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フラウエン教会再建記念コンサート   (2006.11.19)

今年(2006年)7月、私は建都800年祭で賑わうドレスデンに旅行しましたが、この時、ひときわ印象に残ったのが、バロック様式のこのフラウエン教会です。フラウエン教会は、第二次大戦終結直前の大空襲で崩れ落ちてしまいましたが、旧東独政府は戦争警告の碑として瓦礫の山を残しておいてくれました。ドイツ統一後、フラウエン教会は、この浄財を集めて再建され、建都800年の前年の2005年秋に完成しました。
新しい聖母教会はかつて「石の釣鐘」とも称された直径25mの大ドームを復元し、見事な姿を取り戻していました。その姿は白い外壁に所々黒い素材が使われた、ちょっと見た感じイビツな印象を受けますが、実は黒い素材はオリジナルの建材で、白い部分が新たに付け加えられた素材です。 建物全体が白っぽく見えるのは、それだけオリジナル素材が爆撃によってほぼ完全に失われてしまったことの証明でもあるわけです。再建された教会のてっぺんには「黄金の十字架」が飾られています。これはドレスデン空爆に参加した空軍兵士を父に持つ英国人金細工師の作品で、これこそがまさに「和解の象徴」と称されています。

この教会で、再建記念コンサートが行われたのですが、これをNHKがBSハイビジョンで放送してくれました。
曲は、ベートーヴェンの「荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス) ニ長調 作品123」。1823年に完成した、ベートーヴェンの晩年の大曲です。献呈の相手は親交のあったルドルフ大公で、当初、大公の大司教就任祝いとして書き始められのですが、書き進むうちに次第に構想が広がって、就任式に間に合わなくなり、完成までに結局5年間を要したという大作です。実際に大公が演奏したかは不明ですが、現在でもベートーヴェンが書いた最後の大宗教曲として広く演奏されています。ベートーヴェンは壮年期のミサ曲ハ長調と、晩年のミサ・ソレムニスニ長調を残していますが、前者は伝統的な教会音楽の上に作られた作品であるのに対し、後者は単なる教会音楽というとりも演奏会を意識して作られたと見られています。実際、ミサ・ソレムニスは、主として教会でなく演奏会で演奏されています。ミサの式典ではごく稀にオーストリアなどで演奏されるに過ぎないそうです。
今回このミサ・ソレムニスが、演奏会場でなく、フラウエン教会で演奏され、録画とはいえ、地球の裏側の日本で視聴できたことは非常に有り難いことです。 印象的なのは、演奏が終わり、指揮のファビオ・ルイージがタクトを降ろしても、拍手はありません。でも、しばらくして、拍手が起き、だんだんと大きくなって、それが、いつまでも、いつまでも、つづくのです。
   
ドレスデン城の「君主の行列」(遠くにフラウエン教会が見えます)フラウエン教会

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