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白鳥の湖〜「黒鳥」のグランパドドゥ〜コーダ:西村真由美、内藤悠太  (2012.07.01)

西村真由美は東京バレエ団のバレリーナ。ポジションはソリスト。 主役を踊ることができるのはプリンシパルのみなので、東京バレエ団の舞台では西村真由美が主役を踊る姿をみることができません。 主役として彼女が踊れるのは、他の団体から招かれた場合に限られてしまいます。実際、私が、東京バレエ団の舞台で彼女を見たのは、ジゼルのドゥ・ウィリ役など数回だけです。 西村真由美は、プロポーションがよく、派手さはないけれどおっとりとした育ちの良さがにじみ出ているような素敵なバレリーナなので、かねてから彼女の舞台をもっと見たいと思っていました。
 
You Tubeには、時として、興味深いバレエの映像が載ることがあります。 ふとYou Tubeを見ていたら、至難な「黒鳥」のグランフェッテを、ひたむきに踊っているバレリーナの映像が載っていました。 「美しい!!」と見入っていましたが、ふとコメントを見たら、なんと西村真由美。 西村真由美は、こんなに素敵なダンサーなんだ、改めて知った次第です。
 
この映像は、西村真由美が2010年11月に、希望が丘バレエスタジオの発表会(狛江エコルマホール)で踊ったもののようです。 かって、「発表会で踊るのはコワイ。知っている人が多くて胃が痛くなる」と発表会に招かれたあるダンサーが言っていましたが、 ベテランのダンサーでも、発表会では、普通の公演の舞台とは違った不安を覚えるようです。 今回、西村真由美は子供たち中心のこの発表会に、模範演技者として招かれたのでしょうから、なおさらです。 「子供や父兄の前で失敗は許されない・・・」と思ったことでしょう。 表情がこわばり、ハラハラしたところはあったものの、プレッシャーに打ち勝って、笑顔を絶やさず最後まで踊りきったのは偉いと思いました。
 
舞台にアクシデントはつきもの。とりわけグランフェッテでは起こりがち。実際、私も、途中でトゥ崩れて倒れそうになったダンサーを幾度か見ました。 どんなにベテランのダンサーでも舞台に立つ前に不安を覚えるといいます。西村真由美も舞台の中央に歩み出て、エントリーのブーレを刻んだ時の表情は強張っていました。 でもフェッテに入ると調子が出てきたのか表情はなごんできました。なお、グランフェッテは、前半に、ダブルやトリプルを入れて技巧をアピールする人もいますが、西村真由美はオーソドックスにシングル回転のみでした。 かって、前半ダブルを入れて、後半力尽きてメロメロ・・・となったダンサーもあったし、 冒険しすぎて失敗するより、無理せず確実に回りきろうという西村真由美の堅実な踊りには納得です。 歯を食いしばって難しいパに挑戦する西村真由美の健気な姿に、自然に観客の拍手が沸き起こります。彼女にもそれが聞こえたのでしょう、表情がなごみました。 25回目位から軸が右にズレてきて危うくなり、「もう少しだ、頑張れ!!」と声を掛けたくなったけれど、必死に持ちこたえて32回を回りきったのは偉い。 「失敗しなくて良かった!!」と、ホッとした表情が美しかった。 これで気を良くしてか口元に笑みが浮かばせ、ピケトュール、シェネで軽快に舞台を飛び回り、続いて後方にまっすぐ足を伸ばしたアラベスクのポーズに5回も挑戦。 特に3回目は、ピタッと決めたポーズをグッと堪えてじっと維持。後方へすっきりと伸びた足、床に突き刺さるようなトゥの先端からまろやかに伸びた甲のカーブの美しさと、アンオーに挙げた腕と神経の行き届いた指先は彼女ならではのもの。 4回目を終えたとたん、前方につまずくように踏み出してハッとしたのはご愛嬌。必死に堪えて立て直し5回目もピタッと決めたのは流石。 最後のピルエットでスピードが落ちて、パートナーに腰を回してもらったけれど、残す力を振りしぼってフィニッシュ。 沸きあがった拍手に嬉しそうな笑顔。お見事でした。 息も絶え絶えに胸は大きく波打って、ハァハァという吐息が聞こえるよう。ジーンと胸が熱くなり、思わず「うまくいって良かったね!!」と声をかけたくなった。 至難なパの連続にも、過度の緊張にもめげず、終始柔和な笑顔を絶やさなかったのは立派。 本当に彼女の笑顔は美しい。こんな笑顔をみると、こちらも嬉しくなってしまいそう。 レベランスでは、額や胸から汗が噴出し、エスコートされた内藤悠太に 「上手なサポート有難う!」と感謝の眼差しを投げかけ、 「無事終わって良かった」という安堵感が伝わってきて、鳴り止まない拍手に「ありがとう!!」と深々と頭を下げる姿に、ほのかな気品が漂う。 「お疲れ様!!」と心から労ってあげたい気持ちになりました。死力を尽くして踊りぬいたバレリーナは美しい。品格を感じます。一層、西村真由美が好きになりました。
  こんな素敵な映像がネットで見られるなんて嬉しいことです。You Tubeにアップしてくれた方に感謝です。 欲を言えば、コーダだけでなく、アダージョやヴァリエーションもアップして頂けると有り難いのですが・・・。
(追)2013年3月31日付けで、西村真由美は、東京バレエ団を退団したそうです。理由はわかりませんが、こんな素敵なダンサーを辞めさせてしまう東京バレエ団の気が知れない。
「西村真由美さん!!。どこに移ってもあなたなら大丈夫。頑張ってください!!。」

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