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バレエ「パリの炎」、ボリショイ・バレエ   (2010.5.10)
「パリの炎」は、内容がフランス革命とロシア革命をバレエ題材にしたバレエです。つまり、1792年、パリの群集がテュイルリー宮殿を襲撃したこと、1917年、ロシアの民衆が、ロシアのツァーリズムの牙城であったサンクトペテルブルグの冬宮を襲ったという二つの事件がテーマです。 このバレエは、2010年3月31日、ボリショイ劇場から、フランス、イギリス、デンマーク、アイルランド、スペイン、ポーランドその他ヨーロッパの多くの国々の150を越す映画館へ生中継されたそうで、これは、その時のボリショイ劇場での録画です。
 
「パリの炎」の初演は、1932年ですから、1917年に起こったロシア革命から15年しか経っていません。18世紀のフランス革命に加え20世紀のロシア革命という現代がテーマですが、バレエはクラシックの手法で創られ、現在もこれが受け継がれています。現代的なな内容のクラシック・バレエを創るということは、極めて難しいとは思いますが、この「パリの炎」は、それがとてもよく調和して、美しく仕上がっています。
 
「パリの炎」は、グラン・パ・ド・ドゥがバレエ・ガラ公演やコンクールなどでよく取り上げられるものの、全幕はめったに見られない作品ですから、今回NHKがBS Highvisionで全幕を放送してくれたのは、とても嬉しい。しかも、3月末に上演されたものを、上演後わずか20日ほどで日本のTVで見られるたのは有難いことです。
 
ジャンヌ役のナタリーヤ・オシポワは、小柄ですが、ジャンプが凄い。グラン・ジュテの高さと滞空時間の長さが驚異的。ピルエットやグラン・フェッテも流石で、特にフェッテはすごいです。速いだけではなく、軸がまったくぶれません。フランス国旗を持って、舞台を全速力で駆け抜けるシーンは強烈な印象でした。パートナーのワシーリエフアも負けじとパワフルなジャンプを披露しています。ロシアのバレエは、アクロバティック過ぎるとか、とかく言われることも多いようですが、文句なしに、楽しめます。デリーヌ役のニーナ・カプツォーワは、オシポワと正反対のエレガントで魅力的でした。パワフルなダンスシーンの後に挿入された、デニス・サビンとのアダージョは美しく効果的でした。
 
全体的にはボリショイ劇場らしいエネルギッシュな内容で、革命をテーマにしている為、振付は、エキサイティングで曲芸的なところが多いですが、叙情的なシーンもあって、結構楽しめました。また、どのダンサーも踊りの技術は素晴らしいく、ボリショイ劇場のダンサーの層の厚さを再認識しました。
 
  ボリショイ・バレエ「パリの炎」
   ジャンヌ:ナターリヤ・オシポワ
   ジェローム:デニス・サビン
   フィリップ:イワン・ワシーリエフ
   アデリーヌ:ニーナ・カプツォーワ
   ミレイユ・ド・ポアチエ:アンナ・アントニーチェワ
   アントアーヌ・ミストラル:ルスラン・スクヴァルツォフ
 
  振付:アレクセイ・ラトマンスキー、原振付:ワシーリー・ワイノーネン
  音楽:ボリス・アサーエフ、管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団、指揮:パヴェル・ソロキン
 
  2010年3月31日 モスクワ・ボリショイ劇場

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