グラン・パ・ド・ドゥは、男女が奏でるハーモニーが醍醐味ですが、お互いが協力し合う微笑ましさに溢れた、ドン・キホーテ〜グランパドドゥ〜アダージョの映像が、YouTubeに載っていました。
コメントには、Seoul Ballet Gala Concert part 1とあるだけなので、出演者はわかりませんが、おそらくソウルでのバレエのガラ公演の一部でしょう。
演じているダンサーは二人ともとても若いようで、バレエ教室の発表会かもしれません。
このSeoul Ballet Gala Concertでは、ジゼル、眠りの森の美女、海賊のパ・ド・ドゥ等も踊られましたが、このドン・キホーテ〜のパ・ド・ドゥもとても楽しめました。
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キトリを踊っているのは、優れたプロポーション、伸びやかな爪先と言ったバレリーナの資質を備えた美しく、とても上品な佇まいの女性です。
しかも単に上品なだけでなく、大切に大切に育てられた良家のお嬢さんといった感じで気品に溢れ、眺めているだけで、幸せになってしまいそうで、 バレリーナという憧れの対象に相応しい素敵な女性です。。
色白の素肌、純白のタイツに覆われた長く脚、似合った真紅のクラシック・チュチュと赤い飾りのお団子ヘア、どれもがとても魅力的です。
彼女の周りにふわっと漂うような優しさ、育ちの良さを感じさせる慎ましやかさと気品、均整のとれた細くしなやかな体のライン、優美な仕草。ほんとうに見とれてしまいました。
私がバレエが好きなのは、世俗的な日常で忘れがちな気品というものをやさしく見せてくれるからです。
この女性は、この「気品」を備えた数少ない舞姫の一人でしょう。
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のりが良く、どちらかというとアクロバティチック的な要素の強いドン・キホーテ〜パ・ド・ドゥですが、これを慎ましやかさと気品を備えたこの女性が踊ることで、曲芸的なギスギスした雰囲気が消え、
優雅さが増して、アートを超越したとも言うべき、美しさが感じられる踊りになっています。
とは言えこの女性は決めるところはしっかり決めて、とても端正にしっとりと踊っていました。
痩せぎすのバレリーナが多い中、幾分ふっくらした体系が新鮮で、真紅のクラシックチュチュの裾から覗く太腿からは、ほのかな色気を感じられるけれど少しも嫌らしさがなく、むしろ清清しいくらい。
クラシックバレエでは色気はご法度と言われるけれど、こんな爽やかなお色気だったら、そんなことどうでも良いとという気持になってしまう。
加えて繊細で上品な身のこなしには、誠実さがにじみ出て、かなり緊張しているようだけれど、時折見せるほのかな微笑みがとても魅力的。
この女性、最初かなり緊張していたようで、アントレ直後のプロムナードでは男性に捉まった右腕がギクギクして表情も強張っていましたが、直後の8回転のピルエットを終わらせると調子が出てきたようで表情も和らいできました。
パートナーの男性は女性の動きを良く見て、しっかりサポートしていました。 パ・ド・ドゥのアダージョでは、女性はポアントのバランスなどの高度の技への不安から、否応なしに緊張します。
パートナーの男性は、こんな女性を力強くかつ優しくサポートして女性の緊張をやわらげ、女性が最高の美しさを発揮できるようにすることが使命です。
二人で助け合って作り上げるハーモニーこそ、パ・ド・ドゥの醍醐味なのです。
男性が頼りないと女性はさらに不安になってしまうでしょう。
「心配するな、俺が助けてあげるから」と女性を信頼させ、女性の最高の美しさを引き出すのがダンスールノーブルの役目だと思います。女性に不安を与えないよう、男性は堂々としていなければならないのです。
この男性、サポートするのが精一杯という感じで、表情は強張って辛そうでした。もう少し柔和な表情でいて欲しかった。
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そんな男性のサポートを受けながら、精一杯踊っていたこの女性。特に印象に残ったのが男性に腰を支えられて回るピルエット。
かって日本のプリマ級の女性が、回転が止まりそうになって男性に無理やり腰を回されていたのを見たけれど、見苦しいことこの上なかった。
その点この女性のピルエットはとてもスムーズ。男性は軽く女性の腰を支えているだけで、とてもスムーズ。自力で回る確かな技術がを持っているのでしょう。
それに、左手を腰に、高く上げた右手を男性の支え手を離して、ポアントで立ったまま3度ポーズを保つ至難な技。グッと堪えたバランスの美しさに、ハッと息を呑みました。
難しい箇所にさしかかると、やや険しい表情を見せるけれど、それがかえって魅力的。頑張って踊る健気な姿は、本当に美しいものです。
踊り終わって、胸と背中にうっすらと汗が滲み肩で息をして・・・、ホッとした姿に、思わず『お疲れ様』と声をかけたくなりました。
ただ踊られたのはアダージョだけで、ヴァリエーションやコーダが無かったのは残念。せめて見せ場のコーダのグランフェッテだけでも踊って欲しかった。
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