何とも微笑ましい、とても素敵な、眠りの森の美女~第3幕グラン・パ・ド・ドゥの映像が、YouTubeに載っていました。
踊っているのは、韓国ユニバーサルバレエ団のキム・チェリ
(김채리Chaelee Kim)
とイ・スンヒョン
(이승현Seunghyun Lee)
。
この映像は、2012年4月のユニバーサルバレエの全幕公演の録画をKBSが放送したもの一部でようです。
キム・チェリの階級はソリスト、イ・スンヒョンはプリンシパル。先輩格のイ・スンヒョンは、最初緊張気味だったキム・チェリを力強くかつ優しくサポートしていました。
このグラン・パ・ド・ドゥのアダージョでは、キム・チェリは最初険しい表情で、バランスがギクシャクしたりしたところもあり、緊張が感じられました。
素晴らしかったのが見せ場のフィッシュ・ダイブ。
一回目、グラッとしたけれど、むしろ必死に堪えた姿に感動、大きな拍手が沸きました。
二回目、三回目はバッチリ。背中をくの字型に折り曲げて、脚を垂直に上げ、頭を起こすのが理想的といわれているけれど、まさにそのポーズ。
パートナーのイ・スンヒョンのサポートはとてもうまい。ファンへミンを相手に踊った時もそうだったけれど、 イ・スンヒョンの動きを良く見て、しっかりアシストしています。 イ・スンヒョンのウェストをデリケートに支え、イ・スンヒョンが完全にバランスを確保したのを見届けてそっと手を離す・・・・理想的なサポートです。 終盤、オーロラが座った体勢から右手で王子につかまりアチチュードで立ってプロムナードする場面、 トゥで立った右足と支えの右腕がギクギクして必死に体の傾きを堪えるキム・チェリを、ガッシリと支えたイ・スンヒョンは偉かった。 続くアラベスク・パンシェでは、キム・チェリは、これ以上挙げたら前につんのめってしまうというまで左足を高く挙げて頑張った。 恐怖のあまり、パートナーの支えの手から目を離せない人もいるけれど、キム・チェリはしっかりと頭を上げて正面を見つめたポーズを決めました。 イ・スンヒョンのサポートを信頼しきっていたからでしょう。 オーロラの場合、この場面、脚を高く上げると下品と言われるのですが、キム・チェリは、180度近くまで挙げたけれど全然下品に感じなかった。 背中からトゥの先まで惚れ惚れするくらい美しい線を描き、気品にあふれていました。 クラシック・バレエのアダージョは女性ダンサーがバランスを保ってその技能や才能を披瀝したり、 ゆったりしたテンポに添って完璧な均衡と美しいボディ・ラインを誇示する見せ場を盛り上げる場面。 このアダージョ、女性は男性のサポートがなかったら何も出来ない。男性のがっちりとした支えがあればこそ、 女性は細いポアントで立って上安定な難しいポーズを決めることができるのです。 ダンスール・ノーブルとは、イ・スンヒョンのような優しくしかも力強いダンサーを指すのでしょう。 続く一人で踊るヴァリエーションでは、キム・チェリは要所要所を危なげなく決めて笑みも見えました。 この部分は、トゥで立った踊りが大部分ですが、とりわけポアント立ちのアラベスクは美しかった。 フィニッシュのシェネでは途中から拍手がおき、ミスなく終えて深々とお辞儀する姿が可愛らしかった。 グラン・パ・ド・ドゥ最後の二人のコーダでは、キム・チェリは軽快で跳んでいるよう。フィニッシュのピルエットをピタリと止めたときは、さすがにホッとしたのでしょう、
安堵の表情を見せました。
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「眠りの森の美女~第3幕グラン・パ・ド・ドゥ《の映像には、以前、同じ韓国ユニバーサルバレエ団の
ファンへミンとイ・スンヒョンの踊ったものが、YouTubeに載っていました。
これもとても素敵なので、ついこれと比較して鑑賞ししたくなります。
プリンシパルのファンへミン(황혜민 Hyemin Hwang)は、静かな物腰、清楚かつ理知的な雰囲気,、派手さはないけれど、端正・丹念なしっとりとした踊り。
力を入れて曲げたら折れてしまうのではと思うほど、ほっそりとした華奢な体型なのに比べると、キム・チェリは幾分ふっくらとして健康的。
ファンへミンの体が細すぎるわけではないのですが、ある程度、女性らしい体の線があるキム・チェリに、一層の魅力を感じます。
インタビューでも
『バレエをするには少し大きい方だと思うので、普段のスタイル管理に神経を使おうと努力しているんです。
背が高くて、お肉が少しついただけでもパッと目に付くので、
キープ、あるいは減量をしようと、バレエ以外にも他の運動をコツコツとやっています。』
と言っていました。
キム・チェリはフィッシュ・ダイブを脚を垂直に上げ、頭を起こた理想的なポーズで決めて見事だった。
ファンへミンは硬さが感じられ、やや足がもつれて危うかったのが惜しい。何よりキム・チェリは若々しい。バレエは"若さの芸術"と言われるけれど、本当にそう感じる。
キム・チェリはクラシックチュチュがとても良く似合う。
シャープなトゥにまろやかな曲線を描く甲、優雅に揺れる清楚な短いチュチュからすっきり伸びた美しい脚、
それに、時折コトンと心地よく響くトゥシューズの音。
若いけれど落ち着きある大人の感じで、妻となる成長したオーロラ姫のイメージがよく出ていました。
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こうなると、是非、ローズアダージョを踊るキム・チェリが見たくなるのですが、YouTubeには何故かバランスの部分がカットされています。ローズアダージョの出だしの部分とヴァリエーションは載っているのに、
ますが、肝心のバランスがカットされているのはどうしてなのでしょうか?。是非、バランスの部分も乗せて欲しいものです。
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