ジュリーニの「フィガロの結婚」

「フィガロの結婚」は、誰もがどこかで聞いた事があるメロディーがふんだんに出てきて、序曲、アリアともに有名なモーツァルトの代表的な歌劇です。このオペラの最大の魅力は声のアンサンブル。それぞれの登場人物が同じ曲の中で、違う言葉、違うリズム、違う感情で歌っているのにそれらが全く違和感が無いハーモニーになっているのです。モーツァルトならではの傑作でしょう。

アルマヴィーヴァ伯爵の召使のフィガロとスザンナは婚約者同士。ところが彼らの雇い主アルマヴィーヴァ伯爵はスザンナを我がものにしようと企んでいます。また伯爵夫人ロジーナは夫の伯爵が自分に目を向けてくれないのが不満。一方、伯爵は小姓のケルビーノが夫人の浮気相手ではないかと疑っています。そこへ、かつて好きだったロジーナを伯爵に嫁がせたフィガロを根に持っているバルトロが、スザンナとの結婚を妨害し、フィガロと彼に好感を持つマルチェリーナとを結婚させようとやってきます。ところがマルチェリーナとバルトロがフィガロの実の両親だったことが判明します。フィガロとスザンナの結婚式の夜。まだ諦めていない伯爵は、スザンナからの逢い引きの手紙を受け取り喜び勇んでやってくるが、フィガロと夫人に化けたスザンナの密会を目撃し激怒します。そこへスザンナの服を着た夫人が現れ、すべてを悟った伯爵は自ら夫人に謝り、大団円となります・・・が、あらすじです。

カルロ・マリア・ジュリーニは、2005年に91歳で亡くなったイタリアの指揮者。イタリアでの劇場たたき上げの指揮者で、ヴェルディなどのオペラを得意としたそうですが、オペラだけでなくコンサート指揮者としての評価も高い人です。ジュリーニが指揮した「フィガロの結婚」の全曲盤は、シュヴァルツコップ、ヴェヒター、タッデイ等の豪華なキャストとオーケストラをジュリーニが統率した、活気あふれる美しい演奏です。1959年の録音とは思えないほど音がとても良く迫力があります。一糸乱れが無いほど磨きに磨いたアンサンブルで、ジュリーニがいかにオーケストラを掌握し切っているかがわかりますし、フィガロ役のタッディ、スザンナ役のモッフォ、ケルビーノのコッソット、伯爵夫人のシュワルツコップのいずれもが素晴らしい歌唱を聞かせてくれています。原盤はLPレコードですが、CD2枚組みで再発売されていて、ステレオ初期の古い録音ながら、いつまでも魅力を失わない名盤だと思います。