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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のオーケストラと東京シティ・バレエ団のダンサーが同じ舞台上で共演した公演を見てきました。プログラムの第1部は、シベリウスの交響詩「フィンランディア」とチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、第2部は、ストラヴィンスキーのバレエ「火の鳥」組曲。今年はストラヴィンスキー「火の鳥」の初演から100年目ということで、「火の鳥」を取り上げたそうです。
第1部の最初はチャイコフスキーのシベリウスの交響詩「フィンランディア」。このコンサートでは、ステージの前にバレエの為の空間を配置し、その分だけオーケストラが引っ込んでいることから、オーケストラの背後に補助反響板を使ってホールの音響を補正したそうで、バスなどの楽器の音が良く響いているように感じました。チャイコフスキーのバイオリン協奏曲の石亀協子さんのソロは、オーケストラとの融合も良く、とても楽しめました。この時まで私は、石亀協子さんというヴァイオリニストの名前すら知らなかったのですが、いかにも秋田美人という感じの可愛らしい人で、ヴァイオリンの音がややオーケストラの音に負ける感じのところがあったものの、音色は艶があって美しく、壊れんばかりに小柄な体を動かして、ひたむきに弓を弾く姿に感動しました。
第2部はいよいよ、ストラヴィンスキーのバレエ「火の鳥」。バレエ「火の鳥」の舞台は、不死の魔王カスチェイの城の庭園。カスチャイとカスチェイの手下の怪物たちの踊る中、火の鳥がやって来きます。そこへ火の鳥を追っていたイワン王子が現れ、忍び寄って火の鳥を取り押さえます。火の鳥は自らの赤い羽根を差出し、イワンに見逃してもらい飛び去ります。やがて魔王カスチェイの城から、魔法にかけられた王女たちが現れ、踊り始めます。それを見ていたイワン王子は、王女の一人と恋に落ちます。轟音と共に城門が閉まり始め、王女達は驚いて城内へ走り去り、門は固く閉ざされます。魔王カスチェイの手下の怪物達が現れ、イワン王子を捕らえたところへ、魔王カスチェイが現れます。イワン王子はすかさず火の鳥からもらった赤い羽根を高くかざすと火の鳥が舞い降り、轟音と共にカスチェイの城は消え去り、魔王カスチェイも滅び去ります。魔法から覚めて正気を取り戻した王女たち。イワン王子は王女と結婚し、大団円を迎えます。
全幕は、1910年に初演されたのですが、今回は1919年に作られた組曲版でした。組曲版とは言え、見所はすべて含まれていて、充実した舞台でした。今回、バレエの舞台はオーケストラの前にあるうえ、私の席は舞台の近かったため、トーシューズのキュッキュッという音はもちろん、ダンサーの息遣いまで聞こえててくるという、迫力を楽しみました。
1.序奏、2.火の鳥の踊り、3.王女達のロンド、4.魔王カスチャイの凶悪な踊り、5.子守歌、6.終曲
東京シティ・フィルのオーケストラは場面場面でメリハリをつけた素晴らしい演奏でしたし、東京シティバレエのダンサーもこのオーケストラを背中に受けて、ダイナミックに、また情感たっぷりに、美しい踊りでした。志賀育枝さんは、「火の鳥」は初めてとのことですが、この役をよく理解して、頭から足の先、そして両手の指の先まで「火の鳥」そのものという感じで、テンポが速く、技術的にも難しいこのロシアのおとぎ話のタイトルロールを、見事に表現していました。クライマックスで見せたグラン・ジュテの高さと美しさは驚異的で、客席の溜息を誘いました。志賀さんはご自身のブログで、「『オケwith』は毎回、緊張する舞台です・・・オケに背中を向けてるので。でも今回もそんな中、楽しませていただきました!!」と書いていましたが、オーケストラと同じ舞台で踊るのは、いつもとは違った難しさがあったことでしょう。
それにしても、この「オーケストラwithバレエ」、内容が充実している上に、一度にオーケストラとバレエを楽しめて、S席4000円は安い。これからも、是非続けて欲しいものです。
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オーケストラwithバレエ「火の鳥」
第1部:オーケストラ
シベリウス・交響詩「フィンランディア」
チャイコフスキー・「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」
ヴァイオリン:石亀協子
飯守泰次郎指揮、 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第2部:オーケストラ with バレエ
ストラヴィンスキー・バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
構成・振付 石井清子
配役 火の鳥:志賀育恵、イワン王子:春野雅彦、魔王カスチェイ:青田しげる、
王女:若林美和、ほか、東京シティ・バレエ団
2010年10月3日 ティアラこうとう 大ホール
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