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ドン・キホーテのグラン・パ・ド・ドゥの楽しさ

 
パートナー同士が協力しあい、競い合い、極限の美を創出するグラン・パ・ド・ドゥ。クラシック・バレエの華です。
ドン・キホーテのグラン・パ・ド・ドゥは、とりわけ華やかな踊りです。
アダージョでは、長ーいバランス、コーダでは軽快なフェッテと見所が一杯あります。
数分の間に、静と動という正反対の技であるバランスと回転のどちらもこなさなければならないのでバレリーナにとってはとても大変でしょう。
バランスと回転のどちらも得意というバレリーナはあまり居ないようです。ローズアダージョでうっとりするほどの見事なバランスを見せるマーゴ・フォンティーンですら、自らピルエットは苦手と言っているほどです。
ところが、日本が生んだ世界のバレリーナ、森下洋子さんはこのどちらもお得意のようです。
 
私も幾度か森下洋子さんのドンキホーテのパ・ド・ドゥを見ましたが、全幕ものの中では、1977年ころの舞台が印象にのこっています。若い頃の踊りですから現在のような内面的な充実度は少ないものの、軽やかさと新鮮さという面では最高でした。
私はバレエは全幕通して観るのが本来だと思います。ガラ・コンサートは華やかですがどうしてもテクニックが目に付いてしまいます。グラン・パ・ド・ドゥは全幕の中でこそ輝くのだと思います。そんなわけでパ・ド・ドゥを集めたガラ・コンサートはあまり好きではないのですが、あえてガラ・コンサートの中から選びますと、1984年にロスアンゼルス・バレエ・フェステフィバルでの森下洋子さんの踊りのビデオが素敵です。仕事でアメリカへ行った時にメトロポリタン歌劇場の近くのバレエ用品の店で買ったものです。
 
私のホームページをご覧になって下さる鈴木さんというとても熱心なバレエ・ファンが居られます。鈴木さんは、とても森下洋子さんがお好きで、このビデオの踊りについて以下の感想を送って下さいました。紹介させて頂きます。
『キトリの粋な感じと気取った感じそれにバジルをからかっているような大人っぽさに、可愛らしさまで、あの10分くらいで表現されていて(ヴァリエ−ションだけでも)本当にただただ見入ってしまいました。ただ、気取ったスペイン風に、とだけ表現する方が多いのに対して、一人に人間にもいろいろな面があるように、キトリという女性の色々な部分をありのままに表現されていてすごく感動しました。
哲太郎さんもバジルにしては控えめでしたが、結婚式の場面ですしその品もとても良かったと思います。
テクニックについてはもう完璧ですね!。バランスの素晴らしさは言うもでもないですし、それに高速の回転の次のゆっくりとした動きの運びなど、絶妙です!』
以上です。私もその通りだと思います。
 
そうそう、フェッテといえば白鳥の湖の「黒鳥の踊り」を思い出しますが、森下さんは黒鳥もとてもお上手ですね。32回のグラン・フェッテ・アントゥールナンをいとも軽々とこなします。でも、この影には人一倍の厳しい練習の積み重ねがあるにちがいありません。彼女の努力の結晶だと思います。
 
それから、最近もう一つ、テレビで素敵なドンキホーテのパ・ド・ドゥを見ました。ABTのパロマ・ヘレーラの踊りです。アダージョでの二度のアチチュードバランスが実に見事。サポーターの手を離してアンオーに挙げたまま、懸命に頑張ります。特に二度目は、ポアントの足首を小刻みに動かして上体の揺れを堪えて、10秒ちかくもバランスを保ってみせました。観ているほうもドキドキ、固唾を呑んで見守って、終わったと同時にホッとするのです。
笑顔を見せる余裕がないほどの真剣な表情に必死な気持ちが伝わってきます。最後のリフトからのフィッシュダイブを決めてホッとして、初めて笑顔を見せました。若いバレリーナが歯を食いしばって懸命に踊っている姿は実にすがすがしくて素敵ですね。このような経験を積んで立派なバレリーナになっていくのだと思います。また、コーダでのグランフェッテも軸足がまったくずれず見事でした。
今後がとても楽しみなダンサーです。彼女も要チェックですね。



キトリ 収録地/収録年等 感想
森下洋子 ロスアンゼルス・バレエフェスティバルでのガラ/1984年/CT バランス、フェッテとも最高のキトリでした。
吉田都 ローザンヌでの熊川哲也とのガラ/1993/NHK-TV 若々しく元気な踊りです。ただ、熊川のサポートがチョット。都さんが踊り難そうに思えるのですが
酒井はな 青山バレエフェスティバル/1994年/NHK-TV やや粗削りのところもありますが、若々しく元気はつらつなキトリ。小嶋直也さんのサポートはいまひとつでした。
渡部美咲 バレエ誕生/1996/TV-東京 グランフェッテでは、トリプルを連発して超ハッスル。 元気一杯ですが、もう少し繊細さが欲しいところ
パロマ・ヘレーラ ABTのガラ/1999年/NHK-TV 若さ一杯、長ーいバランスは新記録。 パートナー:アルヘル・コレーラのサポートもうまい
オルダス オーストラリア劇場/1975年/LD バランスは長くて見事だが、おばさんのような感じが気になります。ヌレエフのサポートはさすが
ハーベイ ABT/1983年/LD 華やかでバランスはバッチリ決まり見事です。もう少し繊細さが あるとより素敵なのでは
イエーガー 日本バレエ協会公演/1989年/LD 元気一杯でバランスも長く見事です。いかにも楽しんで踊っている 感じは余裕ですね
シビリ ボリショイ劇場/1991年/LD バランスもフェッテモ上手でそつがない。 でも、なぜか感動しないのはなぜなのでしょう
セメニャカ キーロフ劇場/??年/LD とても珍しい、若いときのリハーサルの映像。 粗さが目だちますが、将来のプリマを予感させます




 
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