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テレビ番組「ドガと踊り子」の面白さ (2004.1.20)

先日NHK BSハイビジョンで放送された「ドガと踊り子」。とても楽しく見ていました。
印象派を代表する画家エドガー・ドガ。彼は、19世紀のパリを舞台に、生涯、踊り子=バレリーナ達の世界をテーマとして描き続け、「バレエの画家」として、広く愛されています。私は絵にはとんと疎く、どれが良い絵で、どれが良くない絵かという区別はできませんが、少なくともドガの絵はわかりやすいし、ドガが当時の他の画家と違い、自分と同じ社会に生きるバレエの「踊り子」に題材を求め、それを芸術の対象として生涯描き続けたことに共感を覚えます。
当時の画家達の多くは、歴史的英雄や神話の場面、貴族などに題材を求めたようですが、パリの下町に生まれたドガは、自らと同じ社会の「踊り子」に目を向け、彼女達の舞台姿や舞台裏を描き続けました。今にも絵から出て踊り出すように感じさせるような大胆な筆で描き出される「踊り子」の姿からは、ドガが彼女達バレリーナを自分と同じ芸術を追求する仲間として暖かく見つめている優しさが感じられます。
 
アメリカの放送局・WNETとNHKの共同制作番組ということでしたが、パリ・オペラ座の内部の紹介や楽屋のバレリーナの表情、バレエ学校の練習風景、そしてラ・シルフィードなど、実際のバレエの場面の挿入もあり、とても楽しめました。ドガの作品を精緻にたどりながら、美術の歴史に革命を起こしたとも言われる印象派の草創期に「バレエの画家」と言われた生きたドガは、バレエを通じて「何を見つめ、何を描こうとしていたのか?」を追求していました。またドガが人間の肉体ですべてを表現するバレエという芸術をどんなに愛していたかがわかります。 また、ドガは、華やかな舞台だけではなく、幕間にくつろぐダンサーや幕が下りた後の疲れきったダンサーの表情などを細かく観察し、キャンバスに忠実に表現することに努めていたかが、紹介された多くのスケッチの映像から推し量ることができます。
約1時間という放送時間の制約の中に、ぎっしり詰まった内容という感じで、「ドガと踊り子」の片鱗を知ることができる、とても興味深い番組でした。


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