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モーツァルトの歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」のレコード       (2011.02.08)

「フィガロの結婚」第1幕第7番スザンナ・バジリオ・伯爵の三重唱で、テーブルかけを持ち上げるとケルビーノが出てきて、
  伯爵:「こりゃ何たることじゃ!!」、
  スザンナ:「ああどうしましょう。神のおぼしめしに任せましょう」、
  バジリオ:「女はみんなこうしたもの。とりたてて珍しいことではござらぬ」・・・・というやりとりがあります。
 
「コシファントゥッテ」は、このバジリオの言葉を題名にした喜劇です。 このような一見ナンセンスとも言える題名と喜劇のせいで、19世紀には大分低俗な歌劇と見られていたそうです。 でも、登場人物の数が少なく、しかもそれが一対ずつの組に分けられているためにそれぞれが特徴あるアンサンブルとなっており、このオペラ独特の美しさは、このアンサンブルによるものだと思います。私はこのオペラが、モーツァルトのオペラの中で最も好きなものの一つです。もともとモーツァルトが大好きですから、モーツァルトを含めた全作曲家のオペラの中で最も好きなものの一つと言うことになります。

私は、4種類の全曲レコードを持っています。
 
第1は、リッカルド・ムーティ指揮ミラノ・スカラ座でのライブのレーザーディスク。華やかでウィットに富んだこのオペラでは、ダニエラ・デッシーとデロレス・ツィーグラーが出演者達をリードしています。 収録は1989年と新しく、映像がついている上に、ライブにしてはノイズも少なく良い音です。
 
第2は、コーリンデービス指揮コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団によるコンパクトディスク。 音の良さではこれが一番だと思います。歌手は、ソプラノ:モンセラ・カバリエ、メゾソプラノ:ジャネット・ベイカー、バリトン:ウラディミーロ・ガンツァロッリ、テノール:ニコライ・ゲッダ。 デイヴィスのやや速目のテンポに乗って、6人の歌手たちは理想的なアンサンブルを繰り広げていますが、コヴェントガーデンの音はなんとなく乾いた感じがします。もう少し潤いがあったらと思います。
 
第3は、カールベーム指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団によるアナログLPレコード。1955年の録音です。 歌手は豪華です。ソプラノ:リーザ・デラ・カーザ、メゾソプラノ:クリスタ・ルードヴィヒ、バリトン:エーリッヒ・クンツ、テノール:アントン・デルモータそしてバリトン:パウル・シェフラーです。 ウィーンフィルは全体にゆったりと流れるような美しい演奏ですが、アンサンブルの良さでは、次のベームの新盤に一歩及ばない気がします。
  
第4は、カールベーム指揮フィルハーモニア管弦楽団によるもう一つのアナログLPレコード。 録音は、1963年ですから音は決して良くありません。もちろん第2、第3のレコードと同じ、映像などない、音だけです。こんなことを言うとオペラ好きの方に叱られるかもしれませんが、私は、レコードに関する限り、バレエは観るものですが、オペラは聴くものと思っています。 つまり家で聴く限り、オペラは必ずしも映像は必要ないのです。耳で聴いて、ステージを想像すればよいと思います。 このレコードは、今では絶対に不可能と思われるキャスティングとベームの見事な統率力で、このオペラ独特のアンサンブルの良さが際立って、素晴らしい演奏になっています。 出演者は、ソプラノ:エリザベート・シュワルツコップ、メゾソプラノ:クリスタ・ルードヴィヒ、ソプラノ:ハニー・ステフェック、テノール:アルフレッド・クラウス、バリトン:ジョセッペ・タディそしてバス:ワルター・ベリー。当時の超一流の歌手を集めた豪華版なのです。

私は第4番目のべームの新盤が最も好きで、何度も何度も聴きました。 LPレコードですから片面30分弱。何度もひっくりかえし、その度にほこりをとらなければならないので面倒ですし、LPレコードの特有のパチパチというスクラッチノイズも増えましたが、やはり愛着があって一時も手放せません。これからもこのLPレコードを聴いていこうと思います。

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