコード、(2)(3)は、CDです。
   もっとも、(2)、(3)とも、アナログ録音のディジタル化で、かつて、LPレコ
   ードで出ていました。(1)、(2)は国内版ですが、(3)は輸入盤です。
 
(1)は、私がまだ高校生だったとき、買ってもらったものです。LP5枚組。
   1961年の録音ですが、とても聴きやすい良い音です。テンポは速めで、あまり
   装飾的なところがなくトスカニーニのように楽譜に忠実という感じでしょうか。
   ただ、第9では、途中でピッチがおかしくなります。特に第2楽章がひどい。
   当時一般販売はされず、リーダーズダイジェストより通信販売でした。
(2)は、第9を聴こう、しかもウィーンフィルでとなれば、この盤が良いのではない
   でしょうか。
   ウィーンフィルもこの頃の音が最高に良かったような気がします。
   弦も管も合唱も非常に美しい。「運命&第8」は1969年度レコード・アカデミー
   賞を受賞しています。
(3)は、ヨッフムの充実の指揮のもと、深々とした音楽が形成されています。
   昨今の原点版とか古楽器とかいった、話題豊富な演奏に対して、何の変哲もない
   演奏でしょうが、ヨッフムの芸の奥深さに磨かれた心揺さぶられる素晴らしさです。
   ヨッフムによる伝統あるドイツの職人芸の手作りの音楽が、ロンドン交響楽団と
   優れた合奏団で、骨太の堂々たるベートーヴェンを聴かせてくれます。
3つのレコード、どれも好きですが、あえて言えば、ヨッフムの堂々たる演奏に好感を持っています。


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