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パリオペラ座のエトワールたち     (2003.5.1)

CSクラシカジャパンの「パリオペラ座のエトワールたち」という番組を見ました。実はこの映像、以前にも放送され、 ビデオにも録ってありましたがましたが、今回、HDDレコーダーで録画しながら見ていましたが、改めて内容の充実さに驚きました。
これは、1985年制作のバレエコンサートで、内容は以下の通りです。
 
バレエ&エンターテインメント「パリ・オペラ座のエトワールたち」 
監督:ジャン・C・ヘニン
振付:ノルベルト・シュムッキ、ヴィクトル・グゾウスキー、マリウス・プティパ
 
【第1部】
「エスカミーリョ」 音楽:スペイン民謡
出演:ファビエンヌ・セルッティ、テリー・モンジュ
 
「ル・プティ・パン」(?) 音楽:エドヴァルド・グリーグ作曲
   劇音楽「ペール・ギュント」より
出演:パトリック・デュポン
 
「ブーブー」(抜粋) 音楽:アフリカの民族音楽
出演:イザベル・シヴィディノ、カデル・ベラルビ、カロル・ラガシュ
   ダニエル・ドゥサール、フェリックス・ヴィヴィアン、リオネル・ドラノエ
   ファビエンヌ・セルッティ、テリー・モンジュ、
 
「グラン・パ・クラシック」 音楽:ダニエル・オーベール
出演:シルヴィ・ギエム、マニュエル・ルグリ
 
「リクス」 音楽:カミーユ・サン=サーンス作曲
   交響曲第3番「オルガン付き」より
出演:テリー・モンジュ、カデル・ベラルビ、リオネル・ドラノエ
 
「ひとりの女」 音楽:ジャン・シベリウス
出演:カロル・ラガシュ、カデル・ベラルビ
 
「白鳥の湖」 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
出演:ノエラ・ポントワ、パトリック・デュポン
 
【第2部】
「チャイコフスキーのバレエ(ローズ・アダージョ)」
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーの作品より
出演:イザベル・シヴィディノ、カデル・ベラルビ
   カロル・ラガシュ、ダニエル・ドゥサール
   フェリックス・ヴィヴィアン、リオネル・ドラノエ
   ファビエンヌ・セルッティ、テリー・モンジュ
 
「デルタ T」 音楽:ロシア正教会の聖歌
出演:カデル・ベラルビ、イザベル・シヴィディノ
 
「かげろう」 音楽:マニュエル・ヴァレラ
出演:クロード・ドゥ・ヴルピアン
 
「スパンコール」 音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
出演:フェリックス・ヴィヴィアン、ダニエル・ドゥサール
 
「スケートをする人々」 音楽:ジャコモ・マイアベーア
出演:イザベル・シヴィディノ、ダニエル・ドゥサール
   フェリックス・ヴィヴィアン
 
「黒鳥のパ・ド・ドゥ」 音楽:チャイコフスキー作曲
出演:ノエラ・ポントワ、パトリック・デュポン
制作:1985年
 
主なものを紹介します。
まず、ルグリとギエムのグラン・パ・クラシック。 ルグリ、ギエムともとても若い。特にギエムの初々しさにはうっとりでした。「グラン・パ・クラシック」はギエムはとても好きなようで、以前に、やはりルグリと踊った映像が残されています。
これまでギエムはテクニックを誇示するような感じが鼻について、あまり好きではなかったのですが、この踊りは本当に丁寧で、とても素敵でした。またアダージョでのルグリのサポートもとてもいい感じです。デリケートに、しかもしっかりとギエムを支えています。 ギエムも安心してか、のびのびと踊っているようで、支えの手を離して抜群のバランスを見せました。アンオーまで上げた腕がまろやかで、とても美しかった。また、バリアシオンでは、テクニックの妙を見せてくれました。コーダのフェッテも緩急の交互の回転にダブルを入れてとても軽快です。いかにも強靱な足を感じさせます。

白眉は、何といっても、ノエラ・ポントワです。
パリオペラ座のバレリーナは、40歳が定年ですから、この映像は、多分、彼女の定年まじかな映像だと思います。その意味では、非常に貴重なものです。
ポントワは、第一部で白鳥の踊り、第二部で黒鳥の踊りと、性格の違う2つの役を踊っていましたが、特に、黒鳥は素晴らしい。アダージョ、バリアシオン、コーダとどれをとっても見事な踊りです。テクニックを誇示するようでなく、むしろ、つつましやかで、気品が漂います。芸術家という言葉に相応しいダンサーでしょう。
まずアダージョですが、相手はデュポンで、二人の息はピッタリ。デュポンの力強いサポートを受けて、ポントワは信頼しきっているよう。大胆に、かつ繊細に、彼女のもてる最高の技を披露します。パートナーの手を離しての独り立ちのバランスでは、歯を食いしばって必死にゆれを堪え、 ハッと息を呑む「決め」の美しさを見せます。まさに「一瞬の輝き」。
また、コーダのフェッテでは、後半軸足のズレが出てやや辛そうなところもありましたが、ダイナミックな回転は見事です。でも、フィニッシュ直前に、軸足のトゥが崩れて、回転が止まってしまったのが惜しかった。 疲れたのでしょう。引退まじかの彼女には、32回のグラン・フェッテは、やはりチョッと荷が重かったのかもしれません。
 
クロード・ドゥ・ヴルピアンによる、「かげろう」は美しかった。
蜻蛉のような羽を背中につけ、全身薄い衣装をまとって、蜻蛉が飛び、留まる姿を美しく表現していました。このバレリーナ、私は始めて観たのですが、小柄で、リリックで、とても好感を持ちました。「オーロラ」とか「金平糖」とか、プリンセスのバレエを観てみたい。さぞかし素敵なことでしょう。
  
また「スケートをする人々」は、フィギュアスケートの滑りを模した踊りで、とても楽しかった。 

この映像は1985年収録となっていましたが、映像の画質にはムラガあります。
目を見張る美しいものもあれば、チョッとと思うものもあります。
恐らく、最初に撮影した演目と、最後に収録された演目とは、数年の隔たりがあるでしょうし、カメラもカメラマンも違うのではないでしょうか。
「黒鳥」や「蜻蛉」は、とても画質の良い部類です。


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