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ドンキホーテ〜第2幕夢の場「ドルシネア姫のヴァリエーション」:渡邊順子   (2001.10.24)
バレエ「ドン・キホーテ」はモスクワのボリショイバレエ劇場から依頼されて、マリウス・プティバが振付したもので,スペインの作家セルバンテスの同名の小説から登場人物がとられています。 この作品の中で騎士物語にとりつかれた「ドン・キホーテ」が空想の中で作りあげた理想の姫君ドルシネアを追い求めて旅にでます。 港町バルセロナではドルシネア姫そっくりのキトリと床屋の青年バジルが熱い恋をしています。 駆け落ちした二人とそれを追ってキトリの父ロレンツォ,ドン・キホーテらが風車小屋のそばのジプシーの野営地にやってきます。 ジプシー達は彼等を人形芝居でもてなしますが,物語の世界と現実を混同している「ドン・キホーテ」は芝居の中の悪者をやっつけようと、背後にそびえる風車を悪の化身とまちがえて突進して気を失ってしまいます。 深い夢の中で「ドン・キホーテ」は追い求めていた理想の姫,ドルシネア姫に会います。
 
このシーンは夢の場といわれ、ドルシネア姫、森の女王、そしてキューピットが美しい踊りを競います。文字通り「夢」であり、とても美しい場面なのです。 中でも、ドルシネア姫の踊りは美しく、私が好きなものの一つです。 ドルシネア姫は、通常、キトリ役のバレリーナが二役で踊ります。 白鳥の湖のオデットとオディールのように、一人のダンサーが違う役をどのように踊り分けるかを観るのも楽しみです。 でも、ダンサーの体力面等の理由から、キトリとは別のダンサーが踊る場合もあります。 確かに、この後に続く、キトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥは、リフト、バランス、グランフェッテと体力的にも精神的にも、相当きついものがあり、ドルシネア姫を踊って疲れているダンサーがさらにこれを踊るのは、非常に、大変なことでしょう。
 
私のコレクションの中に、HPで仲良くさせて頂いている渡邊順子さんのとても素敵な映像があります。 彼女は、とても丁寧に、しかも上品にドルシネア姫を踊っています。 1989年頃のころの映像だそうですが、いくぶんふっくらとしていて可愛らしく、ドンキホーテの夢の中のお姫様という雰囲気がとても良くでています。 とてもチャーミングで魅力的です。持っている雰囲気、感性がすばらしい!。 グラン・バトマンで蹴り上げた足、爪先立ちのアチュード・ドゥバン・クロワゼのポーズ・・・美しいこと。 極め付きは、中盤に爪先立ちで、ツンツンとバロネする所。 片足のポワントで、ちょん!と立っただけで、つま先は床についたままですから、 つま先の負担は相当なもので、さぞ指の爪が痛かったでしょうが、必死に堪えて、時折笑みさえも浮かべた穏やかな表情が魅力的。 最後のサーキュラーのピケターン、かなり辛そうでしたが、上手に決めました。 無事終わってホッとした表情が本当に素敵!!。順子さんはご自分でも「ドルシネア姫は私の性格にあった役だった様にも思います。」 と言っておられるように、「お姫様キャラ」ですから、しっとり、優雅なドルシネア姫は、もっとも似合う役柄でしょう。 彼女は、この後、バレエから遠ざかってしまうのですが、もし続けていたら、今頃はきっと・・・・と、惜しいような 気持ちにさせられます。 古い映像ですし、全体に照明が暗いのか鮮明度にも欠けますが、私がとても大切にしているものの一つです。
 
渡邊順子さんは、このドルシネア姫について、以下のようなコメントを下さいました。
多分 このドルシネア姫は23歳頃に踊ったものだと思います。 私が「ドン・キホーテ」の全幕を経験したのは高校生の時でした。 発表会で踊り子の役を踊りました。 その後、メッセレル先生に出会いメッセレル先生が日本のバレエ団にドン・キホーテを振り付けした先生だった事を知りました。 日本ではじめてキトリを踊られたのが谷桃子先生です。 私も谷バレエ団新春公演で「ドン・キホーテ」に出演した経験がありますが、今思うと、とてもいい思い出になっています。 ドルシネア姫は私の性格にあった役だった様にも思います。でも 踊り子を踊った事は私の女優的な感性が磨かれた役だった様にも思います。 色々な役をこれからも演じていきたいです。
 
なお、このときのキトリは佐々木想美さんが演じています。パ・ド・ドゥでは笑顔をみせる余裕もないほど緊張しているようですが、一生懸命に踊る姿がとてもいじらしく、フレッシュで魅力的です。
注)文章および画像は、渡邊順子さんのお許しを得て掲載させて頂いております。無断で複写複製を禁じます。

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