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ドン・キホーテ~パ・ド・ドゥ:福井かおり、田辺淳  (2015.11.15)

You tubeに、とても素敵な、二つのドン・キホーテ~パ・ド・ドゥの映像が載っていました。 福井かおり田辺淳という、 アメリカ・オレゴン州・ユージーンバレエ団(Eugene Ballet Company)の若きプリンシパルによるものですが、 ひとつは日本でのバレエコンサートの舞台の踊り、もうひとつは稽古場での稽古の映像です。二つを見比べると、とても興味深いものがあります。 福井かおりはクラシック・チュチュがとても良く似合う小柄な可愛らしいバレリーナ、田辺淳は優しさの中に力強さを感じさせるダンサーです。
 
のりが良く、どちらかというとアクロバティチック的な要素の強いドン・キホーテ~パ・ド・ドゥですが、 舞台の映像の方は、かってのバレエ教師や後輩の見つめる前で踊っているせいか、福井かおりは、やや緊張しているのか表情が硬く感じました。 でも、アダージョでは、二人の息はぴったりで、福井かおりはしっとりと、しかも爽やかに踊って、うっとりでした。 アダージョのアントレのリフトでは、福井かおりの空中での開脚はやや控えめだったけれど、とても品が良く美しかった。 アントレが終わってアダージョの最初の難関プロムナードの回転後のアチチュードのバランス。 福井かおりはサポートの手がなかなか離せなくて表情はやや強張ってたけれど、意を決してアンオーまで手を挙げグッとこらえてバランス。 続くピルエットを無事終えると思わずホッとしたのか笑みが零れました。これで気を良くしたのか、これ以降は彼女のペースという感じで、柔和な表情で伸び伸びと踊っていました。 終盤の見所の二度のアチチュードのバランス、二度とも表情が険しかったけれど、パートナーの手を離して必死に持ちこたえたバランスは流石です。 最後のリフトからのフィシュダイブ。二人の息がぴったりで、バッチリ決まり、観客の大きな拍手を受けました。手の指先と爪先まで神経の行き届き、大きく弓なりになった体のラインが美しかった。
 
コーダのグラン・フェッテ・アントゥールナン。前半、福井かおりは果敢にトリプルの回転を連発、快調でした。後半に入ったとたん、体が大きく揺れて軸足の踵が落ちた。 あわや!と思ったけれど、必死に建て直しフェッテを続行したのは偉い。さすがに無理をせずにシングル回転だったけれど、歯を食いしばって手堅く纏めました。 終盤のシェネ、最後の力を振り絞って、高速回転で少しも乱れずに、スムーズに移動。観客は手拍子、大いに盛り上がりました。 フィンイッシュをバッチリ決めて観客の『ブラボー!!』の嵐。満面の笑みが素敵でした。
 
全体を通じて、福井かおりのピルエットは実にスムーズで美しい。 パートナーにウェストを支えられて回るときも、高く上げた腕の指を軸にして一人で回るときも、全く抵抗が無いように美しく回ります。 自力で回りきれず止まりそうになって、サポートの男性に無理やり腰を回されていたベテランのバレリーナが居たけれど、見苦しいことこのうえなかった。 これに比べて福井かおりの美しい回転は、素晴らしい技術だと思います。
 
Don Quixote grand pas de deux - Kaori Fukui and Jun Tanabe
2014/11/17 Kaori Fukui and jun Tanabe in Don Quixote, Japan 2014.  
 
稽古の映像の方は、アチチュードのバランスは長くて美しかったし、グラン・フェッテでは、前半だけでなく後半もトリプルを入れています。 伸び伸びと果敢に難しい技に挑戦し、美しく破綻無くこなしているのは、やはり本番より緊張が少なく、優れた技量を思い存分発揮できているからでしょう。

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