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「グラン・パ・クラシック」はパリ・オペラ座の往年のエトワール、イヴェット・ショヴィレのために創作されたグラン・パ・ドゥ・ドゥーです。
物語は無く、オーベールの音楽と典雅な踊りを楽しむもので、ロシアの振付師グソフスキーは超絶技巧をこれでもかと織り込みました。ショヴィレの実力が遺憾なく引き出されるようにとの意図ですが、これが後世のダンサー泣かせ。「これが踊れたら怖いものなし」と言われるほど恐れられている踊りで、
特に女性のバリエーションでは、足でリズムを取って、はずみを付ける所が特に難しく、体力と精神力の限界に挑戦するようなヴァリエーションです。一般に評価が高いのはシルビーギエムです。抜群の脚力に裏付けられた、びくともしないバランスと回転技を誇示した超絶技法に驚かされますが、「どうだ！」と言わんばかりの傲慢さが鼻につき、私は好きにはなれません。
YouTubeに、Ga Yeon Jung(ゲイヨン･ユング)とDae Han Na(ダエハン･ナ)という韓国の若いダンサーが踊ったグラン・パ・クラシックの映像が載っていました。
South African International Ballet competition 2014の決戦での踊りのようです。
Ga Yeon Jungはニューヨークに本拠地を置くジョフリー・バレエ団Joffrey Balletに、
Dae Han Naはオクラホマのタルサバレエ団Tulsa Balletに、共に2015年に加わったばかりですが、とても爽やかで素敵な踊りなのです。
このグラン・パ・クラシックでのGa Yeon Jungの踊りは、シルビー･ギエムのようなアクロバットまがいの超絶技法ではなく、
むしろ、バランスもヴァリエーションも、幾分不安なところもあるけれど、とても丁寧に踊っていて、なめらかで気品のある透明感が感じられます。
Dae Han Naと踊る最初のアダージョ。Ga Yeon Jungは体がとても柔らかそうで、冒頭のアラベスク･パンシェの開脚では軽々と180°を越えていました。
続く、パートナーに片手を支えて貰ってのエカルテ･ﾄﾞゥヴァンのバランス。左右とも脚が150°近く上がって美しい。アンドールが完璧に出来ている証拠でしょう。
フィッシュダイブ、ピルエット、両手を腰に当てて右足のトゥで立つバランスという至難な連続技も、3回とも全くミス無く踊り抜いて見事。
後半のパートナーに右手を支えられたプロムナードの回転後のアラベスクのバランスのポーズはうっとりするほど美しい。
最後の見せ場、パートナーの支えを外れて保つアラベスクのバランスは美しかったけれど、やや平板だったのは不満。グッと堪えてハッと息を呑むバランスを見せて欲しかった。
Ga Yeon Jungはピルエットがとても上手。以前、パートナーに腰を支えてもらって回るピルエットで、途中で女性の回転が止まってしまい、男性が無理矢理、女性の腰を回していたのを見たことがあるけれど、見苦しいことこの上なかった。
その点、Ga Yeon Jungは全く回転が落ちず滑らかで美しかった。
そして難しいテクニックの連続の女性のヴァリエーション。
最大の難関は終盤近くの足でリズムを取って、はずみを付けて踊る26連続のルルヴェ。
左手を腰に、一瞬ポーズをとり、続いて両手を腰に右足一本で巧みに回るので、とてもキツく、次第にかかとが落ちてきてメロメロになりがち。「これが踊れたら怖いものなし」と言われるほどで、体力と精神力の限界に挑戦するようなパです。
この超絶技法はシルビー･ギエムの独壇場ですが、「エレガントのかけらも無い」と言う人もあるほどアクロバットまがいのギエムの踊りは、「どうだ！」と言わんばかりの傲慢さが鼻につき、私は好きではありません。
その点、Ga Yeon Jungは気品があり、踊りにはやや不安を感じたところもあったものの、懸命に踊る健気な姿には、むしろ初々しさといじらしさを感じさせ、完璧なギエムよりも、はるかに美しいと思いました。
シェネで舞台を一周してフィニッシュ。ホッとした表情が美しかった。
そして最後のコーダ。コーダ終盤の見せ場のグラン･フェッテ。前半はダブルを連発してすこぶる軽快。後半やや疲れが出たのか僅かに軸足が揺れてきたけれど必死に持ちこたえたのは立派。、 最後はパートナーにウフェストを軽く支えて貰って、力を振り絞って懸命のピルエット、素敵でした。フィニッシュで両足のトゥで立ってグッと堪えた瞬間、僅かに爪先がずれたけれどご愛嬌。 無事踊り終わってホッとして、かすかな笑みを浮かべたレヴェランスが素敵だった。 気品溢れる清楚でスリムな美しい容姿、クラシックチュチュがとてもよく似合う、笑顔の美しい若き魅惑のバレリーナ、Ga Yeon Jung。一層大きく羽ばたいてくれることを願っています。 |
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