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瀕死の白鳥:ニーナ・アナニアシヴィリ   (2005.2.20)

ニーナ・アナニアシヴィリが踊った、「瀕死の白鳥」の映像があります。1992年にBUNKAMURAで録画されたもので、「アナニアシヴィリと世界のスター達」というビデオに含まれています。
 
子供の頃、シヴィリはバレエではなく、フィギュア・スケートの選手を目指していました。彼女は、フィギュア・スケートのために、クラシック・バレエを習い始め、 10歳のときにフィギュアのジュニアの部で世界チャンピオンとなったのですが、そのときの演目がサンサーンスの「白鳥」でした。それが縁でバレエ界にスカウトされ、今日の世界的バレリーナのきっかけになったのです。彼女の抜群のバランスとリズム感は、このフィギュア・スケートによるところが大きいのではないでしょうか。
私は、シヴィリが踊るフィギュア・スケート版の「白鳥」を見たことはありませんが、このバレエ版の「瀕死の白鳥」を見ると、トゥで立った力強い脚や、片足のアラベスクの粘り強いポーズは、フィギュア・スケートのスパイラルを思わせるところがあります。そういえば、子供の時フィギュアをやっていた下村由理恵さんも、同じような踊りをします。やはり子供の頃に体で覚えた技術は大きいように思います。
シヴィリの「瀕死の白鳥」は、彼女のバレエにあふれている生命力を最期の瞬間まで燃やし尽くして死を迎えるという解釈に徹しているようで、今まで見た「瀕死」とはひと味違う、力強さを感じます。
とはいえ、最初の登場の優雅に波打つアームスの動きは、しなやかに、白鳥の翼そのもののように素晴らしいものです。結構激しい振りにもかかわらず、それがわざとらしくなく、ごく自然に感じるのは、彼女の内面の充実を物語っているように感じます。一口で言うと、圧倒的な生命力がぎりぎりまで燃え尽きて死に転化されていくような、粘り強さを感じさせる「瀕死の白鳥」だと思います。
こんな小品を踊っても、やはりシヴィリは、プリマとしての華と風格を持った、大スターを感じさせます。

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