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デュポンとルグリの「眠り森の美女」    (2004.10.10改)

パリ・オペラ座の「眠りの森の美女」の映像があります。この映像の録画は1999年と比較的新しいので映像は大変きれいです。

主役のデュポンは当時26歳ということですから、1998年の末にエトワールへ昇格したので、この舞台はエトワールとなってまだ間がない頃のものです。そのせいか、エトワールの風格というより、むしろ初々しい魅力を感じます。
オーロラの出は、軽やかなステップでとても華やか。表情もとてもにこやかです。ひとしきり踊ってローズアダージョ。それまでの笑顔が一転緊張した表情に変わりました。思わず、「頑張れ!!」と声をかけたくなります。
でも、彼女の踊りは、フランスならではの、気品とエレガントさを湛えた身のこなしが、実に魅力的です。本当に、おとぎ話のお姫様という感じです。
はじめのローズ・アダージオのバランス。表情は真剣そのもので、手を離すときは恐怖感すら感じられますが、その仕草が何とも魅力的なのです。毎回4人の王子から離した手をきちんとアンオーまであげてしっかりバランスをとっています。一抹の不安を感じさせながらも、懸命に頑張っている姿には感動を覚えます。 バランスの長さはやや物足りないという感じですが、その仕草には、一国の姫としての気品に加え風格を感じさせます。
終盤のアチチュードのプロムナードでは、落ち着いてきたのでしょうか、サポートの次の王子の手を握るとき、きちんと前の王子に顔をむけ、「しっかり支えてくれてありがとう」とお礼を言っているような、さりげないしぐさがとても魅力的でした。王子の手を握るときも急いでガシッと握るのではなく、やんわりと手を下ろして握るのがとても品がいいのです。 4人目の王子の手を離してから、揺れをグッと堪えてキープしたアラベスクのポーズは見事。一瞬時間が止まったようで、観客から拍手が沸きました。 ローズ・アダージョを無事踊り終えてホッとしたのか、思わず美しい笑みがこぼれました。
何度もオーロラを踊ったオーレリーの先輩のエリベート・プラテルでさえ「四人の王子の手を順にとりながらアチチュードのバランスをとるところはもっとも集中しなければなりません。 どこに意識を集中するかは相手によって違います。軸足の時もあるしあげている足の時もあります。相手役もいろいろで、助けようとしてくれる人もいれば、 近寄ってくる人もいます。中には突き放す人もいます、だから自分がしっかりしていなければだめなんです」と「ローズアダージョ」のバランスの 難しさを語っていますが、ましてはじめてのオーレリー・デュポン、相当の緊張だったに違いありません。踊り終えて、首筋から胸にかけて汗が光っていました。思わず、「うまくいって良かったね!!」と声をかけたくなる瞬間です。

第三幕グランパ・ド・ドゥでは、王子のマニュエル・ルグリとの息はぴったりで、のびのびと踊っていました。アダージョでの3度のフィッシュダイブもばっちり決まって笑みがもれましたし、ヴァリアシオンもとても丁寧で美しかった。また、全体的にも、一幕の無邪気なオーロラから三幕での威厳と女性らしいオーロラへの成長をとてもうまく表現していてよかったと思います。
王子のルグリは、このとき36歳。ノーブルでまさに王子という感じです。それでいて、エネルギッシュで軽やかで、安定したしっかりとしたテクニックを堪能できます。
 
振付はルドルフ・ヌレエフとのことですが、それほど、通常のプティパ版と変わってないと思います。舞台や衣装がとても華やかできらびやか、まさに王宮のバレエと言う感じです。
 
  「眠り森の美女」(全三幕)
  パリ・オペラ座バレエ
  1999年12月パリ・オペラ座バスティーユ
  デーヴィット・コールマン指揮パリ・オペラ座管弦楽団
  オーロラ姫 オーレリー・デュポン、デジレ王子 マニュエル・ルグリ
  リラの精 ベアトリス・マルテル、カラボス ナタリー・オーバン
  フロリナ王女 デルフィーヌ・スーザン、青い鳥 パンジャマ

美しい映像で、オーレリーの初々しさ、ルグリのパートナーシップを楽しめ、私の大切な宝物の一つです。ただ、このDVDは、ヨーロッパ向け(リージョン2/PAL映像)のみしか出ておらず、 NTSC方式の日本製DVDプレーヤーでは再生できません。是非、日本向け(NTSC)のディスクの発売をしてもらいたいものです。
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