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幻想の場

「眠りの森の美女」第2幕で、森に狩に来たデジレ王子が、リラの精により、オーロラ姫の幻影を見せられる場面です。王子はオーロラ姫の美しさにすっかり魅せられしまいます。
オーロラ姫とデジレ王子によって踊られる幻想的なデュエットと、オーロラ姫のヴァリエーションから構成されています。アダージョでは、ゆったりとした音楽にのって、オーロラ姫は王子にウエストを片手で支えられて、限界まで足を上げたアラベスクを見せます。180度を超えるまで足を上げて、体の柔らかさを誇示する舞姫もいるほどです。第1幕のローズアダージョや第3幕のパ・ド・ドゥのように派手ではありませんが、幻想的で、叙情的で、流麗で、とても魅力的なのです。
 
こんなに魅力的なのに、この部分を省略してしまう演出もあります。東京バレエ団がそうです。王子はオーロラ姫と踊らずにリラの精についていくだけ。
眠りの森の美女は、オーロラ姫の成長の記録と思います。姫はプロロ−グで誕生し、ローズアダージョで少女に時期を終え、幻想の場で恋をして第V幕パ・ド・ドゥで結婚するのです。オーロラ姫を演じるバレリーナも、物語が進むにつれて感情が高まっていくと思います。
こんな訳で、幻想の場をカットしてしまう東京バレエ団演出には疑問が残ります。
 
私のコレクションの中では、下村由理恵さんの踊りが最も好きです。夫である篠原聖一さんの好リードに支えられて、由理恵さん、叙情的に、清楚に、魅力溢れる踊りです。v 牧阿佐美バレエ団公演での草刈民代さんの踊りも素敵です。やや、バランスに不安が感じられるものの、丁寧に優雅に踊っています。またロシア・ナショナルのイヴァノヴァは、180度まで足を上げた美しいアラベスクを楽しませてくれます。


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