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カルメン:アスィルムラートワ、ヤン・ブレックス (2007.7.7)
アルティナイ・アスィルムラートワが踊ったローラン・プティ振付のビゼー「カルメン」の映像があります。プティの芸術監督25周年記念のマルセイユ・バレエ公演のライブです。ドン・ホセは、ヤン・ブレックス。この公演には、デビューから日の浅い初々しいラッカラ、・・・などが共演の豪華な舞台でしたが、私はこのアスィルムラートワのカルメンが最も印象に残りました。
アスィルムラートワはカザフスタン生まれで、多分この頃は30代半ばだと思います。キーロフ仕込みで上品で静かな物腰の彼女は、「眠りの森の美女」のオーロラ姫、「海賊」のメドーラといった可愛いプリンセスのイメージの強いダンサーですが、この「カルメン」ては、プリンセスの気品を損なわないながらも、美しく色っぽいカルメン像を作り出しています。戦う女プリセツカヤのカルメンとは正反対の、繊細な中に漂うほのかなお色・・・、妖しい魅力を感じるカルメンです。すっきりと伸びた長い脚を最大限に使って、プティの理想を忠実に再現したと思わせるような、美しい女性美を表現しています。本来の悪女的なカルメンのイメージとはやや違うように思いますが、気品と色気を兼ね備えた優雅なカルメンで、これはこれで、なかなか魅力的です。女性讚美と言われるローラン・プティ。彼を満足させるには、美脚であることが最低条件だと思うのですが、このアスィルムラートワも、惚れ惚れするような素晴らしい美脚っぷりを披露しています。
彼女の踊りを観ていると、ワガノワ・スタイルとはこういうものなんだなとしみじみ感じます。しなやかに余すところ無く伸びる筋肉、非の打ち所の無いプロポーションとライン、誇り高くて、近寄るのも憚られるような、完璧に造形されたバレリーナという感じなのです。両足のトゥで足踏みをするところは、床に穴があくのではないかと思うくらいの力強く激しい動き。でもポアントの先の少しのズレもなく正確なのは驚きで、クラシックの技術の完璧さを見せつけられます。さすが、キーロフで鍛えられただけのことはあります。
それにしても、西欧女性にはないエキゾチックな風貌の、たぐいまれなアスィルムラートワの魅力を最大限に引き出したローラン・プティも、流石だと思います。
YouTubeにこの映像が載っていました
→。
カルメン:アルティナイ・アスィルムラートワ(Altynai Asylmuratova)
ホセ:ヤン・ブレックス(Jan Broeckx)
ローラン・プティ・ガラ<国立マルセイユ・バレエ団芸術監督25周年記念>
1997年6月25日 マルセイユ港・特設野外ステージ収録
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